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私の愛する使い魔さん  作者: 龍冶


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第14話

 

 皆の予想通り、あれからヤーモは館に戻って来る事は無かった。セーン以外は、やれやれと日常に戻る事となったが、セーンひとり、ぐずぐずと不機嫌そうな様子。

 ベルメリちゃんは気の毒がって、自分の言動を反省しているようだが、ヤッヤモはそんな必要は無いのにと思う。ヤッヤモ的には気分の上昇は留まる事を知らない。生憎、先日のベルメリちゃんの名せりふはベルメリちゃんが『ほら』と言った時点で頭からすっぽ抜けて、いくら思い出そうと思っても思い出せない。『しかし思い出す必要もないのでは?ベルメリちゃんと僕の関係は事実って事だし』と独り言ちるヤッヤモだ。

 ココモとチーセン、ラーセンは不機嫌なセーンに追い立てられ、ハイスクールに戻っているので、ベルメリちゃんのお相手は、ヤコとキャイちゃんそしてヤッヤモが主である。

 最近のヤッヤモのうっとりぶりに、キャイちゃんは呆れる。

「ベルメリちゃんったら、ヤッヤモに何言ったの、何だか浮ついて気持ち悪いったらないわ。そう思わないヤコ」

「そうかも知れないね。キャイちゃんとしては。でも、使い魔と主人の関係ってのはそういうもんじゃないかな。セーンのしょげぶりは、引きずりやすいタイプだから、仕方ないかもしれないけど。ヤーモはヤモの子供なだけなんだから、気を取り直してほしいな。ホントの使い魔の絆じゃないだろ」

 キャイちゃんは、

「コピーなんだから、ひょっとしたら絆できちゃっていたのかもしれない。あたしはリューン爺さんが名付けてくれたのに、ちっとも構ってくれないし、ヤーモはあたしの育児放棄しちゃってて、ヤモが面倒見てくれたし、可愛そうなキャイちゃん。ベルメリママが頼りなのにー。セーンにかまってあげ過ぎと違う?」

「そーだねー、『ベルメリちゃんー、キャイちゃんが遊んでってー、ここにも寂しげにしている子が居るよー、セーンは大人だし』言っといたからね、キャイちゃん、ほら、慌てて来るヨ」

 ヤッヤモは気分の舞い上がりは押さえておこうと思う。キャイちゃんに悪いし。

「キャイちゃん、ごめんねー。キャイちゃんがママが居なくなって寂しくなってるの気付いてあげなくってー」

 慌ててやって来たベルメリに、キャイ、

「別に寂しくなんかなくってよ。あの方とは始めから相容れない関係だったのよー。可愛がってもらった記憶は無いんですの」

 ベルメリを見て、またイーとこのお嬢さんの芝居を始めたキャイちゃん。


 一方、カーピンのポケットで寝入ってしまったヤーモ。気付くとカーピンの自室にいるもよう。

「坊ちゃま、ようございましたね。爺の予想等よりも早々と念願がかなっておいでで、何よりです。しかし、奇妙なものが襲ってまいりましたんでしょう。護衛が報告しておりました。魔力のある傀儡と言っておりましたが、15世を襲った魔法使いの技によく似ておりますね。オーカー様が敵を討っていただけたものと思っておりましたのに」

「魔法使いなら、似たような事する奴もいるんじゃないのか」

 カーピン16世は近侍が何を懸念しているのか分からなかった。

 ポケットの中で、2人の会話を聞きながら、『魔法使いの技は、子孫に伝えるような技と違うからな。自分のガキに教えた途端、試し打ちとかで、実子に寝込みを襲われそうになるかも。大体、魔法使いも一流になると。根性悪がハンパないし、自分だけが操らなきゃ、価値が無いと思うけど。オーカーさんもしや傀儡を討ったのかな』と思えたヤーモ。新公爵を狙うやつが居そうだと分かったので、『俺って妖刀持っているし、ここで活躍できそうな感じだな。使える使い魔ってとこだろな』存在意義を感じ、すっかり満足のヤーモだ。セーンのポケットは、2番目感で少しつまらなくなっている所だったのだ。

