既読のない週末
木曜日の夜――
スマホに、梓さんからメッセージが届いた。
《明日は会えない ごめん》
短くて、少しだけ素っ気ない文面。
けれど俺は、それを何度も読み返していた。
(何かあったのかな……?)
(“ごめん”って、どういう……?)
(体調悪い? 仕事?)
(……俺、なんかしたか……?)
既読は、つかない。
*
金曜日。
本来なら一緒に過ごしてたはずの夜。
俺はひとり、コンビニで半額の弁当を買って、家に帰った。
テレビをつけても、笑い声は虚ろで。
スマホが鳴るたびに、反射で画面を見てしまう。
でもそれは、通販アプリの通知だったり、会社のグルチャだったり。
――梓さんからは、何もない。
*
土曜日。
午前中は散歩に出てみた。
天気は快晴。だけど、空がやけに遠く見えた。
カフェに入ってみても、周囲のカップルが目に入るだけで、味はしなかった。
(何してるんだろう、俺)
会ってる時は、振り回されてばかりだった。
でも、こうして会えない時間が続くと、
“振り回されてたこと”すら、恋しかった。
*
日曜日。
誰とも会話せず、ひとりで飯を食って、ひとりで部屋を掃除して、ひとりで寝た。
スマホは、ずっと画面を下に伏せてあった。
(……どうしよう。もう、終わりなのかな)
そう思った瞬間、心臓が、ギュッと縮んだ気がした。
*
――月曜の朝。
スマホを何気なく手に取る。
……そこには、小さな文字が。
《既読》
ただそれだけで、心が、ふわっと浮いた。
「……ああ、よかった……」
声が、自然と漏れた。
会えなくても、返事がなくても、
“ちゃんと生きてる”って、それだけで救われる。
彼女が今どこで何をしてるのかは、わからない。
でも――もう少しだけ、信じてみようと思った。
次の金曜日が、また来るといい。