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僕の彼女はやばい  作者: 脇汗ベリッシマ
16/23

副業じゃないもん、ボランティアだもん。

その日、朝から胸騒ぎがしてた。


「駅前広場で待ち合わせね。スーツで来て!」


梓さんからのLINEに、イヤな予感しかしない。

だが指定された時間に向かうと――


 


いた。

松葉杖ついたアニメキャラの格好で、満面の笑みでビラを配ってる女。


……あの人、うちの彼女です。


 


「お待たせしました……って、ちょっと、何してるんですか」


「見てわかんない?“ミツキちゃん”だよ。“怪我しても戦うヒロイン”!」


「……なんで、その状態でコスプレしてまで街頭に立つんですか」


「リアル松葉杖、使わなきゃもったいないじゃん?再現度、MAXでしょ?」


誇らしげな笑顔で言う梓さん。

いや、使い方違うし。医者が泣くぞ。


 


「で、風間くんはこれ着て。君はナオくん」


「……誰ですかそれ」


「ミツキちゃんのサポート役!空気読めないけど、情に厚いサブキャラ!」


「……どう考えても、俺、地味枠じゃないですか」


「大丈夫大丈夫!ナオくん、ガチ勢に人気だから!」


 


そう言って渡されたカーディガンと謎のビラ束。

……もう、逃げられない空気だった。


 


「……あの、俺、会社副業禁止なんですけど」


「うんうん、大丈夫!これはボランティアだから!」


「……いやいや、思いっきり働かされてますよね?これ」


「ノンノン。“推しへの愛”は、労働にカウントされません!」


「……俺、社内コンプライアンス部に謝っときます」


 


こうして俺たちは、駅前の片隅に立つことになった。


松葉杖の美少女と、地味サブキャラ(俺)の謎タッグで。


 


「ミツキちゃんだー!かわいいー!」

「写真撮ってもいいですか!?」

「お大事にー!」


梓さんはバッチバチに決まった笑顔でピースをキメてた。

……いやほんと、俺、何やってんだ。


 


(でもまぁ……なんだろうな)


横で笑ってる彼女を見ると、

全部バカバカしいのに、不思議と悪くないと思ってしまう。

そういうとこなんだよな、この人のすげぇとこって。


 



ビラを配り終えたあとのラーメン屋。


「風間くん、今日も付き合ってくれてありがと。

 風間くんがナオくんで、マジ助かった!」


「……いえ、俺でよければ……」


「うわ、なにそれ!超ナオくんセリフじゃん!」


「……俺、もうダメかもしれません」


 


ラーメンを前にドヤ顔を決めた彼女が、こう言った。


「副業は禁止でも、恋は自由だから」


 


――またひとつ、俺の常識が破壊された夜だった。


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