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僕の彼女はやばい  作者: 脇汗ベリッシマ
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“めでたい”とか言ってるけど、真鯛は急すぎる

七瀬梓と“お試し交際”を始めて、一週間。


 


 正直、毎日がカオスだった。

 けどその中に、ちいさな光みたいな優しさがあった。


 


《おはよう!今日も世界をぶっ壊す勢いでがんばれ!》

《今日の空、見た?例の“人類滅亡系アニメの最終回前”みたいだったね!じゃ、仕事いってら〜》

《おつかれ。明日も生きろよー。おやすみ!》


 


 唐突なテンションと、意味不明なセンス。

 でも……毎日必ず送られてくるメッセージ。


 


(あの人、意外と……律儀というか、ちゃんとしてるというか……)


 


 そんなことを考えていた金曜日の夜、仕事終わりの駅前。


 今日もきっとどこかぶっ飛んだデートになるんだろうな、と

 ちょっと覚悟しながら待っていると――


 


「おっつかれー!よし、じゃあ行こっか!」


「はい。今日はどこへ……?」


「船!」


「……はい?」


「真鯛釣りに行くんだよ。船で!」


「……は??」


「だってさ。付き合ったんだもん!

 真鯛で祝いたいじゃん!

 “めでたい”ってね!!!」


 


 満面の笑みでダジャレぶっこんでくる彼女は、

 ヒールで船に乗る気満々だった。


 


「……僕、酔いますよ。船、普通に酔いますからね……?」


「大丈夫大丈夫。最悪、真鯛が慰めてくれるし!」


「真鯛に慰められるってどんな状況ですか!?」


「いや、真鯛って結構表情あるよ。釣られた瞬間、悟った顔するし」


「そんな観察してる人初めて見ました……」


 


 気づけば、俺の週末はまたしても予測不可能な未来へ突っ込んでいた。


 でも――

 携帯の通知を見ると、今日も「おはよう」から始まって「おやすみ」で終わるメッセージが並んでた。


 


 だから俺は、苦笑しながらも言った。


「……今日も、付き合いますよ。

 真鯛くらい、全力で釣り上げます」


 


「よっしゃ!そうこなくっちゃ!

 風間くん、今日は“めでたい彼氏”って呼んであげる!」


「やめてください、恥ずかしすぎて釣り竿持てなくなります」


 


 そして――

 “付き合って最初の記念日は、船上の真鯛”という、謎に豪快な記録が生まれることになった。

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