第3話:はじめての猫会議
翌日の夕方。
くーちゃんが、わたしをある場所へ案内した。
「ちょっと待って。ここ……公園の倉庫裏じゃん」
> 「ああ。昼間はただの物置。夜は“猫会議場”だ」
“猫会議”──。
都市伝説で聞いたことはある。
夜になると猫たちが集まって、何やらヒソヒソやってるってやつ。
中は意外と広くて、古いソファとか毛布とか、廃品っぽいもので囲われていた。
まるで秘密基地。
その真ん中に、10匹以上の猫が輪になって座っていた。
> 「お、来たな人間」
「お前が“半猫”の新人か」
「……においは悪くないな」
次々に猫たちがこちらを向く。
うわ、なんか面接されてる気分……!
「aikoです……よろしく……にゃ?」
> 「にゃは不要だ」
> 「我々は貴様を“観察対象”とする」
「……いずれ、お前が人か猫か見極めるためにな」
「えっ、なにそれ怖い」
> 「心配するな。猫として生きるなら、歓迎する。だが──」
「“人間”として戻ろうとするなら……“拒絶”が始まる」
ぞっとした。
猫たちの目が、すべてわたしを見ていた。
可愛い見た目なのに、言葉はやたらにシリアス。
すると、くーちゃんがフォローを入れる。
> 「まぁ、脅してるわけじゃねえよ。あんたの意思を知りたいだけだ」
「“猫である”ってどういうことか、それを理解しなきゃ、どっちにもなれねぇからな」
つまり、人間でもなく猫でもない今の自分は、まだグレーゾーンってことか。
「……わかった。しばらく、猫の世界を見てみたい」
> 「ふん……面白くなってきたな」
「じゃあ、最初の任務を与える」
最初の“任務”?
まさか猫界って、部活みたいな仕組みあるの?
> 「明日の夜、廃ビルに集まっている“迷い猫”を保護せよ」
「一匹の“人間帰り”がいる。放っておけば“壊れる”」
「人間帰り……?」
> 「かつて“猫になりかけた人間”。でも、それを拒んだ者」
「結果、どちらでもなくなり、“壊れていった者”だ」
わたしと──同じ存在だったかもしれない人。
未来の自分の姿、かもしれない。
胸がざわつく。
これはもう、“他人事”じゃない。
「わかった。やってみる」
猫たちは静かに頷いた。
こうして、わたしの最初の猫任務が始まった。