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私の愛する使い魔さん  作者: 龍冶


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第13話

 

 カーピン16世、ユーリーン婆さんの家族の晩餐に招待されてはいたが、セーンの察するところによると、早朝発のセピア製高速船をチャーターしたらしく、船から降りると次は積んでいたセピア製最速スポーツカーでニールの舘まで文字通り最速でやって来た。 

 現在時刻午前9時53分、普段ならユーリーン婆がベッドから出るべきかを思案しているような時刻である。しかし今日は場合によっては出席メンバーの誰ぞは、最後の晩餐になるやも知れず、別れを予感しているかもしれない誰かのために、早めに準備すべきと思っていたユーリーン婆さんである。

 執事さんからカーピン公爵の訪れを知らされても、焦りはしなかった。お昼は招待していなかったはず、等と言う態度は決してせず、冷静に公爵をお迎えするつもりだった。

 しかし、カーピン16世は案内の執事さんを追い越し、さっさと朝ごはんを食べている最中のセーンの家族達の所へやって来た。

 おそらく皆でベランダに居た為、声が聞こえて居場所が分かったのだろう。

「セーン殿、今日はお招きありがとうございます」

 セーン、チーラさんに、

『朝飯の招待したかな』

 と念のために聞いてみる。

『してないわよ、何時だと思ってんのかしら』

 さしたる能力はもっていないと自覚しているカーピンだが、神経が張り詰めている場合等は、他人のコンタクトを察することができる。近侍にさえ教えてはいない特技、発動させていた。自分の意志とは無関係な発動能力であり、自分でも人に話すほどの物ではないと自覚していた。しかし、今日という日の発動は、自分の能力を褒めてやりたい心境である。

「早朝から押し掛けることになり、ご迷惑とは思いましたが、セーン殿の大事な使い魔の一人、噂ではヤーモというお名前の方をぜひともこのカーピンめにお譲りいただきたく、失礼を承知で訪問いたしました」

 位ではセーンよりもはるかに上位のカーピン公爵の口上に、驚いたセーン。一瞬返答に窮す。するとその間に、ポケットのヤーモ、顔を出して、

「大層な申し出だねぇ。セーン、どうする。俺は行ってやっても良いけど」

 セーン、ヤーモの性格からして、真に言いそうなセリフと思った。

 先日ヤッヤモがセーンにコンタクトしてきて教えてくれた、ベルメリちゃんの言っていた言葉『スイーツやかわいい服につられてセピアに行く気になるヘキジョウさんっ子がいるかもしれない』を思い出す。『スイーツや服はともかく、こういう成り行きになれば、ヤーモの性格からして、自分から行くと言い出す可脳性があったのに、先に行くなと言い聞かせておくべきだった』と後悔したセーンである。

 セーンの思いを察したヤーモ、『俺、行ったらだめなのか』『あんまりじゃないか、俺との仲より公爵家の待遇の方が良いなんて』セーン、文句を言った挙句こみあげてくるものがあり、テーブルに突っ伏して涙にくれる。ニーセンユーセンはパパの泣きにつられて、大泣きの合唱となった。

 チーラは呆れて、

「あらあら、こんなに泣きべそさんばかりだったなんてー、信じられない」

 ヤーモ、仕方なく、カーピン公爵に、

「せっかくだけど、セーンが、泣き状態に入ったのでお断りします」

 ヤモも顔を出し、

「あったりまえだ。主人を泣かす使い魔なんぞ、使い魔の資格なしと言いたいけど、ご主人様の希望により資格を奪う訳にも行かないし、カーピンはあきらめろよ。晩餐食わずに次の船で、いや、チャーターだったか。さっさとセピアに戻れよ。忠告じゃない、使い魔の長の命令だからな。この騒ぎを見て察しろよ」

 カーピン公爵、思いもよらぬ状況になり、ここは一旦引くべきと思えた。

「そうですね。今日は帰らせていただきましょう。ヤーモさんのお気持ちはお聞きしましたので、今日の所はそれで充分です」

 ヤモ、

「どあほうのヤーモの言う事、本気にするな。二度とこの館の敷居をまたぐなよ。この館でその面見たら、この使い魔の長、ヤモ様が只じゃ置かないからなー」

 ヤーモ、ヤモに忠告しておく。

「ヤモ、不敬罪で捕まるんじゃないか」

「ヤーモさん、御心配には及びませんよ。今日は付き人は連れて来ませんでしたからね。ではセーン殿、お騒がせして申し訳ありませんでしたね。今日はせっかくのお招きでしたが、失礼します」

