第9話
退屈しのぎに丁度良いと奇妙な訪問者たちを私的自室に連れ込んだカーピン16世、先月崩御の公爵はカーピン14世であり新公爵の祖父。父親カーピン15世は14世が位を譲る前に急逝していたが、一応番号は打っておいた感じである。
このような何処の馬の骨かといった輩は幼少期には自室に入れる事は禁じられていたのだが、今となっては自分より位の上の者は居なくなり、やりたい放題とも言える。
ココモ君やヤッヤモはこの新公爵の心情と言うか状況を早々と察し、内心幸運を喜んでいた。とは言え、ベルメリはと言うと、事態は押していると言うのにキャイちゃん似じゃなく、リアン似のキャイちゃんそっくりのヴァンパイアを、今は見ている場合ではないと分かってはいても、見てはいけないものを見る感じで、ちらちら目を泳がせていた。
この場を取り仕切るのは自分と自覚している新公爵カーピン16世は、
「はてさて、君たちはいったい何用でこのカーピンの屋敷に来おったのじゃ。言うてみよ。誤魔化しは無しだ」
「は、誤魔化す必要など無い。僕はオーカーの息子のココモ・オーカーだが、お前が知っているかどうかは知らないが、僕の親父とお前の爺さん、それにその息子、おまえの父親だが、親しかったようで、そのあたりの奴が生きて居れば話は早いんだけど、実は僕の恩がある方の息子が魔の国の魔人とトラブっていてな。魔人数家族を始末した件で場違いな訴えをその仲間が、セピア警察に訴えているが、その訴えた奴らはちょうど同席のこのリアンの親父、ヴァンちゃんがすでに殺しているんだ。だからセピア警察は死人の依頼は、捜査しないのが決まりだろう?それなのに相手がニールの家に戻って手が出せない所為で、国際警察に依頼しようとしているが、止めさせた方が良いぞ。とんだ恥をかくことになるぞ。と忠告しに来たんだ。何せ、死人からの依頼の件だからな。それもそいつらは、何かしでかした挙句ヴァンパイア王に始末されている。関わり合いにはならない方が良い件だな」
リアン、
「ははは、あの件かー」
等と笑い出し、カーピン16世は誰を笑っているのか少し訝る。
ココモ、
「お前を笑ったわけじゃないんだ、リアン要らん反応するな」
と注意し、
「とにかく、早いところ国際警察などに依頼するのは止めさせろ」
リアンも、
「カーピン、さっさと手を打たないとお笑いのネタになるぞ」
リアンにまで言われた公爵は呼び鈴を鳴らし、やって来た近侍と思しき爺さんに、
「法務大臣に話がある、急ぎだから電話しろ。こっちに来させるほど時間の余裕はないぞ」
等と命令している。
「畏まりました」
と畏まって立ち去った、かくしゃくとした近侍におののくベルメリ。ベルメリの近辺には居ないタイプだ。
そう言う訳で、ベルメリはかくしゃくとした爺さんに命令する若い公爵坊ちゃんを見て感心していた。
すぐに電話が鳴りだす。何処から鳴って居るか探すベルメリ。何と飾りの様な金ぴかの細工の代物、よく見ると電話と見えなくもない代物を手に取った公爵坊ちゃんは、
「お前が法務大臣か、カーピンだ。誰ぞが面妖な奴らにかかわって、国際警察を煩わそうとしておるだろ。今書類が来ておるのか、それは取りやめじゃ。依頼者が死んでおる。ヴァンパイア王が始末した奴らが、捜査依頼者だ。そうだ。死んで居る。言っておくが、魔の国の奴らの依頼などこれからは相手にするな。煩わしいだけじゃ。これは決まり事じゃ。ほう、相手にしたがる奴がいるのか、んー、近いうちに組織の見直しでもするかな。大臣は何かする仕事がありそうじゃないか。しっかりやってくれ」
そう話しお終えたカーピン坊ちゃんは電話を元の場所に置いている。見るとはなしに観察のベルメリちゃん。うまく対処し終わったと見て、カーピン坊ちゃんに思わずにっこりする。
