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究極のヒーロー
天才科学者のライト博士は、究極のヒーローを作り上げた。
そのパンチは一撃で高層ビルを根本から壊してしまう。
そのジャンプ力も富士山を片足で飛び越すことが可能である。例え、ミサイルがぶち込まれても平気だし、その気になれば死ぬまで何も食べずに生きていけるほど。そして、何より弱いモノの心を汲み取ることができる、本当の優しさを胸に秘めたヒーローだった。
それをライト博士が作り上げたのだ。
例え奥さんに逃げられても堪え忍び、子供から泣き叫ぼうとも研究を続け、近隣の住人から白い目を向けられても気にしてこなかった。そんな生活を2人で50年も続けてきたのだ。
「さあ、いけ! 究極のヒーローよ! 一ヶ月ぶりに現れた怪人達を倒すのだ!」
ライト博士は叫んだ。
だが、その背後で究極のヒーローは倒れていた。
「50年も診察台の上にいたから、腰が……」
「ヒーロォォォォォォォォォォぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
その間、悪は、ずっと栄えていた。