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僕の彼女はやばい  作者: 脇汗ベリッシマ
10/23

既読のない週末

木曜日の夜――


 スマホに、梓さんからメッセージが届いた。


 


《明日は会えない ごめん》


 


 短くて、少しだけ素っ気ない文面。

 けれど俺は、それを何度も読み返していた。


 


 (何かあったのかな……?)


 (“ごめん”って、どういう……?)


 (体調悪い? 仕事?)


 (……俺、なんかしたか……?)


 


 既読は、つかない。


 


 


 *


 


 金曜日。


 本来なら一緒に過ごしてたはずの夜。


 俺はひとり、コンビニで半額の弁当を買って、家に帰った。


 


 テレビをつけても、笑い声は虚ろで。

 スマホが鳴るたびに、反射で画面を見てしまう。


 でもそれは、通販アプリの通知だったり、会社のグルチャだったり。


 


 ――梓さんからは、何もない。


 


 


 *


 


 土曜日。


 午前中は散歩に出てみた。

 天気は快晴。だけど、空がやけに遠く見えた。


 カフェに入ってみても、周囲のカップルが目に入るだけで、味はしなかった。


 


 (何してるんだろう、俺)


 


 会ってる時は、振り回されてばかりだった。


 でも、こうして会えない時間が続くと、

 “振り回されてたこと”すら、恋しかった。


 


 


 *


 


 日曜日。


 誰とも会話せず、ひとりで飯を食って、ひとりで部屋を掃除して、ひとりで寝た。


 スマホは、ずっと画面を下に伏せてあった。


 


 (……どうしよう。もう、終わりなのかな)


 そう思った瞬間、心臓が、ギュッと縮んだ気がした。


 


 


 *


 


 ――月曜の朝。


 


 スマホを何気なく手に取る。


 


 ……そこには、小さな文字が。


 


《既読》


 


 


 ただそれだけで、心が、ふわっと浮いた。


 


「……ああ、よかった……」


 


 声が、自然と漏れた。


 会えなくても、返事がなくても、

 “ちゃんと生きてる”って、それだけで救われる。


 


 彼女が今どこで何をしてるのかは、わからない。


 でも――もう少しだけ、信じてみようと思った。


 


 


 次の金曜日が、また来るといい。


 


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