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アンマッチサークル キャンプに胡散臭い筋肉はちょっと……  作者: 池金啓太


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010 霧の夜の赤い双眸

 夜。無人島の夜においてスタッフが用意する照明以外で辺りを照らすものは個人が用意したランプや焚火だけだ。


 光源が限られているせいか、今回の参加者のほとんどは夕食時にスタッフの用意している照明の周りで大きな火を囲うように話をしていた。


「で?どうだった?いい画は撮れた?」


「それが聞いてくださいよ。洞窟に行ったんですけど、たぶん道を間違えたんでしょうね。光がなかったせいか、その光の場所まで到達できなかったんです。一本道でした?」


「俺らが入った時には一本道みたいに見えたけど……どうだろうな?そこまで観察してたわけじゃないから、もしかしたら分かれ道があったかもしれないな」


 カップルの阿部と勝府は、洞窟に行ったものの、洞窟内の奥にある池にたどり着くことができなかった配信者のメンバーにその時のことを思い出しながら話していた。


 こんな洞窟だったと、メンバーは撮影した動画を見せるも、あまりに光景が違いすぎて二人も判断できていないようである。


「もしかして違う洞窟に入ったんじゃないのか?別の洞窟があるかどうか知らないけど」


「そうかなぁ……明日もう一回チャレンジしてみるかな。その時は霧が晴れてればいいんだけど」


 周りの霧はどんどん濃くなっている。これほどの濃霧はほとんどのものが初体験だった。今は火を焚いているためにそのあたりに霧はないが、少し離れたところ、自分たちが寝る場所であるテントやロッジなどももう見えないほどの濃霧になっている。


