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僕の彼女はやばい  作者: 脇汗ベリッシマ
13/23

氷上のルッツと、恋人の悲鳴

金曜日。昼過ぎ。


 俺はスマホを見ながら、ひとつため息をついた。


 


《風間くん!今夜は決めた!スケート行こ!》


 


 ――付き合って初の金曜。

 普通はもうちょっと、落ち着いたデートになるのでは……?


 たとえば映画とか、ディナーとか、イルミネーションとか。


 


 それが、氷。スケートリンク。


 


 ……まぁ、彼女らしいっていえば、らしいんだけど。


 


 


 *


 


 夜、スケート場。


 


 俺が人生2回目のスケート靴を必死に履いてる横で――

 彼女は既に、氷の上でくるくる滑っていた。


 


「たのしぃぃぃぃーー!!!」


 


 叫びながらターン、ターン、ちょっとジャンプ(風)!

 歓声は誰も上げてないけど、本人だけは完全に金メダルの空気感。


 


 そして、悲劇は突然やってきた。


 


「風間くん!見ててーー!!

 トリプルルッツいくよー!!」


 


「ちょ、ちょっと待ってルッツって何!?それ危ないやつ!?」


 


 ――その瞬間、彼女はターンして、腕を広げて舞い始めた。


 


「フィギュア~~~!!」


 


 からの――


 


 ズシャァァアアッ!!!!!!!


 


 ――鈍い音。


 思わず、心臓が止まった。


 


「梓さん!?」


 


 彼女は、リンクに倒れていた。


 変な角度で、片足を抱えながら、顔が引きつっている。


 


「……ごめん。動かすと、死ぬほど痛いかも」


「待って、ヤバいやつ!?音やばかったですよ!?折れた!?いや折れてるよねこれ!?」


「ちょっと、骨……って感じする」


「救護室!誰か!スタッフさーーーん!!!!!」


 


 俺は、彼女を抱きかかえるようにして、リンクの外へ運んだ。


 


「笑って……ちょっと、笑っててよ……」


「え、何が?」


「風間くん、マジすぎて顔こわい……」


「笑えねぇよ!!!初彼氏になって、初金曜で骨折って……こんなルート聞いてない!!!」


「……ごめん、でも……めっちゃ楽しかった」


「感想がポジティブすぎる!!」


 


 リンクの外。

 スタッフに連れられて、救護室へ。


 梓は痛みで顔をしかめながらも、ちょっと笑っていた。


 


「……来週は、片足でいけるアクティビティ探そっか」


「まだ攻める気なの!?」


 


 


 正式に付き合って、最初の金曜。

 俺は、恋人の骨が折れる音を聞いた。


 ――恋って、予定調和じゃない。


 だけどそれでも、


 **「この人となら、何が起きても楽しい」**って、

 俺は本気で思ってた。


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