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第二話 病院で・・・


誰かがどこかで傷ついている・・・


誰かがどこかで悲しんでいる・・・


誰かがどこかで嘆いている・・・


誰かが俺を求めている・・・


誰かが俺に・・・願いを・・・




「っ、・・ここ、は?」


目を覚まして一番に入ってきたのは真っ白な天井だった・・・


「目が、覚めましたか?」


「っ!?」


急に女性の顔が目の前に・・・!


「驚きましたか?ここは病院です。櫻井さん、二日間も眠ってらしたんですよ」


ナース服に身を包んだ看護婦のお姉さんは笑顔で告げる。


「あの、俺はどうして、ここに・・・」


「あ・・・もしかして記憶が混乱しているんですか?けど大丈夫ですよ、永い眠りについていた人によく顕れる症状ですから」


そう言って看護婦のお姉さんはニッコリ笑った。


「あのっ痛!?」


身を起したそうと背中を曲げた時、衝撃が走った。

瞬間、倒れる前の記憶がよみがえる・・・


「駄目です!身体を起こしては。まだ傷が塞がっていないんですから」


そう言って看護婦のお姉さんは静かに身体を寝かしてくれた。

なんだか照れるが今はそれより・・・


記憶が戻った瞬間、俺はあの赤い少女が気になった。

俺は・・・掴むことができなかった・・・


俺は・・・


「大丈夫ですか?」


看護婦の姉さんは優しく手を握ってくれた。

自然と力が入っていた拳が急速にゆるんでく・・・


「あの・・・女の子は・・・?」


俺は恐る恐る聞いてみた。あの高さから落ちたら助かるわけがない。

それでも一縷いちるの望みをかけて・・・



「え、女の子?私以外この病室に女の子は来ていませんよ?そもそも櫻井さんは面会謝絶ですので見舞いの方も・・・」


「いや、違います、女の子が俺以外にも運ばれてきていませんか?」


「女の子?あの日運ばれてきたのは櫻井さんだけでしたが・・・」


「えっ?じゃあ他の病院に!?」


「うーん、まだ記憶が混乱しているみたいですね。意識は戻ってもこれでは事情聴取など無理でしょう。警察の方にはこちらから報告しておきますので、櫻井さんはゆっくりと休んでいてください。くれぐれも身体を動かさないように。いいですね?」


「えっ?・・・ちょっと待っ」


「心配しないでください。夜になったらまた来ます」


「えっ?」


そう言って看護婦らしきお姉さんは病室から去って行った。




何がどうなっているんだろう・・・

女の子は死んでしまったのだろうか・・・


あの時俺は、少女を掴もうとした瞬間、何かに腕を引っ張られ、それで急に背中に激痛を感じて・・・


「痛っっ!!」


少し動くだけでも背中が痛む。

くそ、・・・訳の分からないことだらけだ。

女の子はどうなってしまったんだ・・・


誰か事情を知る人はいないのだろうか・・・

俺は手元にあったナースコールを押し、何か事情を知らないか看護婦さんに尋ねることにした。


「どうしましたか?」


「あのちょっと聞きたいことがあって・・・」


「聞きたいことですか?ちょっと待ってください・・・・・春野先生、櫻井さんが何か聞きたいことがあるそうですけど、「分かりました。すぐ行きます」 え?でも春野先生、今から山下さんの検診に行くんじゃ「そんなのは後回しです」・・・あ、はい。わかりました・・・櫻井さん、今から行きますのでちょっと待っていてくださいね」


「あ・・・はい」


さっきの後ろでのやり取りは何だろう?


コンコン


「あ、はい。どうぞ」


「失礼します。どうしましたか櫻井さん」


扉を開けて入ってきたのは先ほどと同じナース服を着た看護婦のお姉さんだった。

えーと・・・この人が春野先生なのだろうか・・・


「あの、さっきナースコールしたとき、後ろの方で春野先生と呼ばれている方が来ると聞いたのですが・・・」


「ええ、私が春野ですよ。そういえば名乗っていませんでしたね。私が春野恵はるのめぐみです。

よろしければ「めぐみ」と呼んでもらっても構いませんよ」


「は?・・あ、、いや・・・すいません。ナース服を着ているのでてっきり看護婦さんかと・・・」


「ああ、これですか?単に白衣よりナース服のほうが櫻井さんにウケるかと思いまして着替えてたんです。お気に召しませんか?」


「いや、そんなこととは・・・・」


「そうですか、良かったです」


そう言って心から安堵した表情を浮かべる看護婦のお姉さん改め女医のお姉さん (春野先生)

・・・何なんだろうこの人は、どこか危ない気がする。


「あの・・・、さっき聞くの忘れてしまったんですが、俺の怪我ってひどいんですか?」


「そういえばまだ伝えてていませんでしたね・・・櫻井さんの傷は12針を縫う重傷です。あと十日間はこちらで入院してもらうことになるでしょう」


「十日も!?」


「はい、しかし安心してください。傷は深いですが応急処置と発見が早かったそうで大事には至りませんでしたし、安静にしていれば少し早く退院できるかもしれませんので」


「そう、ですか・・・」


「他に、聞くことはありませんか?何でも聞いてください」


・・・俺は少し迷った。けど・・・


「あの、・・・少女は・・・死んだんですか?」


春野先生は一瞬、困ったような顔をした。


「・・・・・・・櫻井さんの言う少女が誰かは知りません。しかし櫻井さんが運び込まれたあの日、少女が運び込まれたという記録はどの病院にもありませんでした。もちろん死亡報告もありません。私は一介の医師なので櫻井さんが運び込まれた経緯を詳しく知りませんので、その辺りは明日見える警察の方に尋ねてみてください」