「明日もこの濃霧じゃ、どうしようもないな。海には出られないだろうし」


「けどこの濃霧だったらさ、あれどうよ、この島の村跡地?あそこ撮影したら結構いい雰囲気出るんじゃない?ゾンビとか出そうな感じ」


「あぁ、それは良いかもな。すげえ雰囲気でそう。ただ、あれだな、帰り道がマジでわからなくなるだろうから、なんか目印あったほうがいいな」


「確かに。川からここまででも迷うか微妙なところだったもんな。阿部さんたちはどうだったんです?」


「いやもう俺らは暗くなった段階ですぐに海から上がったよ。一気に冷えてきたから早めに戻った。そしたらこの霧だろ?マジビビったよ」


「小暮さん一家は?同じくらいですか?」


「うん、一緒に上がってきたの。ほら、お子さんもいるしさ、風邪ひいたら大変じゃん?まだ泳ぎたいって言ってたけどね」


「子供はそりゃそうだろうなぁ。まぁ天気自体はしょうがないしなぁ。小暮さんたちは……自分たちのところで食ってるのかな?」


「家族水入らずの方がいいでしょ。せっかくのキャンプなんだからさ」


「あ、阿部さんたち二人きりにしたほうがいいっすか?すいませんねお邪魔しちゃって」


「ちょっともっと言って!もうずっと乗り気じゃないんだもん。せっかく二人きりになれるチャンスいくらでもあるのに」


「いやお前が変な事ばっかり言うのが悪い。そんな気分にもならねえっての」


「ほら酷くない?せっかくうちも露出高い服着てるのに全然手だしてこないし」


「そのせいで蚊に刺されてめっちゃかゆいって言ってたじゃねえか。もう腕も足も斑点だらけだぞ」


「だって、せっかくのキャンプなのに長袖とかなんか違くない?せっかくだしどんどん露出したいじゃん」


「そのせいで斑点できてんだよ。もう見てらんねえよ。ほらすごいんだぜ?」


 阿部が服をめくるとそこには確かに幾つも蚊に刺されたであろう跡が残っていた。見るだけでかゆそうなその光景にその場の全員が苦笑いする。


 一体どれだけの蚊に刺されたのか、数える気も起きないほどの跡がその体には残っていた。


 そんなことを話していると、小暮たちの割り当てられたロッジのある方角から何かが倒れるような金属音と短い悲鳴が聞こえてくる。


 何やら驚いたような声だった。一体どうしたのだろうかと全員が一瞬顔を見合わせる。


「なんだろ?なんか倒したかな?」


「火じゃなけりゃいいけど。おーい!小暮さん!大丈夫っすか!?」


 火を倒したとなると火事の危険もある。その場にいた全員が声をかけるが、小暮一家からの返事はない。


 一体どうしたのかと、スタッフも気になったのか、小暮一家の方に向かおうとするとさらに続いて悲鳴が上がった。


 今度の悲鳴は非常に高い、子供のものだった。


 瞬間的にまずいと判断したのか、スタッフが駆けていく。そして何かあったのだろうかとその場にいた全員が小暮一家の方に移動を始めていた。


「小暮さん!大丈夫ですか!?」


 配信者たちも動画を撮るよりも早くその場に駆けつけることを優先しており、霧を潜り抜けるようにその場所に向かうと、まず目に入ったのは倒れている子供と、その子供の足に噛みついている、犬のような、大きな動物だった。


 だがその動物はあまりにも、何と表現すればいいのか、現実離れしていた。


 炎のように揺らめく青白い体毛を持ち、細い四本の脚は僅かに半透明のように見え、その向こう側、背景が透けて見えてしまっている。


 そして、何より全員の目を引いたのは、その目だ。


 血のように赤く、月のように怪しく輝くその双眸は、敵意と殺意に満ちており、その場にいる全員を動きを許さなかった。


 一歩でも動けば、噛み殺す。そう言っているかのようだった。


 だが、その場に子供の悲痛な声が響く。さらには近くに子供の父親も血を流して倒れていた。


 一体何があったのか想像に難くない。どうにかしてこの動物を追い払わなければ。そう思っていても、足が竦んでしまい、動くことができなくなってしまっていた。


 汗が噴き出る。直接向けられる殺意に、悪意に、誰も動くことも、息をすることすらもできずに佇むことしかできない。


 ただ一人を除いて。


「失礼」


 動けずにいる全員の隙間を駆け抜けてやってきたその人物は、霧を吹き飛ばす勢いで飛び上がる。辺りに満ちていたはずの霧が、一瞬だけ、その周辺から引き裂かれるように、風を巻き起こされ吹き飛ばされたかのように、その人物を嫌うかのように、その場から消えて失せた。


 空中から着地する勢いのままに、数珠の巻き付けられたその拳を子供に噛みついている獣目掛けて振り下ろした。


 歪な音が辺りに響き、地面に亀裂が入ると同時に先ほどまでいたはずの獣が悲鳴のような呻き声をあげ、そして文字通り霧になるかのように、溶けていく。


「……面倒な……スタッフさん、清潔な布と水、それと応急キットを。大丈夫、傷は浅いですよ」


 その場から獣がいなくなったことで、全員が唐突に息をすることを思い出す。そしてスタッフはすぐに万里小路に言われた通りに布と水を取ってこようとする。


 その場で泣いてしまっている子供をなだめながら、噛みつかれた足をしっかりと押さえる。


 かなり血が流れており、傷が相当深いことを表していた。


「やば、やばくない?までのさん大丈夫!?その子、大丈夫!?」


「あぁそんな!?嘘でしょ!?」


 我に返ったのか、周りにいた全員が騒ぎ出す。そんな中、万里小路は泣いてしまっている子供に言い聞かせるように笑って見せた。


「大丈夫です。傷は浅いですよ」


 血の量からしてそんなことはありえないと全員が理解していた。そんな中、万里小路は目つきを鋭くすると小さく呟く。


 その場の誰も、喧騒のせいでそのつぶやきを聞き取ることはできなかった。


「母なる蛇の真炎よ、否定を散らし産み満たせ。其は力なり」


 一瞬、周りに漂い続ける霧が揺らめく。そしてようやくスタッフが綺麗な布と水、そして応急処置のできる道具を持ってくると、万里小路は慣れた様子でそれを準備し、子供の足を軽く消毒していく。


