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第一話 落下


顔をあげた先には女の子・・・のはずもなく、そこにあったのは何の変哲もない緑の看板。


気付けば先ほどまでの人垣は消えていた。どうやら知らずの内に人のいない方へと歩んでいたらしく、

今歩いている場所は駅前通りからやや離れた所で、ここには華やかさが無かった。


どうやら裏通りに入ってしまったらしい。

車の通りも無く、歩行者もほとんどいない。


前から思っていたことだがこの街は密度の差が激しすぎる。それあ人であったり、建物であったり・・・


この通りは人の通りこそ少ないが建物ばかりが密集していた。

しかしその建物どれもに人の気配は感じられない。


シャッターの閉まったバーやカフェ。テナントの入っていない雑居ビル。

昔はこの通りも栄えていたのかもしれないが、今は見る影もなかった。


ここは時代に取り残され名も忘れさられた悲しき通り。


もしこの通りにも意思があり、夢を見ることが出来るなら、昔のように華やかな時代に戻りたいと願うのだろうか・・・



「はは、なーんてな・・・」

小町優子こまちゆうこにフラれて気持ちがナーバスになっているのだろうか。

変な空想が頭をよぎる。


「・・・ん?」


空想を打ち消し我に返った時だった。

視界を横切る赤い影、すぐに消えてしまったがそれは・・・1


「・・女の子?」


確信はない・・・

一瞬だったがその影は女の子のように見えた気がしただけだ。

俺は少し気になって赤い影が消えた方へと視線を移す。そこにあったのは一つのビル。

いや、ビルではなくデパートのようだ。


そのデパートの前まで行くと、何も飾られていないガラスケースや木の板でおおわれた入口が目についた。

どうやら随分前に廃墟になったらしく、所々に亀裂が走り建物の色がくすんでいた。


少女は・・・


入口を塞いでいる木の板が一部壊されている。

そこには人一人分のスペースが出来ていて、もしかしたら少女はここに入っていたのかもしれない。


辺りを見回すと微かであるが人はいる。

他にも少女の姿を見ている人がいるとおもうのだが、誰一人、我関せずといった感じで素通りしていくばかりだった。


はぁ、正直あきれるな・・・


そう、この街の人間は、自分のことで精一杯で他人をかまう余裕がない。

自ら厄介事に足を踏み入れることよしとをしない。

これがこの街の現実・・・


いまさら言うことでもない。

他人がやらないのであれば自分がやるまで・・・



そう、なぜなら俺は偽善者なのだから・・・







デパートの中に入ると真っ暗で先が何も見えなかった。


少女は本当にこの中に入って行ったのだろうか。

とてもじゃないがこんな暗い場所、入って行こうとは思えない。

何か目的があって入って行ったのか?

何故一人で?

疑問はいくつも浮かんだが今はそんなことどうでもいい。

早く見つけなければ・・・



俺は手を前に出して、ゆっくりと歩き出す。

足元にはガラス片が散らばっているらしく、歩くたびにジャリジャリと音がする。


少女は・・・


少し歩いたところで微かな光源を見つけた。

俺はすぐさま光源向かって進路を変える。


何となくだが今なら光に群がる虫の気持ちがわかるような気がするな・・

暗闇の中での一筋の光はものを惹きつける力がある。

これは理屈じゃなくて本能なのだ。


多分虫は本能で光に惹きつけられている。

それと同じように今の俺も本能で光に惹きつけられている。|(虫が本能で光に群がっているのか分からないが・・)|



光源の正体は黄緑の蛍光色で描かれた規則性のないデタラメな模様だった。

これはどこかのチームマークだろうか・・。


この暗闇の中でデタラメに見える模様は淡く発光して浮かび上がっているように見える。



マークを見ていると何故か急に不安になった。


早く少女を捕まえければ(・・・・・・・)



「・・・・いた!」

視界の隅に映る影、それは紛れもなく赤い少女!


俺は少女向かって走り出す!

