今時の魔法のランプ
「やっと見付けたぞ!」
ある所に、とてもとても気難しそうな、凄腕の冒険家が居た。
その男は冒険に次ぐ冒険の果てに、洞窟の奥で魔法のランプを発見したのだった。
「わははは、封印されていた私を復活させてくれて礼を言う! 代わりに願いを言え。どんな願いでも3つだけ叶えてやる」
早速、ランプを擦るとモクモクと煙が吐き出されて巨大な魔神がそう叫びながら現れたのである。
だが、念願の宝を前にしても、凄腕の冒険家は顰めっ面になっていた。
「……ちょっと待て、ランプの魔神」
「何だ?」
「とりあえず、その煙を止めろ。髪に臭いが付くから」
「え」
「早く」
「いや、この煙は私のやり方というか、そういうものでして」
「そんなの知らねーよ。初対面で、他人にルールを押しつけるなって」
「……あ、ああ。じゃあ、願い事の一つってことで処理します」
「それと洞窟で大声とか無し、反響して耳が痛いから」
「え?」
「痛いって」
「あ、すいません。では、これも願い事で……」
男はチッと舌打ちをする。
「もういいよ。帰れ」
「あ、はい。……でも、願いがあと一つ」
「もー、煙で髪がべた付くし、そんな気分じゃないから。帰れって、マジで」
「……あ、はい。すいませんでした」
「謝れば良いってもんじゃないだろ。他人が嫌がることをするんじゃねーよ」
「……はい。すいません」
「お前、さっきから、すいませんすいません、って謝ってばかりじゃねーか。何、それが魔神のやり方なの?」
「すいま――し、失礼しました」
「もう、消えろって。あー、苛つくわー」
とりあえず3つの願いを叶えた魔神は、肩を落としつつ素早くランプの中に返っていった。その時、困った顔で「人間って変に気難しくなったなぁ」と呟いていた。