 そこでようやく、傷の全容が明らかになった。


 その傷は、すでに塞がっていた。傷の後は残っているものの、既に血は止まっており、皮膚が少し破れた程度の、かすり傷程度のように見えていた。


「あれ?本当だ、全然、大したこと、なさそう」


 万里小路が手際よく包帯を巻いていき、同じように小暮父にも同じような処置をしていく。同じ呟きを、この場の誰も聞くことはできなかったが、父も子も、ほとんど軽傷といっていいような状態になっていた。


 血が流れていたことに驚いていた母親ももう一人の子供も、二人が大した怪我ではないということを知って心底安心しているようだった。


 ただ、父親は激痛と流れていた血の量から絶対にかなり深い傷だと思っていたのに、万里小路が少し処置をしたら実は軽傷だったと知って目を白黒させていた。


 とはいえ、つい先ほどまで直接噛みつかれていた子供は大声をあげて泣いている。無理もない、あのような目に遭えば泣くのが道理だ。


 今は驚きながらも無事である父親に抱きかかえられ慰められている。


 周りのメンバーも、血は出ていたが大した怪我ではないということを知って安堵しているようだった。


 もしこれでもっと重傷であったなら、パニックが起きていたかもわからない。だがあのような動物がいるとは聞かされていなかったため、その点に関しては困惑もしている。


「にしてもなんださっきの?動物?いや、動物なのに……もういないし……何あれ?スタッフさん、ここあんな動物いるの!?」


「い、いいえ!あんな動物見たことがありません!というか……さっき噛んでたのは一体どこに?」


 スタッフとしてもあのような動物、動物だったのかどうかも怪しいが、そのようなものが出てくるとは思っていなかったらしい。嘘をついている様子もなく心底驚いているようだった。


 場が混乱している中、万里小路はあたりを見渡していた。一体どういう状況なのか理解しようと努めているようだった。


 だがそれよりも先にやることがあると判断したからか、大きく手を叩く。


「皆さん、落ち着いてください。とりあえず、あんな動物がいるとあっては、まずは安全な行動を心掛けなければなりません。スタッフさん、テントに寝る予定だった数人を空いているロッジに移動することは可能でしょうか?」


「あ、は、はい。可能です。ただ、七人となると、少々手狭でしょうが……」


「あ、それなら俺らのところに何人か来ていいっすよ。俺ら二人だけで使ってるんでめっちゃ広いっす」


「二人きりじゃなくなるのやだけど、さすがにもうそんな空気じゃないもんね」


 カップルは何も問題ないとでもいうかのようにそのように提案してくれる。この状況では非常にありがたい話だとスタッフも感謝をしていた。


「それと、無線で連絡をつけてくれますか?動物が出たのと、明日迎えに来てもらえるかどうか。さすがに軽傷とはいえ、動物に噛まれているなら、病院に行ったほうがいいでしょう」


「えぇ、すぐに無線で確認をします」


 まずやるべきは自分たちの状況確認だ。救助を呼べるのであれば可能ならばすぐにでも救助を読んでほしいところである。


 異常事態になり、すでに負傷者もいるとなれば、すぐに船を出してもらって病院に向かうべきだ。


 その判断に従ってスタッフはすぐにベースキャンプにある無線に駆け込んでいた。


「それと皆さん、申し訳ありませんが一度ロッジを中心に集まりましょう。荷物なども持ってきていただいたほうがいいでしょう。あんな動物がいるなら、一塊になっていたほうが安全です」


