第16話
今回のエピソードはベルメリとヤッヤモのエピソードは無く、ヤーモの剣のエピソードで終始します。長くなってしまったので、ヤーモ達の話だけで終わりました。
ニキ爺さんと、ユーリーン婆さん、獣人国女王の身分のミーラさんのご懐妊のご機嫌伺いに城へ行こうとしたが、レンにミーラさんのママの実家に居ると言われ、急遽行先変更した。ミーラさんのママは結婚後直ぐに、今は亡き前王と離婚していて、前からママの実家がチーラやミーラさんの実家でもあるかの様だった。
獣人国特有の王様決定戦で勝利してあの王が出来上がったのだが、王座に就く前から跡取りとして、チーラとミーラは父親が引き取っていたが、ママとの交流は止められずに続いていたのだ。
ママの実家にはベルメリちゃんの父親も居候で滞在しており、2人が到着した日の晩餐は色んな話が出て賑わった。ベルメリちゃんの使い魔ヤッヤモの話の次に、セーンのヤモとヤーモの話に移り、その時当主の、チーラ、ミーラの伯父さんが、
「そう言えば、噂ではヤーモさんが珍しい妖剣を所有していますよね」
そういう事話した事は無いはずだし、話題になった機会があるとは思えず、目を白黒させるニキ爺さんとユーリーン婆さん。きょとんと彼を見つめると、
「失礼しました。ノスさんがこちらに滞在してすぐに、倉庫のノス家所有だった蔵書を熱心にご覧になるので、私も興味が出て来てノスさんと古い本を見て居ましたらね。どうやらセーンさんの使い魔が所有している妖剣についての記述らしい所があって、興味深かったのですよ」
彼の話によると、ある記録の中に、年配の使い魔が(壁の上一家の一人と思われるが記録でも年配とあり相当長生きだ)昔若い頃セピア公国の公爵の使い魔であった事が有り、その当時の公爵を守った手柄で、剣を賜り、それは魔力のないものが手に取ると狂うと言われている妖剣だと、書いてあった。数々の妖剣の禍の後、公爵家の蔵に押し込まれていたはずなのだが、何故か表に出て来た。つまるところ、その手柄というのが、公爵の腹違いの弟君が妖剣で公爵を殺そうとしたのを、阻止した事だったのだ。その剣をお払い箱的に使い魔に授けたと言うのが実情で、それが元の所有者の所に戻って来たと言う事らしい。それで興味深い事だとなる。その使い魔は妖剣をもらって北ニール地下の実家に戻ったそうで、真にヘキジョウさん一家の事と思えるし、ヤーモの剣はその妖剣と思ったニキとユーリーンだ。ニキ爺さんは、
「しかし、どうしてヤーモが持っている剣の事をこちらの方なのにご存じなので?」
レンが横から。
「俺がしゃべったに決まっているだろ。ヤモが以前、使い魔の老衰での死に際にそいつからヤーモが変な剣をもらったと言って心配していたからな。ヤーモがセピア公爵の使い魔になったと聞いて、俺も思い出したんだ」
「そうなのかー・・・」
見つめるジジババに、レン、
「何だよ。なんか文句あるのか」
ミーラさんも、
「何だか拗れ感あるのよねー」
ユーリーン婆さん、
「ほんと、別れた二人感、半端ないのよねー」
爺さんもため息交じりに、
「だったら、レンがヤーモを連れ戻しに行ったらどうなんだ。気になっているんだろう。ヤーモが苦労する前に引き取りたいんなら、行動に移したらどうなんだ」
レン、ぷいっと消えた。どうやら連れてくる気らしい。
ヤモは上空から、ヤーモを観察中だ。
ヤーモの手柄を召使一同からも喜ばれ、公爵家の主人が食べる料理をそっくりヤーモにも用意してもらい、食い放題飲み放題の様子を呆れて見ていたのだが、急にレンが横に現れてぎょっとする。
「おいおい、そんなに仰天しなくたっていいんじゃないのか。俺の気配ぐらい承知しているだろうに」
「いや、意外な奴の登場で驚いただけだ」
「ふん、おやおや、大した待遇じゃないか。この分じゃ、おデブヤーモが出来上がるのはニ、三日もかからないんじゃないか」
「それがどうした」
「おデブ使い魔はいただけないねぇ。使い物にならんだろ」
「だからそれがどうした」
「俺が引き取ってやろう、そうすればお前もこんな所にぽかんとしている必要ないんじゃないか。セーンのポッケでうっとりして居られるだろ」
「本気か、あの状態でどうやって連れて帰れる」