 カーピンが寝入った後は、壁に張り付いて様子を窺うヤーモ。存在意義を感じ、気分良く辺りを窺うと、護衛の中に、魔法使いの手先と思しき奴が混じっているのに気付いた。

『ふーむ、カーピン家を根絶やしにしたい敵が居そうだな。だけど、新公爵になってから動き出したってのも、呑気と違うか。やりたきゃ、ちびの方が簡単だったはず』

 ヤーモ、あいにく推理とか苦手なので、段々眠くなる。うとうとしていると、急に殺気を感じて目が覚めた。

「はっ、ちびの使い魔なんぞ連れて来て、新公爵も大した事ないじゃないか。ひねりつぶしておけば、がっかりするだろうよ」

 手を伸ばして来た奴、意外と大柄だが、動きの鈍さに驚いてしまうヤーモ。

 さっさと、妖剣で腕を切り離すと、そいつは大声で喚き散らし、カーピンは驚いて目ざめ、辺りの護衛も参上した。

 寝ぼけ眼でカーピン、

「ヤーモ、でかしたな」 

 というのを聞きながら、

「あれ、居たの、家来っぽい奴。カーピン仕留めるの見物ってか」

 ヤーモが皮肉ると、遅れて駆け付けた近侍、

「お前たち、役立たずは首だっ」

 と怒りに任せて言い放った。

 十人ほどの護衛に、まともな奴は一人も居ず、すべて傀儡だった。ヤーモにやっと笑い、

「首だって、じゃ、良いかな」

 と言って、傀儡を全て妖剣を使って首をはねた。近侍が仰天するので、

「チー出て無いだろ」

 と指摘しなければならなかったヤーモ。

「あは、何だ、これは。まともな護衛は何処に行ったのかな」

 カーピン、やられそうだったのに、また呑気な言い様である。

「坊ちゃま、丁度使い魔を手に入れたところで、ようございましたな」

 近侍の合いの手も雰囲気があって面白い。眠くなってきたヤーモはカーピンのポケットで寝る事にする。

 近侍は召使を呼んで、首を切り落とされた傀儡を片付けにかかった。召使たちも、

「カーピン様の使い魔の強い事」

 と感嘆している声を聴きながら、ヤーモは充実感の様なものを覚えながら一休みである。


 セーンはヤモにセピアに行ってしまったヤーモの様子を教えてやりながら、

「ヤーモ、あんなに疲れやすい体質だったかな。というか、お前は疲れ知らずが取り柄と違ったかな。まさか、コピーミスか」

「今度は俺に、八つ当たりか。コピーミスとは言ったもんだな。変な因縁つけるなよ。きっと魔法に瘴気が入っていると思うな。またああいうのが来たら、ヤーモ危ないかもしれないな」

「危ないって?体力そがれて危ないって言う事か。あんなものにヤーモがやられて良いはずがないだろう。うむ、また来そうだな。助太刀に行こうか、ヤモ」

「リューンが、主人が使い魔を助けに行く等、有り得ないって、言った事なかったっけ」

「爺さんはどいつも昔気質だからね。古い流儀は時代遅れなんだよ。この前はとっさに言う通りにしたが、次はやめようと思っていたんだ。行くぞ。俺はな。ヤモは乗り気じゃない様だから。無理するな。ポケットから出ておけ」

「セーン、最近は『ポケットから出ろ』の台詞多いね。気に入らねーな、出て行ってやらないことにするから」

 そんな会話をしながら、2人して出かけた。


 ニキ爺さんの館の辺りの、カーピン公爵やって来るの大騒ぎの渦の中、例のレン似はずーとお勉強中だったが、セピアの国語の教科書の音読を辞めると、

「先生、何だかこの館、安全性が薄くなっていませんかね」

「何を心配している。いざとなったらこのガーレン、子供たちの盾となって賊と戦うつもりの、先生と呼ばれる男ぞ。これでも魔法使いとヴァンパイアのハーフだからな」

 そういくら言っても、レン似に「へー」と言われて参ってしまうガーレン。ところが事態はどんどん奇妙な成り行きになる。誰かが忍び込んだのではと、立ち上がったガーレンが同時に耳にしたのは、ヤッヤモの大声。

「何しやがる、お前は何者。あっベルメリちゃんに何する気だ?まてっ。くそう」

「先生、あのお方がさらわれたんじゃないですか」

 レン似に言われ、はっと目が覚めたガーレン。いつの間にか気を失ったかのように眠っていた。

「しまった眠気が来てしまったが、ベルメリちゃんは?誰かが襲って虐め合い居なくなっただとおお」

 ガーレンの叫びの意味を解説する。

 レン似によると、魔法使いらしき奴が、ベルメリちゃんをさらおうとするのに気付いたヤッヤモ、そいつに飛び掛かると跳ね飛ばされガラスの花瓶が壊れ、ヤッヤモはそこそこの負傷(出血がソコソコあると言う事)、怒ったベルメリちゃんが、魔法使いをグーで殴るも、魔法使いは少しよろけるだけで、ベルメリちゃんをさらい立ち去る。ソコソコ負傷のヤッヤモ、めげずに追いかける。と言われ、絶叫するガーレン。ガーレンは前もって、セーンから自分が留守の時はこの館を守れと言われており、『特にベルメリちゃんを』と念を押されていたのだ。セーンが戻ってくるまでにベルメリちゃんを連れて帰らねば、きっと怒りの爆発となると見ていた。

 ガーレンは慌てて、ヤッヤモの後を追おうとする。(ベルメリちゃんをさらった魔法使いは追おうにも気配は全くなかった)ところがっ。ヤッヤモも何処へ行ったのか気配が無くなった。

「早い」 

 呟くガーレン。レン似に冷ややかな目で見られるも気にせず、セーンの怒りを想像して打ち震えるガーレンだ。小さい頃の喧嘩の痛みを思い出す。喧嘩に強いセーンと思っていた世間知らずのガーレンだが、今ではセーンの実力は把握しているつもりだ。魔物だろうが小物なら一瞬で殺せることは知っていた。




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