「さっきのパンチやばかったもんな!さすが無人島にまで来て筋トレしてる人は違うぜ!」


「マジやばかった!ヒーロー着地みたいだったもんな!」


 周りの人間が感動した声を出している中、万里小路は悪い気はしないのか、筋肉を強調するポーズをいくつかとってから近くにいる鯖井に声をかける。


「すいません鯖井さん、いくつかお手伝いをしていただきたいんですが」


「なんでしょう?できることであれば」


「もう朝までずっとこの状態が続くとなると、最低限火は残しておきたいんです。このロッジの近く……そうですね……あのあたりにキャンプファイアーを作ってもらえませんか?朝まで火が残る程度の」


「現在時刻は……二十一時。日の出まで……八時間。就寝時間を二十三時として六時間もてばいいんですね?」


「はい。できますか?」


「……太い丸太と、薪を用意していただければ可能です。普通に使う薪だと、間違いなく燃え尽きます。火の番をする必要があるでしょう。火を焚くのは獣避けですか?」


「ないよりはマシかと」


「わかりました。なるべく長時間持つような形で組みましょう。鹿目さんたち、手伝っていただけますか?」


「え?あ、はい!手伝います!おいお前ら仕事!緊急時こそ取れ高チャンスだ!画面映り意識しろよ!」


「っしゃ!スタッフさん!薪置き場おなしゃす!」


 鯖井を筆頭に、配信者メンバーが焚き木の準備をしている中、万里小路は先ほど噛まれた子供の近くにやってきていた。


「大丈夫だよ。傷は大したことないから。怖かったね?けどもう大丈夫」


「…………?……キツネさん?」


「はぇ?」


 父親の腕の中で泣いていた万里小路の肩の部分を見てそう呟いた。万里小路は一瞬意味が分からなかったが、自分の肩の方、ちょうど子供が向けた視線の方に意識を向けて冷や汗を流している。


「そうか……この霧……接触に加えて、子供だから見えちゃったか……」


「……白いキツネさん?の、マフラー?」


「え?キツネ?え?大丈夫だよ。もう動物はいないから」


 どうやら父親は先ほど動物に襲われたから子供が別の何かを見て勘違いしていると受け取ったのか、目を隠すような形で子供を抱きしめて大丈夫だと繰り返している。


 ただ子供はキツネが見たいのか、父親の腕から逃れようとしている。とはいえ大人に勝てるはずもなく、しっかりと抱き止められていた。


 万里小路はさすがにどう説明したらいいのかもわからなかったからか、子供の近くによっていくと、小さな声で子供に教える。


「キツネさんが守ってくれるからね。大丈夫。ね?」


 父親としても、子供の妄言に付き合わせてしまって申し訳なく、また子供を少しでも安心させようとしてくれているのがわかるからか、申し訳なさそうに、だがありがたそうに小さく会釈する。


 子供は何かを見たのか、口をとがらせて人差し指を立ててそれを口元にもっていった。


 内緒、というジェスチャーにいったいどんな意味が含まれていたのか、周りの人間は知る由もない。少なくとも万里小路以外は。


「までのさん、荷物とか俺らのロッジに入れていいっすよ?鯖井さんもこっちに来れば人数的には何とか入るっしょ」


 そんな風に話していると、カップルの片割れ、男の方の阿部が声をかけてくれる。せっかく二人きりだったのにもかかわらず、安全の為にと自分たちのロッジを簡単に整理整頓してくれていたらしい。


「ありがとうございます。すいません、気を遣わせてしまって」


「いやいや、さっきびっくりしてパニクりそうになったの、までのさんのおかげでストップできたし。やっぱ筋肉が自信につながるんすか?」


「ははは。こういう状況に慣れておくと自然とこうなりますよ。あぁ、それと、お二人にお願いが」


「なに?力仕事とかじゃなきゃ頑張る!」


「えぇ、あの子たち、それと参加者の皆さんがそうなんですが、いろいろと不安なところもあると思いますので、火を焚いたところで何か明るくなるような話題を振っていただけるとありがたいです。こういう場所で雰囲気が悪くなるのが、一番よくないので」


