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第129話 魔王、最悪の光景に出会うのじゃ

カツラ達に導かれてやってきた山脈のふもと、そこから見えたのは一カ所が大きく欠けた山脈の姿じゃった。


「山があれ程派手に崩れておるのに、真下の麓には土が崩れた様子はないの」


「多少は土砂がありますが、山脈のえぐれを見るにあまりに量が少ないですね。あのあたりに巨大な穴でもあれば話は別ですが、木々が生い茂っている以上それもないかと」


 わらわ達は周辺の景色を調べ、他に異常がないかを調べる。

 じゃが残念なことにわらわ達の予想を否定する材料はなく、寧ろ持論を補強する結果になってしまった。


「という事はやはりあの空白部分は世界獣が眠っていた場所じゃな」


「まことに遺憾ですけれど」


 正直広大な山脈がこうも大きく欠けてしまうと、世界獣の巨大さを否が応でも実感するのう。

世界獣単体で見た際には、あまりに大きすぎて感覚が麻痺していたようじゃ。


「「「ピッピッ」」」


 そんなわらわ達の困惑も知らず、カツラ達はなおも世界獣が眠っていた場所へと向かっておった。


「これ、現場にたどり着いた途端周囲の山脈が崩れて大惨事にならんかのう?」


「そうなったらお互い生き埋めになっておしまいですね」


 まぁわらわには転移魔法がある故、こやつだけ生き埋めにならんかの。

 といっても相手も同じ事考えとるじゃろうが。

 わらわは浮き上がらせた地面を空白地帯へと移動させる。


「「「ピッピッピッ、ピピッ!」」」


 すると空白地帯の丁度中央辺りで、カツラ達が動きを止めた。


「む、ここで良いのか?」


 わらわが移動に使っていた地面を下ろすと、カツラ達は思い思いの方向に散らばる。


「これお主達、離れると危ないぞ」


 といっても、見渡す限り何もない荒れ地故、危険も減ったくれも無いか。


「というか本当に何もないの」


 周囲に見えるのは土と石だけで、手掛かりになるようなものも、動くものの気配もない。

 では一体なぜカツラ達はこのような場所に来たのか?


「ピピピッ!」


 するとカツラ達のうち一匹奇妙な行動を始めた。


「何をしとるんじゃ?」


「穴を掘っている……のでしょうか?」


 カツラは真下の土を掘り起こし、地面に沈んでゆく。


「ピッ!」


 そして納得がいったのか満足気な声をあげると、今度は掘り起こした土を自分の体にかけ始めた。


「いやホントなにやっとるんじゃ!?」


 そしてカツラは土に埋もれるとそのまま動かなくなった。


「何かの遊びか?」


 うーむ、カツラの考えが全くわからん。


「あの、そもそもこの生き物は一体何なんですか?」


 そういえばあとで説明すると言ったままじゃったな。


「あ奴等は世界獣の背中に生えていた木から落ちた……多分木の実? じゃよ」


「多分!?」


 いやまぁガッツリ動いておるがな。


「木の実? という事は植物系の魔物という事ですか? ではこの生き物はトレントのように土に埋まる事で根から栄養を摂取する為に埋まったと? けれどそれならわざわざここまで来る理由はない筈……」


確かに、植物系の魔物ならわざわざ遠く離れた場所に来る必要などない。

それこそ世界獣から落ちた所で根を張ればよかったのじゃ。

いや、寧ろ外敵に襲われないという意味では世界獣の背で根を張っていた方が良かったのではないか。


「なのになぜここまで来た?」


 これが意味のない行動という事はないじゃろう

 そしてあるとすればそれは間違いなく世界獣に関わる事じゃろう。

 一番厄介な予想としては……


「まさかあの生き物は世界獣の子供だというつもりですか?」


 やはりルオーダも同じ結論に至ったか。


「アレ等が世界獣の子供なら、同じ大きさになる親の背に根を張る事は出来んものなぁ」


 となればここに来たのは、巣作りのようなものか?

 サケの遡上のように、特定の場所で子育てをする習性のある生き物、もしくは世界獣の匂いが近隣の魔物を寄せ付けぬ縄張りのマーキングにでもなっておるのか?

 あれほど強大な生き物じゃ。好んで敵対しようと思う者はおるまいて。

「だとすれば、危険すぎます!」


 と、ルオーダが焦りを滲ませた声を上げる。


「この生き物があの化け物になるというのなら、それにどれほどの年月がかかるのかは分かりませんが、生かしておくのは危険すぎます! まだ未熟な内に殺しておくべきです!」


 危機感に駆られたルオーダがカツラ達に手をかざす。


「待て、短慮は……」


 その時じゃった。


 ズンッッッッ!!


「「っ!?」」


 突然、体が浮くかのような激しい振動が起きたのじゃ。


「地震か!?」


 振動はすぐに収まったかに思えたが、今度は断続的な弱い振動が始まる。


「これは……偶然か?」


 いや、そうではない。この揺れはカツラ達に危機が迫った事に関係があるとわらわの直感が告げていた。

 そして振動は段階的に大きくなっていき、遂には周辺の山々から土砂が降り始める。


「これはいかん!」


 わらわはすぐさまカツラ達を連れて逃げようとするが、当のカツラ達はかなり離れた場所へと転がって移動しておった。

 同時に、土砂がわらわ達とカツラ達の間を塞ぐように降り注ぐ。


「もはやあ奴等の面倒を見ている場合ではないの!」


 わらわは即座に荒野から脱出して空中に避難すると、空の上から地上で起きている光景にくぎ付けになる。

 すると周囲の山々が連鎖的に崩れ始めている光景が目に映る。

 土砂崩れ、いや違う。あれはそんな自然現象ではない。


「これはまさか……」


 いくら何でもそんな、と思わずにはいられぬ荒唐無稽な想像。

 しかし山肌から覗いたそれを見ては、自分の考えを否定することも出来なくなる。


「周りの山脈も全て世界獣じゃとっっっ!?」


 山脈の全ての山は崩れ去り、その中から世界獣の群れが姿を現したのじゃった。

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