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第120話 魔王、未知のモフモフ?と遭遇するのじゃ

「これは一体何なんじゃ?」


 わらわ達の足元では、無数の脚の生えた綿毛がチョロチョロと歩き回っておった。

 しかも先ほどまで木に生っていたとは思えぬほどにアグレッシブな動きをしており、一抱えもある石の上によじ登りジャンプして飛び降りる個体や、左右にジグザグに跳びながは走り回る個体が居たりと、とても植物とは思えぬ振る舞いであった。


「わぁ~、チョコチョコ動き回って可愛い~」


 そうかぁ? 確かに普通の胴部なら可愛いかもしれんが、顔が無い生き物が動き回っておるのは怖くないかの?


「これ、本当に植物なのか? 寧ろ植物に寄生していた何らかの生物と言われた方がまだ信じられるぞ」


「ひえっ!?」


 寄生と聞いて慌てて手を引っ込めるテイル。


「いや、わらわはこの種類の木を見たことはない。寄生生物の可能性も否定できんが、これが本当にこの木から実った可能性も否定できん。というかこれだけ動けるなら寄生する生態になる必要性を感じぬ」


 まぁ確かにの。しかし魔物は時に理不尽とも思える奇妙な生態をしている事もある。

 わら私の常識の埒外の生態の魔物が居てもおかしくないじゃろう。


「あら、この子本体は体の中心にありますね」


 と、振り向けばなんとメイアが綿毛の中に手を突っ込んでおるではないか。


「成る程、こういう形状をしているのですね。ああ、綿毛に隠れていますが顔もちゃんとありますよ」


 そういって綿をかき分けて中に見える体を見せてくるメイア。

 こ奴、日頃食材を捌き慣れておるだけあってこういう時躊躇がないのう。



 

「わー、こんな風になってたんですね。中に小さい本体があるんだ」


 綿の中には小さな植物があり、そこから長い毛が伸びておる。

 手足は胴体と比較するとかなり細長く、この毛を全て剃ったら球体の胴体から細長い足が生えた不思議生物が出来上がることじゃろう。

 いや、今の時点で十分過ぎるくらい不思議生物じゃが。


「でも顔が隠れていると前が見づらくて不便かも。顔の所だけ毛を剃ってあげたらよく見えるんじゃないですか?」


「ではやってみましょうか」


 テイルの提案を受けるや、メイアは懐から出した散髪用のハサミで綿毛をカットしてゆく。

 何故そんなモノを持っているのか聞いてはいけない。メイドはいついかなる時もあらゆる事態に対応できるようにしておるのじゃ。……本人の自己申告じゃからちょっと信用できんが。


「できました」


 その結果、綿毛の顔面部分の視界を遮らぬように毛をカットされた綿毛が出来た。

 その外見はぱっと見ヘタをカットされた果物のようじゃった。


「ピッ!」


 すると毛をカットされた綿毛が鳴き声? を上げてピョンピョンと跳ねだした。

 すると周囲の綿毛達が一斉にこちらを向く。ちょっと怖いんじゃが。


「お、おい、勝手に毛を切られて切られて怒っておるのではないか?」


 確かにクリエの言葉も否定できん。

 綿毛達は無言でわらわ達の下へゆっくり集まってくると、陣形を組みだす。

 最終的にそやつらは一列となってメイアの前に整列した。


「あら、もしかして貴方達もカットして欲しいのですか?」


「「「っ!」」」


 全員がその通りと肯定する様にピョンとジャンプする。


「分かりました。では順番に」


 そして始めるカット大会。


「何じゃろなこの光景」


「お主の家臣じゃろ?」


 だから分からんのじゃよ。


「ですがみんな同じだと面白味が無いですね。ちょっと趣向を凝らしてみましょう」


 興が乗って来たのか、メイアは綿毛達のカットを微妙に変えたり、魔法で温風を描けたりし髪型ならぬ毛型を変えたり、パーマをかけてゆるふわヘアーにしたりし始めた。


「わわっ、メイド長凄いです!」


「貴女もメイドとしてこのくらい出来るようになりなさい」


「はい!」


 いや、お主は魔法使いでは?


「完了です」


「「「ピッ!!」」」


 結果、森には様々なヘアスタイルをした綿毛の群れが生まれた。


「なんかカツラの群れが動いて居るみたいじゃの」


 ううむ、手足の生えたカツラの群れ。ホラーかの?


「でもこの子は可愛いですよ」


「まぁ、の」


 最初の内のはいいんじゃよ。じゃが後になるほどどんどん奇抜なスタイルになっておるんじゃよな。


「ピッピッ!」


 しかも綿毛達がそれを気に入っているのじゃからこちらも何も言えん。

 なんかモヒカンみたいになっておるのもおるぞ?


「アレはソフトモヒカンですのでモヒカンではありませんね」


 その知識わらわに必要か?


「ですが結局この子達は何者なのでしょうか?」


 じゃよね。わらわ達それを気にしておった筈なんじゃよね。


「「「ピッピッ」」」


「わわっ、こらやめんか」


 しかし、イカしたヘアスタイルにして貰った事で大喜びした綿毛達に囲まれ、その正体を探るどころではなくなってしまったのじゃった。

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