更新日、君と続ける恋
金曜の夜。駅前のカフェ。
いつもなら、梓さんは開口一番ぶっ飛んだ提案をしてくる。
「今夜は真鯛釣るぞー!」とか、「ディスコ復活祭行こ!」とか。
でも、今日は違った。
「……こんばんは」
声が、妙に小さい。
表情も、ちょっとこわばってて。
(……あれ?)
(今日でちょうど、付き合って3ヶ月。
でも、まさか――“終わり”ってこと……?)
食事中も、いつもより静か。
笑ってはいるけど、どこか落ち着かない感じ。
俺の心臓は、ずっとドラムソロしてた。
耐えきれず、俺は言った。
「……あの、今日で、ちょうど3ヶ月ですよね」
梓さんは、びくっと肩を揺らした。
「……うん。だから…怖いの…」
視線を落として、手元をいじる。
そして、小さな声で言った。
「いままで、いっぱい告白されてきたけど……
いざお付き合いしても一回か二回で終わるの」
「“なんか違った”とか、“イメージと違う”とか、
“疲れる”とか、言われて……
こっちは全力で楽しんでただけなのに、
こっちが悪かったみたいに、終わるの」
俺は――静かに息を吸って、吐いて、答えた。
「俺は……疲れるどころか、毎週、生き返ってますよ」
「金曜があるから、月曜から頑張れるんです」
「梓さんが笑ってくれたら、全部チャラになるって思ってますから」
「なんか違った? ……違いましたよ。
でも、その“違う”が、俺にとっては、全部“最高”でした」
「他の誰にもできないこと、毎週してくれるんですよ。
真鯛釣ったり、ディスコで踊ったり、火をきりもみ式で起こしたり……」
「そんなん、“違う”じゃなくて、“最高”って呼ぶんです」
梓さんの肩が、ぴくっと揺れた。
「疲れる……?」
「……じゃあ俺、“疲れさせてほしくて”金曜に会いに来てるのかもしれません」
「週末に、全身フル稼働で恋できるの、たぶん今だけですから」
「……更新とか関係なく、
俺、これからも“彼氏”でいさせてください」
梓さんは、下を向いたまま、しばらく動かなかった。
そして――
「……なにそれ……」
顔を真っ赤にして、目をそらしながら、ぽつり。
「……バカじゃん……」
「……ずるいよ……」
「……好きになっちゃうじゃん……」
風間樹、22歳。営業マン。
本日、お試しから本契約へと進みました。