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僕の彼女はやばい  作者: 脇汗ベリッシマ
19/23

ギプス解禁・全力で夜の公園を制圧すな

「風間くん。ギプス、今日……外れました」


金曜の夜、いつもよりテンション高めの梓さんは、

なぜかスニーカーを履いていた。


「それは……おめでとうございます。

 っていうか、まだ本調子じゃないですよね?いきなりそんな――」


「さあ!行こうか!夜の公園に!!!」


「ちょ、待ってください!?なぜ夜!?なぜ公園!?回復祝いってそういう方向性!?」


 


そして――

俺たちは、夜の公園で全力でブランコに乗っていた。


 


「風間くん、もっと漕いで!角度が甘い!!」


「いやいや!もう脚の問題じゃなくて社会的な意味で危ないですって!!」


「ギプスから解き放たれた私に、限界は存在しない!!」


「だからって夜10時の公園で滑り台ダッシュしないでください!!!」


 


次に始まったのは、“ジャングルジム頂上決戦”。


「わたし頂点立ったら叫ぶからね」


「いやそれはまずい!通報されますって!!」


 


しかし――悲劇は突然やってきた。


「すみませーん、ちょっといいですか?」


 


振り返ると、懐中電灯を構えた制服の警官がふたり。


 


梓さん、笑顔のまま静止。

俺、滑り台の途中で完全にフリーズ。


 


「……あの、おふたり……ご職業は?」


「社会人です……営業です……」


「はい。私は商社勤務です……(小声)」


 


警官、ちらっと俺らを見る。


「夜の公園でブランコとジャングルジムを全力で……ですか?」


「ギプスが、取れたんです」


「ケガが、治ったんです」


「なるほど……では身分証を拝見しても?」


 


……10分後。


「おふたりとも問題なかったので、気をつけてお帰りくださいね」


「はい……ありがとうございました……」


 


公園の出口で、しゅんとしながら靴紐を結ぶ梓さんが言った。


「……風間くん、人生初の職質、付き合ってくれてありがとう」


「こちらこそ……思い出が、深すぎました」


 


そして帰り道。


彼女はふっと笑って言った。


「でも、職質されるくらい楽しかったって、なんかいいね」


 


その笑顔見たら、俺の中のジャングルジムがまた揺れた気がした。


 


――自由って、ギプスが取れる以上に、

やばい彼女の欲望にブレーキが効かなくなるって意味だったらしい。

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