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元魔王様の南国スローライフ~部下に裏切られたので、モフモフ達と楽しくスローライフするのじゃ~  作者: 十一屋 翠
第二章 魔王、魔物達を保護するのじゃの章

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第39話 魔王、宴会をするのじゃ!

「それでは、新たなる仲間に乾杯なのじゃー!」


「「「「かんぱーい!!」」」」


 毛玉スライム達の毛を解いたわらわ達は島の住民を集めて宴会を行っておった。

 と言うのもグランドベア達が島への移住を希望してきたからじゃ。


「あのまま故郷に戻ってもまた我が子が人族に狙われかねん。ならばここに住まわせてほしい」


 と頼まれたからじゃ。

 まぁわらわとしても留守中の護衛役がいるのはありがたいのでその申し出を受ける事にした。


 こうなると島の住人も結構な数増えて来たので、元から島で暮らしておった者達と顔合せの意味も兼ねて宴会する事にしたのじゃ。


「うむ、久しぶりの酒は美味いな! 守り人の郷では酒など滅多に配給されなかったから久しぶりだ!」


「はぁー、こんなに酒とご馳走があるだぁー。スゲェなぁ」


「ありがてぇ、ありがてぇ」


「こんなに美味ぃモンは初めてだぁ」


 ガルと守り人達は久々の御馳走に大喜びじゃ。

 特に喜んでいたのは……


「グビグビグビッ、プハァー! 人族の作った酒と言う水は美味いな!」


 グランドベアの父親は特に酒が気に入ったらしく、美味そうに酒を飲む。

 ちなみにグランドベアの巨体で飲み食いしておるので樽で飲んでも一杯にも満たん量なのじゃがな……


「いやー、酒を格安で買う事が出来て良かったのじゃ」


「ええ、丁度ジョロウキ商会の会頭が入れ替わったお陰ですね」


 ニコニコと酒のお代わりを持ってきたメイアが応えるが、その会頭ってメイアの部下なんじゃよなぁ。

 ロッキルをアレした後、メイアは部下に命じて変身魔法でロッキルに変身させ、ジョロウキ商会を乗っ取ったのじゃ。

 そして古くからロッキルを知る者にバレてしまう前に、ロッキルの隠し子という設定のメイアの部下を次期会頭に指名して店を乗っ取ったという次第なのじゃ。


「商会には裏の業務を知らずに働く従業員も少なくありませんでしたからね。悪辣な事をしていた者達だけ居なくなってもらい、真っ当な商会になって貰う事にしました。まぁ私共としても古くから土地に馴染んだ商店が手に入るので、情報収集が更に捗るというものですが」


 という事情で今後何かしら入用になった時はジョロウキ商会に無茶が言えるようになったのじゃ。


「うーん、魔王を辞めて半年もせぬうちに商会を一つ乗っ取ってしもうた」


「魔王様に手を出そうとしたのです、当然の報いでしょう。店を物理的に潰されなかっただけマシというものです」


 あっ、さてはこやつ、わらわが襲われた時に地味にキレておったな?


