第18話
カーピン公爵に、条件付きで使い魔になる事を承知したヤコ。公爵と一緒にセピアに行くつもりで玄関先まで移動していた。そのつもりだったヤコだが、意識を失った気がする。気が付くと辺りは真っ暗闇で、異変を感じた。『何だこれは?』
声が聞こえる。カーピンがニキ爺さんに暇を告げているが、ヤコは闇の中だ。『どういう事?』少し焦る。誰もヤコが居ないことに気付いていないのは奇妙だと思える。すると、
『ヤコ、セーンになんか言わなくて良いのか』ヤーモの声がする。『ヤーモが居る、何故?』ヤコの疑問に構う事なく、ヤーモ叫ぶ、
「おい、俺の剣返せッ」
ヤッヤモが、叫ぶ。
「ヤコ、操られている。あの時の魔法使いだ。やられたッ」
セーン、
「ヤコ、止めろ。戻ってこい。こっちだ」
セーンの声の方向をみると、辺りの様子が薄暗くだが、分かる。カーピンに剣を振りかざす。僕が?誰かが後ろから羽交い絞めにしようとするが、振りほどく僕が?誰かの声が、
「止めろ」
セーンが言うけど聴かない僕?止めようとする皆に剣を振り回す、僕?動いている気がしないが、どうやら動いているらしい。カーピンを見ると、ユーリン婆やチーラさん、ベルメリちゃんまでカーピンを庇っている。『そんな事、やめてよ皆、怪我するよ-』思ってもしゃべれない僕、『ヤコ、あほー、しっかりしろ』ヤモがコンタクトしている。
剣をユーリン婆達に振りかざす僕?
「皆、私の後ろに下がってください。あの剣は危険です。」
カーピンが言う。
「そこかっ」
剣を振りかざす僕?『あほヤコッ。サツにつかまるぞ』ヤモが言うし、不味いと思う僕。剣を持つ手を必死で逆らうと、足が急に痛くなり、目が覚めた感じだ。
「自分で足切ったな。偉いぞ、ヤコ」
ニキ爺さんが褒めている。しかし、
セーン、
「正気になったな。ヤコ。あ、癒しが訊かない」
すると、ヤッヤモがヤコから剣を奪った。
「ヤッヤモが操られた。ヤッヤモしっかりしろ。僕の事よりヤッヤモに正気になれって言って」
ベルメリはぞっとした『ヤッヤモまで、そうだった。あの時、ヤコもヤッヤモも魔法使いと戦っていたんだった。きっとあの時にやられたのよ』
ヤッヤモは妖剣をカーピンに振りかざそうとする。ベルメリは素早くカーピンの前に行くが、
「ベルメリちゃんは私を庇ってはダメです」
公爵に後ろに投げ飛ばされた、ベルメリ。意外と力がある公爵。
セーンが剣を奪おうとするが、ヤッヤモの手に吸い付いたように離れない。手には吸盤も元からあるしで、手から離れない剣。
セーン、
「ええい、ヤッヤモなら慣れているだろ」
と言って、ヤッヤモの手を切り落とす。
「いだいー」
ヤッヤモ、痛がるがさっさと次の手を出し始める。剣を握った切りとられた手はまだ動きたそうだが、セーンはちぎれた手を踏んで阻止している。
ベルメリは、
「ヤッヤモちゃん大丈夫?新しい手、直ぐに出来るのねー、良かった」
ヤッヤモに縋り付いて涙するが、ふとヤコを見ると、随分顔色が悪い。
癒しが効かないって、セーンさんが言っていたんだったと思い至ったベルメリ。
「ヤコ君、大変。お医者様に見てもらわないと。どなたかお医者様を呼んで下さい」
ベルメリが慌てて言うと、ヤーモがしんみり、
「医者は魔物は診ないよ、ベルメリちゃん。こうなったらヤコと妖剣の魔力比べだな」
「ヤコ君、剣より魔力あるよね」
ベルメリ、誰にとはなく、確かめる。だが、『魔力の種類が違うし』ヤッヤモは言葉事を濁らせる。
ベルメリは段々焦ってくる。
「まさか、大丈夫よね。自分で刺したぐらいだもの。酷い怪我じゃないでしょ。違うの?」
セーンはまだ妖剣を握りしめる千切れたヤッヤモの手を踏みしめているし、ヤコを何とかしてくれる余裕は無さそうだ。
「いや、いや、誰かヤコ君を治してあげてよ。ユーリーン様は?」
「あたしは癒してみたいけど、爺さんがほら、あたしのスカートを握って離さないの。そっちに行けないのよ」