「おデブになると忠告してやる」
そこへ、本人のコンタクト、
『大きなお世話だ。日々筋トレしているからデブになんかなるものか。そーだなぁ、筋肉モリモリにはなるかも』
「どうだかな、美食家は早死にと相場は決まっている。獣人国に来たら塩味だけの肉の丸焼き食い放題だ。肉は塩で丸焼き以上の美味は無いな。お前も前に一緒に獣人国に行った時そう言っていたじゃないか。忘れたか」
『くーっ、肉で釣る気か。塩味の丸焼きーっ。・・・いえ、僕はこの公爵家の使い魔ですので、悪しからず。とっとと立ち去っていただきたいものです』
『それがそうもいかないんだ。お前の持っているその剣、爺さん使い魔から死に際に貰ったそうだが、そいつは爺さんがセピア公国のかなり前の代の公爵の使い魔だった頃、怪しい剣の処分がてら貰った剣だ。ここにその剣があってはならないらしい。だからお前もとっとと飯食ってずらかるのが身のためだな。ぐずぐずしていると要らぬ責めを負うかもしれないぞ。俺の使い魔になって獣人国に行ったら、丸焼きの肉食い放題だぞー』
ヤモもレンの言う事をへーと思い、
『ヤーモ、せっかく爺さんから貰った剣だろう。ここでその剣が変な動きしたら、直ぐあの剣だと知れるぞ。嫌な思いしても俺は知らんからな。とっととカーピンと手を切れ。きっとカーピン家に災いが来そうな剣なんだ』
『ふうん』
ヤーモが二人と熱心にコンタクトしていると、それを察したカーピン16世、イカレタという形容詞はやめた方が良さそうだ。
「ヤーモ、さっきから誰と連絡とっているのかな」
「えーと、どうしようかな。やっぱりやめとこかなー、俺、もう帰るわー。大体用事は済んだし。食うものは食ったし」
「何を言い出すんだ。ヤーモは私の使い魔になったんだろう」
「それがねー、何だか不味い事が有りそうでね。この剣、元カーピン家所有だったらしいよ。なんか、呪われて俺っちの爺さん使い魔にくれてやったらしい。お払い箱がてらね」
「何と、奇妙な話じゃないか」
「わざわざセーンの親父が来てここの使い魔になるのは、やめろとか言い出すし、今、上に居るんだけど、セーンの親父のレンってのが、次は自分の使い魔になる事になっていたとか、言い出すんだよね」
上空のヤモ、
「今、お前そんな事言ったっけ」
「いや、多分以前に一緒にうろついた時分に、俺が言った事を思い出したんだろうな。ふふん、その時きっとそのつもりになっていたんだろうよ。そんならそれでこっちにサッサと来ればいいものを。忘れていやがったな。まー、あまり利口じゃない方が良いかな。主人より利口な使い魔ってのは俺の好みじゃないからな」
「そーかい」
ヤモは内心、にやっと笑いたくなる。
カーピンの部屋の二人、
「そんなー、今更先約があった等と言われましても、私としては承知しかねますぞ。その上空のお方は聞いておられますかね」
「聞いてる、聞いてる。悪いが、当時こいつだって承知していたはず。だろ、おい」
レンがやって来て、ヤーモを軽く小突くと、てへらっと笑うヤーモ、
「あー、忘れちまってた。わりーな、カーピン。そういう事だから、俺もう帰るわー。ニキ爺さんの館にはまだゴロゴロ使い魔候補居るから、まだ小さいけど良い子多いよ。見繕いに行ってみたら?じゃね」
「そんなー」
涙目のカーピン16世、まだ言い募ろうと思っていると、シューっと何かが目の前に、
「おっと」
セーンの父親とのレンが目にも止まらぬ速さで何かを掴んだ。カーピンはぞっとした。
首すれすれまで飛んできたヤーモの例の剣、レンがつかんで動きを止めなければ、カーピンの首を切り落としていたであろう位置に確かにあった。
「危ない危ない」
レンが呟き、ヤーモも、
「あ、今の俺じゃあ間に合わなかったな。良かったねカーピン、レンが居て。じゃね」
そうヤーモは言って、二人は瞬間移動でカーピンの目の前から消えた。
「あーあ、居なくなってしまった。まだ小さい子って、会っていなかったけど。見に行こうかな」
ドアの陰から様子を窺っていた爺、
「しばらく間を開けた方が良くはございませんか。先日は早すぎる訪問でヒンシュクを買っておいででしょう」
ため息のカーピン16世だった。