「しかしアレじゃな。集まった人数の割には酒を飲む者が少なくて盛り上がりには欠けるの」


 毛玉スライムはいうに及ばず、ミニマムテイルや他の島の住民達も酒は飲まぬからのう。

 単純な量ではグランドベアが数十人分飲んでおるが……


「リンド様~」


 と、そこにシルクモス達が遅れてやって来る。


「おお、お主等も来たか。楽しんでいくと良い」


「ありがとうだモス。でもその前に頼まれた品が出来たから持ってきたモス」


 と、シルクモスは薄い箱をわらわに差し出してくる。


「おお、出来たか! メイア、ちょっと来るのじゃ!」


「はいはい、お料理が切れてしまいましたか?」


 一人忙しく給仕の仕事をしていたメイアがパタパタと小走りにこちらへやって来る。


「いやいや、そうではない」


 わらわはメイアに箱を差し出す。


「お主にプレゼントじゃ」


「私にですか!?」


 まさか贈り物を貰えるとは思ってもいなかったメイアが目を白黒させる。


「ささ、開けてみるが良い」


「は、はい……」


 わらわに促され、リボンを解いて箱を開くメイア。


「これは……ドレスですか!?」


 そう、箱から出てきたのは一着のドレスじゃった。

 以前シルクモス達の織った生地が島中に溢れかえった際、わらわはシルクモスに頼んでメイアの為のドレスを作って欲しいと依頼したのじゃ。


「お主はいつもメイド服じゃからな。こういう機会でもないとドレスなぞ着てくれぬじゃろ? 受け取っておくれ」


 魔王をやっておった頃は給金という形で働きに報いておったが、この島に来てからはそういう物をやれなんだからの。


「しかし私のようなものがドレスなど……」


「何を言っておる。お主程の器量の者なぞそうそうおらぬ。わらわが似合うと思って用意させたのじゃ。ぜひ着ておくれ」


 なおも戸惑っていたメイアをシルクモス達が城に引っ張って行き、しばし待つ。


「お着替え終わったモス!」


 そしてシルクモス達に連れられ、美しい光彩を放つドレスに着替えたメイアが戻って来た。


「うむ、似合うのじゃ!」


「っ!? あ、ありがとうございます……」


 初めてのドレスを褒められたメイアは、珍しく顔を真っ赤にして恥ずかしがっておった。

 はっはっはっ、愛い奴愛い奴。


「あの、私からもリンド様に贈り物があるのですが……」


「何?」


 メイアは後ろ手に隠していた物をわらわの前に差し出す。


「どうぞお受け取りくださいませ」


「う、うむ」


 立場が逆になったわらわが受け取った箱を開けると、そこから出てきたのは……


「これは、ドレスか!?」


 そう、メイアの贈り物もまたわらわが送った品と同じドレスだったのじゃ。


「いやー、お主はともかくわらわはドレスって柄でもないじゃろ。もうずっと魔王の正装しか着ておらなんだしのう」


「だからこそです! 魔王様はもう魔王ではないのですから、ならばもう周囲に睨みを効かせる為に魔王の正装に拘る必要もありません!」


 メイアが猛烈な勢いでわらわに反論すると、シルクモス達がわらわの両腕を掴む。


「お、おい、お主等!?」


「観念してリンド様もドレスを着るモス」


「メイア様に逆らうと美味しい果物が食べられなくなるモス」


「いやお主等それが本音じゃろ!? おいぃぃぃぃぃっ!!」


 あわれ、わらわはドレスに着替えさせられてしまったのじゃった……


「まぁまぁ、お似合いですわリンド様!」


 自分がドレスに着替えた時よりも嬉しそうにメイアがはしゃぐ。

 ああもう良いわ。お主が楽しければの……


「わー、魔王様きれー。メイアさんとお揃いー」


「なぬ?」


「あら、言われてみれば」


 毛玉スライム達からの称賛の言葉を聞いたわらわ達は、確かに言われた通りドレスの衣装がおそろいである事に気付く。


「お二人から同じ物の依頼があったモスから、サービスで対になるデザインにしたモス」


「こ奴等め、余計な世話を焼きおって」


 まぁ、悪い気はせんが。

 小さく溜息を吐くと、わらわはメイアに手を差し出す。


「お嬢さん、わらわと一曲踊ってはくれぬかの?」


「ええ!?」


「公式のパーティではないのじゃ。お主と踊っても問題なかろう?」


「で、ですが楽団もおりませんし……」


 そう言ってメイアが渋っていると、突然楽器の音が鳴り出した。


「え?」


 メイアが振り向けば守り人達が楽器を演奏しておった。


「これは……」


「さぁ皆よ! ここからはダンスパーティじゃ! 好きなように踊れ!」


「「「「おおー!」」」」


 わらわの号令に皆は立ち上がると、思い思いの相手と踊り始める。

 見ればミニマムテイル達はいつものチョッキをタキシードに替え、毛玉スライム達も首からネクタイを下げておった。

 うむ、フォーマルスタイルという奴じゃの。


「リンド様、これは?」


 一人メイアだけが状況を理解できずに困惑しておった。


「はっはっはっ、驚いたじゃろ。実は皆に頼んでダンスパーティの用意をしておったのじゃ!」


 そう、せっかくメイアのドレスを作るのじゃから、それを活かす場が欲しいと考えておったのじゃよ。

 そしてドレスが出来る日に合わせて宴会の振りをしたパーティの開催を決めたのじゃ。


「さぁさぁ、何時までも主役が皆を待たせてはいかん。行くぞ」


「あっ」


 わらわは強引にメイアの手を取ると、ダンスパーティの中央に立つ。


「……もう、強引なんですから」


 ようやく状況を受け入れたメイアが肩を竦めながら言う。


「何せ魔王じゃからの」


「元、でございましょう?」


「おっとそうじゃった」


 思わぬ反撃を受けたわらわは苦笑すると、ダンスのステップを踊り始めた。

 メイアもまたそれに付いてくる。


「それにしてもわらわまでドレスを着る事になるとはのう」


「ふふ、お互い様です」


「そうじゃな」


 柔らかな笑みを浮かべるメイアにわらわもまた笑みで応える。


「もう魔王ではないのですから、これからは沢山可愛いドレスを着て貰いますからね!」


「それは関係なくないかの!?」


 待て待て、何を言い出すのじゃ!?


「関係大ありです! ようやくドレスを着て頂けたのですから、もう遠慮しませんよ!」


「しまった! 早まったのじゃ!!」


 興奮したメイアの姿に、やはり断れば良かったと後悔の念が頭をもたげる。

 しかし同時に嬉しそうなその笑顔を見ては嫌とは言いづらいのも確かじゃった。


「やれやれなのじゃ」


 溜息を吐きつつも、わらわは皆が踊り笑う姿を見つめる。

 ああ、これじゃ。これこそ魔王になる前のわらわが仲間達と楽しく過ごしておった頃の光景じゃ。


「ははっ、楽しいのう楽しいのう」


 懐かしき頃を思い出し、思わずしんみりとしてしまう。


「ええ、だからもっと楽しくなりましょう。これからもずっと」


「ああ、そうじゃの」


 わらわの心を見透かしたようなメイアの微笑みに、わらわもまた再び笑みで返すのじゃった。

これにて第二章終了です。

次回第三章をお楽しみに。

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[気になる点] 「それでは、新たなる仲間に完敗なのじゃー!」
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