宝の地図
痩せている男と髭面の男が、狭い個人経営のレストランで向かい合って話をしていた。客は二人以外は誰もいない。
「宝の地図を見つけたってのは本当なのか?」
「ああ。古い蔵から出てきたんだ」
痩せている男はそういうと古びた紙を取り出してテーブルに出した。
髭面の男がその紙を手に取り確認してみると、機密保持のためなのか非常に読みにくい、子どもの書いたような字ではあったがたしかに宝の地図と書かれている。髭面は顔を輝かせると、それならすぐに掘りに行こうと提案する。
しかし痩せた男は首を左右に振ると金が無いんだと答えた。
「料理をお持ちいたしました。なにやら面白そうなお話をされていますね」
ちょうどそこに店の主人が料理を運んできてそう言った。二人の男はしまったと顔を見合わせたが、主人は二人のことを意に介さず紙を取るとそれを見る。
そしてニヤリと笑みを浮かべると、私も一枚噛ませてもらってもいいでしょうかと言い出した。
「どういうことだ?」
髭面が聞き返すと、私が融資しますと主人が答えた。そして、掘削業者にもツテがある、と続けた。
そうしてトントン拍子で宝探しの準備が進んでいった。
この「宝の地図」が、はるか昔の子どもの遊びであることに気が付く者はだれもいなかった。
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