「あー、確かに。一種の……なんていうの?閉鎖空間?密室?推理ものとかのロケーション、何だっけ?ミステリーサークル!」


「それ畑とかにできるやつ。クローズドサークルな」


「そうそれ!そういうのだと雰囲気悪くなって『俺はこんなところにいられるか!』って言った人から死んでくもんね。みんなが和気あいあいとしてれば事件も起きない!そういうこと!?」


「そう言うことです。お願いできますか?」


「いいじゃんガヤ要員。俺らに任せてくださいよ。さっきの、動画とってる連中も巻き込めば、雰囲気はよくできると思いますよ」


「ガヤ要員とか。でも明るい話題って、お子様にはちょっと早いかも?じょーそー教育に悪くない?」


「いいんだよ。いや良くねえけど。お子様にもわかるような話題でいいだろ」


 カップル二人はあぁでもないこうでもないと話をしている。この二人にこういう話題を振ったのは正解だったようだと万里小路は安堵する。


 まだ出会って一日程度しか経っていない人間がどのような反応をするかは完全に未知数だったが、この二人の今までの反応からして悪人ではない。馬鹿っぽい言動が非常に目立つのは事実だが、この二人は案外周りをよく見ている。


 二人きりになりたいからなのか、それとも二人がそういう気質だからか、その人間性をよく観察しているというべきなのだろうか。雰囲気が悪くならないように、前向きな提案をあの場ですることができたということも含めて、この二人はこの場のムードメーカーになってくれそうであった。


「大丈夫かな?あっちの男の子とか前かがみになっちゃわない?この中で数少ない色気のある女の子である私が襲われちゃったり?」


「大丈夫、それはないから」


「ちょっと、普通そこは彼氏として『俺が守ってやるよ』とかいうべきじゃないの?」


「ハッ!まぁまでのさん、話は分かったんで、任せてくださいよ。一緒にちょっとした飯でも作ってくれるとありがたいっす」


「ちょっと!今鼻で笑った!?彼女に向けてなんて反応!?」


「では鯖井さんたちに何か作ってもらうようにお願いしますね。食材も確認しておいたほうが良さそうですね。私からスタッフさんにお願いしておきますよ」


「うぃーっす。おなしゃす!」


「ちょっと!聞いてんのこら!?」


 カップルの二人が騒ぎ出す、もといじゃれ合いだすのを見て、万里小路はスタッフの方に向かっていた。

 そこでは動揺しているスタッフ三名がどうしたものかと話し合っていた。


「すいません……どしましたか?」


「あ、あぁ、万里小路様。すいません、あの……その……」


 スタッフが言いにくそうにしているのを見て、ある程度万里小路は状況を察したのか、小さく頷いてから笑顔を作る。


「……ではこちらの要件を先に。皆さんでキャンプファイアーを囲んでちょっとや職でもと思いまして。先ほどのことで怖がっている子供もいるので、軽く甘いものなどがあるとありがたいのですが」


「あ、で、でしたら用意しておきます。それで……その……」


「無線は、通じませんでしたか」


 その言葉にスタッフ全員が一瞬視線を逸らせる。どうやら図星だったようだ。運営側としてはそのような不祥事を参加者に言うことはいかがなものかという部分もあるのだろう。さらに言えば、それはつまりこのツアーが終了するまで迎えの船を呼べないということでもある。


 ただ、何となく事情を察していて、なおかつこの場で最も冷静に対処できている万里小路に、スタッフ三名もどこか頼もしさを感じているようだった。


「このことが伝われば、おそらく皆様が不安になると思われます。皆様への説明は……少し落ち着いて、そう、タイミングを見て我々からお話ししますので」


「……わかりました。私の方からお伝えするのはやめておきましょう。タイミングはお任せします」


「万里小路さん!火の用意できたっすよ!」


 スタッフとの話の途中で牧の準備を終えたメンバーから声がかかる。この火を維持することが重要だと、万里小路は話をそこまでで切り上げ、キャンプファイアをする場所へと向かっていた。


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