携帯電話 ⑬
呼び鈴が鳴ったので私がドアを開けると、そこに見知らぬ大男が立っていた。
「誰だ?」
「私は未来からやってきた、人型携帯電話お相撲さんタイプです」
「ほう」
「通常の携帯電話の機能は当たり前として、他にも様々なオプションが追加されています。例えば、盗難防止。盗もうとしてきた輩を撃退します。他にも、四股踏みアラーム。時間になりましたら、耳元を踏みつけてお目覚め時間をお知らせします。更に、ネットから有料アプリをダウンロードして頂ければ、季節ごとの相撲取りの秘密ちゃんこレシピをお伝えします。」
「なるほど。それで、電話はどうやって掛けるんだ?」
「通話ボタンや音声マイクは足の下になります」
「……なんで、そんな所に」
「仕様です」
「……とにかく、電話を試してみたいから、足を持ち上げてみてくれ」
「それは、できません」
「は? なんで?」
「貴方は携帯電話を使うとき、自動で起動させるんですか? ご自身の力によってですよね。また、開閉の場合も、手動で持ち上げて頂かないと……」
「できるかっ! なんで、そこだけローテクなんだよっ!」
と言って私はドアを閉じたのだった。