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元魔王様の南国スローライフ~部下に裏切られたので、モフモフ達と楽しくスローライフするのじゃ~  作者: 十一屋 翠
第二章 魔王、魔物達を保護するのじゃの章

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第34話 魔王、疑われるのじゃ

「冒険者達の治療を頼む」


「はっ」


 メイアが冒険者達の治療に向かうと、勇者は残ったわらわに視線を向けてくる。

 そのまなざしは疑念と困惑が浮かんでおった。


「君達も冒険者なのか? だが集まった高位冒険者の中には居なかった筈……」


 一瞬だけ勇者達にわらわの正体がバレたのではないかと警戒したが、勇者達は全く気付く様子もなかった。うーんフシアナアイ。


「通りすがりの者じゃ。そこな冒険者達が危なかったので勝手に助太刀したまでのこと」


 という事にしておくかの。

今は別の姿に化けておる事じゃし、余計な情報を与えぬ方が良かろうて。


「そ、そうか。冒険者以外にもこんなに凄い魔法を使う人が居たんだね」


「勇者、今は無駄話をしている場合じゃない。奴の進行を止めるのが先だ」


「っ!? そうだった。君、あの壁を解除してくれないか?」


 仲間の近衛騎士筆頭に今が戦闘中である事を指摘された勇者はすぐに己のやるべきことを思い出して壁の解除を求めてくる。

 しかしわらわとしては時間を稼ぎたいので却下じゃ。


「それはダメじゃ。今壁を解除してもお主等だけでは攻撃力が足りん。戦力が再集結するまで待つべきじゃろう」


「悠長に待っている暇はないんだ! あの魔物が町を襲ったら取り返しがつかなくなるんだぞ!」


「状況をよく見よ。その魔物は町から離れておるぞ」



「え?」


 わらわに言われてようやくグランドベアが町から離れていくことに気付く勇者。


「本当だ……君達が何かしたのかい?」


「いや、わらわ達ではない」


 やったのはガル達じゃからの。


「お主達もかなり疲れておるようじゃし、戦力が集結するまで体力と魔力の回復を行うべきじゃろう。疲れた体では碌な結果を出せぬぞ?」


「しかし……いや、やはり駄目だ。僕達だけでも魔物の足止めを行う。その間に騎士団と冒険者達は合流して戦力を纏めてほしい」


 むぅー、勇者はテコでも体を休める気はないみたいじゃった。

 

「壁を解除してくれ!」


「すまぬがこの壁は防御力を優先した魔法の為、隆起させた壁を解除する事は出来ぬのじゃ。攻撃するなら迂回する必要がある」


「そう……なのか? まぁあの巨体の攻撃を防ぐ程の魔法ならそのくらいのデメリットはあるか。分かった。壁を迂回していこう」


 本当は全然そんな事はないんじゃがの。どうしても行くと言うのなら時間稼ぎをさせてもらうぞ。


「グルォォォォォォォン!!」


 その時じゃった。グランドベアが立ち上がって雄たけびをあげたのじゃ。

 説得が上手くいったのか!?


「なんだ!? 何かするつもりなのか!?」


 ともかく今は勇者達の足止めじゃ。

 しかし驚いたのは勇者達だけではなかった。


「う、うわぁぁぁ。ファイアーボール!!」


 なんと動揺した魔法使いの一人がグランドベアに向かって魔法を放ってしまったのじゃ。


「これはいかん! グレートウォール!!」


 わらわは再びグランドベアとの間に魔法の壁を立てて攻撃を防いだ。


「ふぅ、危なかったのじゃ」


 万が一あの魔法がグランドベアの子供に当たったら大変じゃからの。


「君、何故今の攻撃を邪魔をしたんだ……?」


 しかしわらわの行動に勇者が疑念を抱く。


「先走って単独で攻撃しても何の意味もない。寧ろ魔物の注意が町に向くだけじゃ」


 そう、わらわ達の居る場所はグランドベアから見たら町のある方角。

 ごまかすにはちょうど良い。


「……本当にそうなのか?」


 じゃが勇者はそれでは納得ができなかったらしい。


「寧ろ君は魔物の方を守っていないか? 僕達を足止めして何かをしようとしているんじゃないのか?」


 ええい、何でこういう時ばっかり察しが良いのじゃ!!


「本当は、君があの魔物を操っていたんじゃないのか!?」


「……は?」


 何でそうなるんじゃあーっ!!

 察しが良いのを通り越してあさっての方向に飛んで行っとるぞ!!


「何でそんな考えになるんじゃ!? 第一そんな事をしてもわらわには何のメリットもなかろう!?」


「分からない。でもよく考えるとあのタイミングで都合よく君達が現れた事もおかしいと言える。一体君の目的は何なんだ?」


 特に理由がある訳でもなく、何となく怪しいからで疑ったのかー!

 疑う前にちゃんと推理くらいせんかぁー!!

 そんなんだから良いように国に利用されるんじゃぞお主!!


「あれほどの巨体の魔物じゃぞ。町の近くで戦うなど危険すぎる。奇妙な行動を見せたのなら尚更じゃ」


 しかしこの状況は都合が良いとも言えた。

 この中で最大戦力である勇者一行を足止め出来ておるのじゃ。

 このままわらわに疑いの目を向けさせておけば勇者達もグランドベアに攻撃どころではあるまい?

 その隙にグランドベアの説得を完了すれば戦うことなく事件を終息させることが出来る。


ズズゥン!!


しかしそこで新たな問題が発生する。


「何だ? 向うから何か来るぞ?」


 そう、グランドベアの進路とは別の方角から巨大な影が姿を現したのだ。

 その体は巨大な熊に酷似した姿じゃった。


「グォォォォォォォッ!!」


「あれは……二体目のグランドベアじゃと!?」


 まさかの二体目のグランドベアの登場に、わらわ達は言葉を失うのじゃった。

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