しかし、辺りは暗いためにスピードを出すことが出来ない。

少女との距離が縮まらない。


「・・・待って!」

少女は止まらない・・・

暗闇の中での追いかけっこ

少女は何度も角を折れその度に俺は少女の姿を見失う・・・


気付けば所々から淡い光が漏れていた。

どうやら他にも先ほど見た不可解なマークがあるらしい。


意味は分からないが今の俺には少しの明かりもありがたかった。

暗闇にも慣れたせいか視界が徐々にはっきりしてくる。


俺はスピードを上げた。

少女との距離はまだだいぶ離れている。

さっきから制止の声をかけているものの少女が止まる気配はない。


俺は必死に追いかける。

しかし出来事は突然。

何度目かの曲がり角。俺は少女が消えた曲がり角を折れた瞬間、突然の強い光に目が眩んだ。

蛍光色などではない強い光。

なまじ目が暗闇に慣れてしまったせいで、急な光源に対応しきれない。

次に視界を取り戻した先、そこにはエレベーターに乗る少女の姿が映った。


「なっ・・!」


驚きは一瞬


強い光源の正体はエレベーターの照明灯。

何故廃墟と化した建物にエレベーターが動いているのか疑問に思ったがそんな思いもすぐに消えた。


警鐘が鳴る。

行かせてはいけない。

俺はすぐさま駆けだした。エレベーターまで10メートル。


くそ、無情にもドアが閉まりだす。



残り5メートル・・・・



間に合うか!!



残り3メートル・・・・・・







「ガタンッ」



くそ!、俺は思い切り扉を叩いた・・・


間に、合わなかった・・・・


上を見上げると階を表示するランプが動き出した。


2F,3F,4F,5F,R


ランプは屋上で止まった。

頭によぎるのは最悪の結末。


このままだと・・・・



先ほどからボタンを押しているがエレベーターが一向に戻ってこない。

他のエレベーターはどれも動いていないらしく、少女の乗ったエレベーターだけが屋上で止まっている。



なんで、あの時・・私は・・



俺は辺りを見回す。

目にとまったのは非常灯。


「階段!!」


俺はすぐさま駆けだした。

階段を上る。


「はぁ、はぁ・・・」


屋上についた時には息も途切れ途切れだった。

体も熱い・・・


ここも外へと続く入口の部分には木の板が固定されていた。

しかし一階同様、一部分が壊されていて一人分のスペースが出来ている。


外に出ると一瞬だけ目が眩んだ。

目に飛び込むは青い空・・・

照りつける日差しがとても眩しい


俺はすぐに少女を探す。

屋上にはいくつか子供向けの用具が目についた。


「・・・いた」


視線の先に少女の姿はあった。

しかし俺は少女の立ち位置に絶望する・・・


少女はフェンスを越え、死の淵まであと数歩のところにこちらへ背を向け立っていた。


「駄目!!」


俺は叫ぶ・・・

しかし少女はこちらを振り向かない。


少女まで20メートルは離れているだろうか。

少女の着ている赤いワンピースが風でなびている。


少女まであと15メートル・・・


先ほどからから声をかけているのだが少女は一向に振り向かない


少女まであと10メートル



なぜこんなことになってしまったのだろうか・・

今思えば後悔の連続。私はあの子に・・・



残り5メートル


今にでも駆け出したいが少女のフェンスを掴む手があまりに儚く、少し驚かせただけで消えてしまいそうだった。


手を前に出す・・・

あと少し、あと、少しで・・・





「駄目!!!」


「っ!!」


背後から聞こえた突然の怒声。

俺は驚き、振り返る・・・

そこには声の主と思われる一人の少女。青いワンピースに身を包み、空から降ってきたのではないかと

思わせる登場ぶりに、俺は思わず・・・



いやっ!違う!

今は・・・


前を向き直すと少女はフェンスから手を離し、既に体は傾いている。



「っな、待って! 綾子!!」



俺は駆け出しフェンスを乗り越え、少女の手を掴もうとした瞬間、

手を引き戻される感覚と、背中に走る衝撃が同時に襲い、俺は少女の手を掴むことなくすぐに意識を失・・った







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