「そう、ですか・・・」


春野先生が嘘をついている様子はない。最初は自分にショックを与えないために少女の死を伏せていると思ったのだがどうやら考え過ぎだった。この人は本当に何も知らないのだろう。今は警察が来るまで待つしかない。こちらも分からないことだらけなんだから何を聞かれるのか分からないのだが・・・


「すいません、櫻井さん、何でも聞けと言っておいて、私は櫻井さんの満足いく答えを返すことができませんでした」


「え?あ、いやいや、とんでもない!それだけでも十分です」


「そうですか?けどなんだか・・・あ、お詫びといってはなんですがスリーサイズを・・・


「え?・・・」


なんなんだこの人は・・・さっきから思っていたのだがこの人は俺をからかっているのではないか?

女医なのにナース服きているし、ナース服のせいで体のラインははっきりと浮かび上がってるし・・・


「上からはちじゅ・・・」


「ちょっと待った!!・・あの嬉しいんですけど、困るというか一応俺も健全な男の子なので、その・・なんと言いますか・・・」


口ごもるのは男の性、はっきり拒絶できないのやはり期待しているからなんだろう。

その時・・・


コンコン


「春野先生、山下さんの容体が急変しました!!すぐに来てもらえませんか!?」


「・・・わかりました、すぐいきます。・・・すいません櫻井さん、また来ますので」


そう言って春野先生は早足で病室から去って行った。

取り残された俺はというと春野先生が去っていったおかげで心の底から安堵するのであった。






--------------------------------------------------



次の日の朝、目が覚めると一番に飛び込んできたのは病室の天井、ではなく春野先生の顔だった。


「うぉ!?」


「あ、目が覚めましたか?朝食の用意はできていますが、先にご飯にしますか?それともトイレに行きますか?良ければ「私」もありますが?」


矢継ぎ早に繰り出される選択肢に、俺は一応「ご飯」と答えると、春野先生は横に置いてあったカバンから弁当箱を取り出して俺の前へと置いた。


「・・・これは?」


「朝ご飯です」


俺はてっきり病院食が出されると思っていたのだが、俺の前には明らかに手作りの弁当が置かれている。昨日は普通に病院食が出てきたのだが、なぜ今日に限って・・・


「昨日は櫻井さんがいつ起きるのか分からなかったので、お弁当を作ることが出来ず、しょうがなく病院食を食べてもらいましたが、今日からは私が作ってきたお弁当を食べてもらいますので食べたいものがあったら遠慮なく言ってください」


「あ、ありがとうございます・・・」


何かもういろいろとツッコミたかったがややこしくなりそうなのであえて触れないようにした。




食事をすましたところで病室のドアをノックする音が聞こえた。


「あ、多分警察の方ですね。通してもよろしいですか?」



「あ、はい・・」


あまりに急で少し身構えたが、春野先生が優しく手を取ってくれたので落ち着くことが出来た。

こういうところは、実に医師らしく、頼りがいがある。多分今までの行為は僕を気遣ってのことなのだろう。

春野先生は、僕の返事を聞くとドアの方へと歩いて行った。



「失礼するよ・・」


そう言って入ってきたのはヨレヨレのコートを着て髪を乱雑にかきあげた中年の男。表情からは明らかな疲れの色とやる気のなさが浮かんでいた。そしてそのあと、中年の男に続き今度は若い男が入ってきた。こちらは中年の男とは対照的に紺のスーツをビシッと決め、髪も整髪剤で整え、やる気がまじまじと感じられる。


「悪いね、急に押しかけちゃって。食事中だったかい?」


「いえ、もうすましました」


「それは良かった。こちらも忙しんでね、あの時の現場状況を簡単に説明してすぐに質問を始めるけど大丈夫かい?」


「はい」


ヨレヨレのコートを着た刑事は僕の返事を聞くと、後ろに控えている若い刑事に目で合図した。

若い刑事は手帳を広げる。


「それじゃまずは自己紹介しておこうか。僕の名前は黒沢くろさわ。で後ろにいるのが「中島なかじまです」で君が櫻井一樹さくらいかずきくんだね」


「はい」


「じゃあ簡単に、君がこの病院に運び込まれたまでの流れからだ。中島」


「はい、10時52分、公衆電話から救急へ、廃墟の屋上で血を流している人がいるとの通報を受け5分後救急車が現場に到着。隊員が屋上へ行くと通報通り血を流した青年を発見。出血の原因は背中からの切り傷、意識はないが応急処置が施されていたため命に別状はなし。全治1カ月の切り傷です」