 そう言ってカーピン公爵は良い所の人らしく、しずしずと立ち去った。

 すでに泣き止んでいたセーン、顔を上げると、

「ったく、ヤーモときたら、信じられない言い草だったな。しばらくお前とは口きかないからな。ポケットから出ていたって良いんだぞ」

 ヤーモは、

「セーン、拗ねてやんの。仕方ないね。のぞき見しているベルメリちゃん達と遊んでよーっと」


 気付かれないようにと思っていたベルメリとヤッヤモ、興味しんしんで様子を窺っていたのだが、バレていたのが分かり、がっくり来た。

 ヤーモさんがベルメリちゃん達の所へ行き、

「面白かったかな。でも仕方なかったんだよねー。早く帰らせるのにはこれがいちばんだし」

「あれっ、本気じゃなかったの。セーンさんの泣きから、ニー、ユーの大泣きで混沌状態が始まるのを見越していたって事」

「ふふん、どうかな」

 ヤモさんがベルメリ達の会話を聞きかじり、

「ヤーモ、今の話不敬罪で捕まる理由の一位だな」

「どーして一位になる?」

 ヤーモさん、ヤモさんに飛び掛かろうとして、急に立ち止まった。ベルメリにも何だか嫌な感覚があった。

「きゃー、何だかおどろおどろしいのが、外に居るけどー。此処に用があるんじゃ無さそう、と言う事は」

 ベルメリが言い終わるよりも早く、ヤーモさんは瞬間移動で、カーピンを助けに言ったもよう。

「わーっ、ヤーモさん助けに行ったの?なんだかカッコいいけど、皆さんは行かないの」

 ヤモさん、

「俺らも行くのは、野暮ってもんだろ。小物だったらカーピン、仕込みやがったなと言いたい所だけど、あーいうのをカーピンが見知っているとは思えないしな。純粋にヤーモは助けに行ったんだな。ってとこだな」

 へえっと思いながら、ベルメリは何故かヤーモさんが辺りの賊の相手をしている情景が分かった。

「わぁ、ヤーモさんって強いのねー。剣持っているし。あーっ、危ない、事も無いか。まっ、変なのがー、まだまだ増えて来る。わー、ヤーモさんつおいー。あの武器って何?なんだか魔力持ちの剣?というか魔力がアツーい剣って感覚ねー。妖剣って感じ」

「ベルメリちゃん、様子が分かるの。すごい、パパの能力の上手を行くんだね」

 セーンが声をかけて来て首を傾げた。セーン、ベルメリちゃんを見て、

「こんな能力持ちが居るのか。ベルメリちゃんはパパより上手かも」

 ヤッヤモも相槌を打つ。

「セーンもそう思うか。だよなー。後から様子が分かるより、実況中継が直ぐ出来るってのは、引く手あまたと違うかな。世間に知られれば。あ、どうしたのベルメリちゃん」

 ベルメリちゃん、くるっとセーンを振りかえり、

「ごめんなさい。あたしがカーピンに言った事、ホラじゃなくって真実だったんだ。彼らの様子見たら、分かるの。セーンさんとヤモさんみたいな絆が、出来始めているの。カーピンはあながちいかれた奴じゃないみたいなの」

 ヤモ、吹き出す。

 ベルメリはそれを見て、『やっぱりー親子だな。笑い方、よく似てる』と感心するが、

 ヤッヤモに、『違うよ、コピーなんだから同じなの』と言われた。

 セーンは、またふらふらとチーラの側に戻り、

「ヤーモはもう戻ってこない」

 涙にくれるので、

「仕方ないわ。使い魔はきっと、一人に一人ずつなのよ」

 ときっちりいうチーラさん。


 一方、魔法使いの作り出した傀儡と思える代物を何とか一人で切り捨てて、疲れてゼーゼー言い出したヤーモ。

「ご苦労だったな、ヤーモさん。助けに来てくれるとは。少しは期待して良いのだろうか」

 自分が狙われていたと言うのに、随分呑気にしているカーピン公爵。

「ずいぶんと不思議な剣を持っているな、ヤーモさんは。妖剣とか言うものであろうかの。おそらく誰にも譲る気は無かろうな。その剣を我にくれるなら、使い魔の件は諦めてやってもいいのだがな」

「ふふん、さっき俺が断ったから、お前も拗ねてやんのか。俺にこれを死ぬ前にくれた壁の上の爺さんは、この妖剣は魔力の無い奴が持つと狂うと言っていたな。いくら公爵だろうが、差し出す訳にはいかないし」

「という事は、ヤーモさんは承知してくれるって事だろう。セピアに共に帰ってくれるのか」

 ヤーモは金襴な上着のポケットに入ってみた。『うーん、裏地もイー生地だねぇ』とか感想を言いながら、疲れで、直ぐ寝入ってしまったヤーモ。

「ヤーモさん?」

 ポケットの中を覗いてみるカーピン公爵。思ったよりも小さな使い魔さんだった。胸が熱くなり、涙が出ると、ヤーモにポトリと落ちてしまった。

「あーすまない、睡眠妨害だったか」

 カーピンの言葉を聞いているのかいないのか、ヤーモは眠ったままだ。


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