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第133話 魔王、太陽と闇の融和を目撃するのじゃ

「アレはダンデライポンか!」


 漆黒に塗りつぶされた空を、光り輝くダンデライポンの群れが舞っておった。

 ダンデライポン達は真っ黒な世界の中を風に揺られるようにゆらゆらと揺れながら地上に降りてゆく。

 その光景はなにも無い無の空間のように見えても、確かにそこは現実の世界なのだと実感させる。


 ユラユラと揺れていたダンデライポンの動きが一定の場所までたどり着くと止まる。恐らく地上に降りたのじゃろう。

 地上へと降りたダンデライポン達はどこかを目指して歩き出す。

そしてある程度歩くと、ダンデライポン達はそこで止まり円陣を組む。

 他のダンデライポン達もまた、止まる位置こそ違えど止まった場所で円陣を組んでおった。


「あれは何をしておるのじゃ?」


 魔力によって強化した視覚でダンデライポン達の様子を見ると、彼等の中心に何やらあるのが見える。

 それは地面に埋まった人の頭部、いやカツラ達じゃった。


「ダンデライポン達はカツラの元に集まっておるのか!」


 しかし一体何のために?

 不思議な事はそれだけではなかった。

 カツラを囲んだダンデライポン達の光がさらに増し、周囲を照らし始めたのじゃ。


「おお! 周囲の景色が!」


 ダンデライポンの光を浴びた事で、暗闇に消えていた周囲の景色が蘇る。

 まるで漆黒の底なし沼に飲み込まれたかのようであった世界が、しかしそこには確かにあったと気付かせてくれる。


 そして新たな変化が起きる。


「カツラの様子が……これは!」


 なんとカツラ達の頭頂部から、芽が姿を現したのじゃ。

 そして芽はニョキニョキと伸び、枝が伸び、一本の若木へと成長を遂げた。


 更に空より舞い降りるダンデライポンの数は更に増えてゆき、地上だけでなく空中にも色が蘇ってゆく。

気が付けば世界獣によって漆黒となっていた世界は、ダンデライポン達の光によって元の姿を取り戻したのじゃった。


「おお、何が起きておるのかさっぱり分からんが、周囲の風景が元に戻ったぞ」


「もう私は何が何やら」


 同じくこの光景を見ていたルオーダは心底戸惑った困惑の声を上げる。

 いやまぁ、正直それについてはわらわも同じなんじゃけどね。


「ともあれあの暗闇が無くなったのは好都合じゃ。ダンデライポン達に直接事情を聞けるぞ」


 何しろあの闇は本当に光を吸収するだけか分からなくて迂闊に接触する訳にはいかなんだからのう。


「おーいダンデライポン達!」


 わらわ達が近づくと、カツラ達の周りに集まっていたダンデライポン達が一斉にこちらを見る。


「なんだポン?」


「お主等一体何をしておるのじゃ?」


「僕達はこの子達に太陽の光を届けているんだポン」

 

「太陽の光じゃと?」


 ではダンデライポン達が放っておる光は自前の光ではないという事か?

「ふむ、太陽の光を届けるとはどういう意味じゃ? 元々この辺りを真っ暗にしていたのは世界獣達じゃぞ?」


「えっとね、この子達が育つには太陽の光が必要なんだポン。だから僕達が空を飛んで蓄えた太陽の光をこの子達にあげるんだポン」


何とダンデライポン達が空を飛ぶのは長距離を移動する為だけでなく、カツラ達に与える光を蓄える為だと判明した。


「何故その様な事を? この魔物に光を与えたところで貴方がたに利益は無いでしょう?」


 確かに、カツラ達が光を得る事が出来ないのは親である世界獣達の自業自得じゃ。

 わざわざダンデライポン達が危険を冒して光を集め、与える必要はない筈。


「そんな事はないポン。この子達と一緒にいると、僕達も安全なんだポン」


「安全……っ!」


 安全と言う言葉にわらわはある出来事に思い至る。


「そうじゃ、カツラ達は世界獣の背中で魔物に襲われておらなんだ!」


 成程、つまりこやつ等は魔物に襲われぬカツラ達の恩恵にあずかる為に光を届ける役割を引き受けたのか。


「ですがここまでの道中は普通に襲われていましたよ」


「ルオーダよ、それは前提が違うのじゃ」


「前提ですか?」


「そうじゃ、わらわ達が相まみえた世界獣は動いておった。じゃがカツラ達が集まったここには、世界獣達が動くことなく眠っておった。つまり本来はあの世界獣もこの地で眠ったままだった筈なのではないか? であればカツラ達が移動する場所も、親である世界獣達の傍だった筈じゃ」


「あっ」


 そう、世界獣の背中の魔物達はカツラ達を襲わなかった。

 アレはカツラ達が世界獣の子供である事を魔物が分かっていたからじゃ。

 自分達が暮らす世界そのものであり、何より巨大すぎる魔物。

そりゃあ魔物達もカツラ達に手を出す事なぞできまい。

であれば、親が傍にいる状況でカツラ達に危害を加える事の出来る魔物もおるまい。


「あの活動していた世界獣達こそが、イレギュラーだったのじゃな」


となれば、この事件も話が違ってくるかもしれぬ。

本来ならこの件もそこまで大きな騒ぎになったりせず、ただカツラ達が親の背中から移動して、ダンデライポン達から光を与えられるだけで温厚に終わったかもしれんのじゃ。


「だとしたら、何故世界獣は動き出したのか。どうやらクリエの交信は思った以上に重要な役割をもっておるのかもしれんな」


「ポン、世界獣の傍の土は栄養満点で美味しいポン」


「「「「ポン!!」」」」


「キュイ!」


 ……なんか、隣の空気が緩いのう。

 さっきまでかなり緊迫した雰囲気だった筈なんじゃが。

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