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氷が溶ける時  作者: ほの
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白い沈黙

南極大陸、エルズワースランド。気温マイナス42度。


氷床の下に眠る湖――ヴォストーク湖よりもさらに深い位置に、未知の空洞が発見されたのは2029年の冬のことだった。衛星からの氷床透過レーダーが捉えたその影は、あまりにも不自然な形をしていた。


「まるで何かが閉じ込められているようだ」


国際南極研究プログラムの主任研究員、藤堂明日香は、モニターに映し出された断面画像を見つめながら呟いた。氷の中に、有機物の痕跡がある。それも、途方もない量の。


掘削が始まったのは翌年の夏季だった。各国から集められた十二名の研究者が、深度3200メートルの氷床コアを慎重に掘り進めた。作業は遅々として進まなかったが、誰も焦りはしなかった。南極での作業に焦りは禁物だ。ここでは一つの判断ミスが死に直結する。


氷床コアが地下空洞に到達したのは、2月17日の午前3時だった。


「藤堂先生、これを」


掘削チームのリーダー、カール・ブレンナーが差し出したコアサンプルを、藤堂は防護手袋越しに受け取った。透明な氷の円柱の中に、暗い紫色の層が走っている。


「何これ……」


藤堂の声が掠れた。


紫色の層は、氷の中で脈打つように微かな光を放っていた。もちろん、それは照明の反射だと理性は告げている。だが、直感がそれを否定した。


分析の結果は、藤堂の20年のキャリアの中で最も衝撃的なものだった。


紫色の物質は、ウイルスだった。既知のどの分類にも属さない、まったく新しい構造を持つウイルス。カプシドの形状は正二十面体ですらなく、これまでの生物学の教科書にないねじれた螺旋構造をしていた。そして、推定される凍結年代は――6600万年前。


白亜紀末期。


恐竜が消えた時代だった。

2〜3章?で終わると思います

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