「有難うございます。おかげで安心しましたわ」
カーピン16世は、ベルメリちゃんのニッコリにドキリとしたもよう。これはポケットの中のヤッヤモの観察結果である。『不味いな』思わずつぶやく。
まずいと思ったのは、ヤッヤモだけではなかったようだ。何とリアン坊ちゃん、
「あれー、新公爵。婚約者以外の子に興味を持っていないでしょうね。どうやらこの子はニールの館の主、ニキ・グルードさん関係の方ですからね。つまりセーンの息のかかった輩の一人ですよ。セーンに睨まれないようにした方良いですよ。先日睨まれたココモドラゴンの一族は滅びましたからねぇ。ご存じでしょう、その顛末は」
「ほう、意外なつながりだな。チャーミングなお嬢さんは。すると、ポケットの中の魔物は、あのセーンの使い魔の魔物なのか。だがお嬢さんが手に入れたようだな。どうすればそういった使い魔は手に入るのかな。リアンは知っておろうな、私に言ってみろ」
おそらく若くして頂点に立ったセピア公国の国民的象徴のお方、少々、我がままなのか。思い通りに過ごしていると見えるが、何だか面倒な事を要求しそうである。
「えー、僕が何でも知っていると思わないでくださいよ、ベルメリちゃんに聞いてくださいね」
リアンが話をベルメリに振って来た。ヤッヤモ頭を抱える。知恵よ、出て来いという感じの様子。
ベルメリもキャイちゃんが似たモデル的存在のリアン坊ちゃんは、良いのは見かけだけて、おつむは人並みと見た。
不味い事を振って来られて、『いらん事言いだしたね。リアン考えて話してよ』とピンチを感じた。だが、リアンの顔色を見て、コンタクトできるのかもと思い、
『さすがキャイちゃんのモデル、気の利き方もそっくりね』
そう心にもない感想を漏らした。彼を持ち上げて、自分で考えてほしいのだが、出来るかな?
『いやいや、僕に考えろってか?ベルメリちゃんの一言で解決かなと思ったが』
「あたしの一言ってー」
思わずしゃべってしまったベルメリ、にっこり見つめる公爵を見て観念する。
「じゃあ、お嬢さん。ベルメリちゃんって言う名なのか、ベルメリちゃんは使い魔を手に入れる方法、私にも教えてくれるんだろうね」
「えーとあたし達、相思相愛なの。愛が有ったら使い魔さん、あたしに懐いてくれるのよ。一目見た瞬間に、愛が芽生えるのよー。種を超えた愛よ。誰もあたし達の中を引き裂くことはできないの。言わば絆よ。絆は、決して引き裂くことはできないの。セーンと使い魔の長、ヤモさんだってそうよ。絆は永遠なのー。一目見て感じるのー。これは運命ね」
「ほう、そう言う事なのか」
カーピン坊ちゃん、思案気味だ。
ヤッヤモ、ポケットの中で嬉しくて泣きたくなるが、ふと、芝居ではないかと訝る。だが大人しく様子見だ。
「リアン、ニキ・グルード殿はこのカーピンを館に招待しそうかな」
「カーピン16世、あの方とは面識すらないですよ」
「うむ、では次のカーピンのパーティー、近いうちに催させるべきだな。彼を招待しよう」
「一昨日パーティーやったばかりでしょう。きっと近侍が反対しますよ」
「では、リアンが主催しろ」
「言っておきますが、彼らはヴァンパイアとは付き合いませんからね」
「そうなのか、ではココモ、お前の番だな」
「え、えっー」
思わぬ話の振られ方に、叫ぶココモ君。
『ごめんねココモ君、きっと何とかなるって』
お気楽なベルメリちゃんだ。
「お前のパーティーに、私を呼べ。そしてグルード家の主だった輩もだ。後はグルードに私を館に招待させるべく、私が何とかしよう」
「ふうん、わかった。仕方ない。話を付けてくれた礼がてら、やってやろう。ま、健闘を祈るよ」




