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昇格への道筋

「……次の調査は半月後になるでしょう。本部でも話し合いが必要ですから」

彼女は杖を握り直し、二人を真っ直ぐに見据えた。 「その間に、あなたたちをCランクに上げます」

ライネルは目を瞬かせた。 「僕たちでも……昇格できるんですか?」

「ええ。あなたたちは七件の採取依頼をこなしました。しかしCランクには“討伐依頼の実績”も必要です。  あと三件、討伐を達成すれば条件は満たせます」

ライネルは拳を握り、力強く頷いた。 「……やります。必ず!」

葛葉は紫煙を吐き、鼻で笑った。 「なるほどな。草むしり専門から、ようやく“冒険者”の端に立てるってわけか」

ネリンは真顔のまま返す。 「骨を折る覚悟がなければ、この先には進めません」

ライネルは背筋を伸ばし、葛葉は飄々と肩をすくめて笑った。

三人はギルドの大広間へ戻った。 昼下がりの広間は冒険者でごった返し、依頼掲示板には人だかりができている。

壁に張り出された依頼票を眺めると、ほとんどは採取や運搬。討伐は数えるほどしかない。

ライネルが首を傾げる。 「……こんなに少ないんですね」

ネリンは低く答えた。 「本来、人類領の奥では魔物は滅多に現れません。ですが白塩化で森が痩せ、餌を失った魔物が人里に出てきている。――あなたたちが遭遇した熊もそうでした」

ライネルは眉をひそめ、思わず呟いた。 「じゃあ……これも……」

彼の目が掲示板の一枚に止まる。 《畑を荒らすカエル型の魔物討伐》 農村からの切実な訴えが簡潔に記されていた。

葛葉は依頼票を指先で弾き、にやりと笑った。 「カエル退治とは、随分と泥臭ぇ仕事だな」

「地味でも立派な討伐依頼です。これを達成すれば一歩前進できます」 ネリンは依頼票を剥がし、窓口へ持っていった。

窓口係が受注印を押す。 その様子を見ていた周囲の冒険者が、嘲るように声を上げた。

「おい見ろよ、Bランクがガキ二人連れてカエル退治だってよ」 「介護ご苦労さんってところか」

小さな笑いが広がり、背中に刺さる視線が痛いほどだった。

ライネルは顔を赤くして拳を握りしめる。 葛葉は紫煙を吐き、肩を竦めて飄々と洩らした。 「……まあ、やってみせりゃ黙るさ」

ネリンは何も言わず、依頼票を懐に収めて二人を先へ導いた。

こうして彼らの前に、最初の討伐依頼が示された。 向かうのは都市近郊の農村。 依頼を受けたあと、三人は農村に向かう前に装備と物資を整えることにした。

パルディアンの大市場は、夕暮れ時でも人でごった返していた。 水路沿いには舟が並び、魚を捌く包丁の音、果物を売る声、香辛料の匂いが入り混じっている。

ライネルは目を輝かせてあちこちを見回した。 「すごい……! 魚が跳ねてる舟がある! あっちでは果物が山みたいに積まれて……!」

葛葉は樽が並ぶ一角で立ち止まり、鼻をひくつかせる。 「ふん……こっちはこっちで悪くねぇ匂いだな」 いつの間にか商人と試飲のやり取りを始めていた。

ネリンは呆れたように肩をすくめつつも、店主と真剣に交渉して保存食や薬草を揃えていく。 二人の浮かれぶりに苦笑を浮かべながらも、声を荒げることはなかった。

やがて三人は広場で合流し、それぞれの袋を抱えて歩き出す。

「さて、準備は整いました。……行きましょう」 ネリンの言葉に、ライネルは力強く頷き、葛葉は紫煙を吐きながらにやりと笑った。

水上都市の賑わいを背に、三人は農村へと歩を進める。 畑を荒らすカエル型の魔物。 それは彼らにとって、昇格への第一歩となる戦いの始まりだった。

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