「ばか、あいつは魔法使いに操られたんだ。もう操られていないと誰が保証できるんだ。近づくな」
セーンも、
「確かに誰も保証は出来ないね」
カーピン公爵、
「結果は分かりませんが、公爵家専属の魔法使いを今、呼びつけております。何か手立てがあればと思いまして」
セーンは現在、妖剣を踏みしめている所で忙しそうだが、一言。
「魔法使いにも、能力のランクが無かったかな。格下じゃ無理と思うが」
そんな騒ぎの中で、いつの間にかリューン大叔父さんがやって来た。
「来る気になったのか、リューン爺さん」
セーンが言うと、リューンは、
「お前、そんな事していて余裕じゃないか。だが、今に余裕は無くなるぞ。足が絞れて来てやしないか。切りつけられそうだぞ」
「俺の方は良いから、そのくたばりそうなのを何とかして」
「そう言われてもね。手遅れって事が有りそうだからな」
「そう言わずに見てくれよ」
セーンなんだか、リューン爺さんの予言的言葉の通り、余裕がなくなって来た。
「くそう、妖剣とは言ったものだな。疲れ知らずだ」
ヤッヤモは、手がちゃんと生えて来たのを見定め、
「かかか、いただき-」
と叫んで、妖剣はと言えば、すぽっとセーンの足から抜け出て、ヤッヤモの手の中に、
「きゃー、ヤッヤモ。だめよう。しっかりして、正気に戻ってよー」
ベルメリは必死で叫ぶが、
「うるさい、ブスねエ。死にたいのか」
本当のヤッヤモとは声色の違う声で、ヤッヤモはしゃべると、近場に居た公爵に切りかかる。ベルメリは剣の前に素早く回り込んだ。すると、
ヤッヤモはきっと意志の力だろう、ベルメリにあと数ミリと言った所で剣を振りかざすのを止めた。
「危ないよー、ベルメリちゃん。やめてよー、危ない事はっ」
涙目で文句を言う、
「良かった正気に戻ったのね」
ベルメリも涙目で喜ぶが、
「戻ってないもんねー」
ヤッヤモはそう言って、今度はどう言う訳か硬直状態のセーンに、切りかかる。するとセーン、
「かかったな。ドアホウ」
と言って、またヤッヤモの手をちぎった。
「ぎゃっ、いだいー」
先ほどの繰り返しだ。だが、さっきよりも手の生えて来方が鈍い。
ベルメリはヤッヤモに抱きつき、
「剣、もう、持っちゃだめよ」
と言って止めているつもりだ。
「そう言われてもなー。退きな、姉ちゃん」
また操られ、ヤッヤモはベルメリを振り切って立ち上がる。セーン、
「三度目は多分、再生できないぞ」
操られた奴にそんな事言ったって、無駄ではないのか。皆そう思って気の毒そうに二人を見比べる。リューン爺さんだけが、ヤコの癒しに集中だ。
何とか顔色が良くなってきたヤコ、リューン爺さん、此処でヤコを治すのは不味かったと言って良いだろう。
「俺に寄こせ」
手が無くなる事に躊躇していたヤッヤモから、妖剣を奪い取ったヤコ。ヤッヤモは、
「何すんだ、俺が持っているのに」
「公爵は逃げやがった。追いかけるぞ」
剣を持って急ぎ後を追うヤコ。ついて行こうとするヤッヤモに、ベルメリまた縋りつく、
「もう止めてよ。ヤッヤモ、セーンさん達に任せましょうよ」
「そうはいかないんだってば、姉ちゃん」
何だか、かっと来たベルメリ、
「姉ちゃん、姉ちゃん言うなっ、あたしはあんたの姉じゃないのよ」
「いや、確か姉だろ。ヴァンク・ノスのとこのベルメリは俺の姉と他の奴らが言っていたし」
「なにー、あんた一体誰?」
「ヴァンク・ノスの妻が他所で作った息子のリッキー・デメロン。魔法使いデメロンの息子で、浮気ママの子。ノス家に居るのはママの傀儡でした。あ、公爵追いかけないと」
そう言ってヤッヤモなのに中身は違うリッキーって奴は、ベルメリを振り切って、公爵を追いかける。それを追うセーン。
リューン爺さんは
「セーン、外に元凶の魔法使いも居るぞ。分かっているだろうな」
と、セーンに何だか注意した感じである。