「ありがとう。じゃあ次だ」


「はい、今までの調べによると、被害者は櫻井一樹さくらいかずきさん、年齢16歳の高校二年生。被害者が廃墟に入っていくところを数人の目撃者が証言しています。しかし、被害者以外の廃墟への出入りを目撃した者はなく犯人については不明。しかしあの廃墟は以前から不良のたまり場になっているらしく、今そちらの線について調査中です。次に被害者の傷跡から凶器は鋭利な刃物であることと推定。傷の深さから推測するに刃渡り70センチから100センチの長刀かと思われます。現場や現場付近に凶器が見つからなかったため、犯人はそのまま凶器を持ち帰った可能性が大きく、ただいまそちらも捜査中です」


中島という警部は一度もつっかえることなく言い切った。


「と、まぁそんな感じです、なにか言いたいこともあるでしょうがそれはこちらの質問の後でお願いします」


今度は黒沢という刑事が締めるように言った。


「じゃあ早速質問を始めるけど、櫻井君はどうしてあの廃墟に入ったのかな?」


黒沢さんは思ったより砕けた口調で質問してくれたので変に身構える必要はなかった。


「・・・女の子が廃墟に入っていったのを見たんです。それで心配になって女の子の後を追いかけていってあの廃墟に入りました」


「ふーん、女の子、ね。じゃあ君はその女の子を追いかけて屋上まで昇ったと?」


「はい」


「その女の子はどうなったか分かるかな?」


「いえ、女の子を捕まえようとしたら、急に背中に激痛が走って・・・」


「気付いたら病院にいた、と?」


「はい」


「じゃ君を斬った犯人の姿は見ていないんだね?」


「・・・・・はい、見ていません」


「・・・・・・そうか、じゃあ、その女の子の特徴を教えてもらえないかな?」


「?」


「もしかしたら君を斬った犯人はその少女を誘拐したかもしれない」


「な!?」


「あの現場で見つかったのは君だけだ。もし君の言うとおり少女があの場にいて君が斬られる現場を目撃していたのならその少女は高い確率で誘拐、拉致された可能性がある」


俺は、気付かなかった・・・確かにこの刑事の言うとおりだ。怪我や死亡でなければ誘拐されたと考えた方が妥当だろう。


「さっきも中島が言ってたが、僕らの聞き込みや、調べによると少女が廃墟に入っていったという目撃証言はなかった。まぁ、あの通りは人の交通量が少ないし、目撃者がいなくても不思議じゃないけど」


俺の頭には一人の少女が浮かんでいた。青いワンピース姿の少女。俺を斬りつけたであろう犯人。さっきは確証が無くて黙っていたのだが、女の子を誘拐したとなれば伝えなければならないだろう。


「・・くん・・・井くん・櫻井君!」


「え?、あ、はい・・」


「どうしたんだい?ぼっとしちゃって?」


「あ、・・・いや」


「じゃあ話を戻すけど女の子の特徴をおしえてくれるかな?」


「はい、赤い服を着た女の・・・・・・」


あれ、赤い服を着た女の子だったのか?思い返すとあまり印象に残っていない。いや、昨日までは確かに印象に残っていたのだが、一秒ごとに段々薄れていっていくのが判る。あれは女の子だったのか?

そもそもあれは・・・・・


「どうしたんだい?」


「あ、いえ、あの時は必死で追いかけてたんで今思い出すとあまり印象に残っていないというか・・・

その、多分力になれないと思います・・・」


「・・・そうか・・・じゃ一応赤い服を着た女の子ってことでいいかな。中島。「はい」僕たちはこれで失礼するよ。新しい情報も入ったんでね、早速調査を始めないと」


「・・・・はい、お願いします」


「うん、ご協力ありがとう。これ、僕の携帯番号、何か思い出したら気軽に連絡して」


そう言って渡されたメモの切れ端を俺は受け取った。


「じゃあ、お疲れ様」


ガラガラ


「お疲れ様です」


刑事と入れ替わりで入ってきた春野先生がねぎらいの言葉をかけてくれた。


「どこか体調がすぐれないとかはないですか」


「いえ、大丈夫です」


「そうですか、私はこれから会議があるので付き添うことができませんがもし何か変わったことがあったらすぐに私を呼んでください」


そう言って渡してきたのは携帯番号の書かれたメモだった。


「それでは」


「あ、はい・・・」


ガラガラガラ





「はぁ~」


溜め息が出る。


俺は結局、刑事さんに自分を斬ったと思われる少女のことを話すことが出来なかった。

まだまだ謎は残る・・・


どうしてこんなことになってしまったのだろう。

あれから三日が経った。今日は水曜日か・・・・




あ、・・・そいえば学校だよ




いや、いいか・・・

正直、小町優子こまちゆうこにフラれたせいで、学校へ行く気持ちなどなかったし、今は顔を合わせることもできそうにない。

あと九日、この入院は時間をおくには丁度いいだろう。

早く心の傷が癒えることを願って、俺は・・赤い影のことを・・思い出そうとした・・・











間隔が空いてしまいました。

そろそろ忙しくなってくるので、まずいかも

しれません。



早く次話を投稿できるように頑張ります!

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