009 岩戸と筋肉と霧
満場一致で池から離れることを選択した五人は、しばらくして一つの洞窟を発見していた。
洞窟の奥からは風が通っているためか、唸り声のような音が断続的に響いている。
洞窟の両側にある大きな岩二つが、まるで門のように洞窟の前にそびえたっていた。周りに生えている草が洞窟の入り口を隠すかのように生えている。
そしてその間、ちょうど洞窟の入り口部分には昔そこにあったのだろうか、しめ縄の後のようなものが朽ち果てている。
ただ周辺の風景と同化してしまっていて、それらを彼らが認識することはできなかった。
話に聞いていた洞窟とはここだろうかと、五人はすぐにライトをつけて中を確認しようとしていた。
「ついに、我々は到達しました。伝説の残る、蒼い光が満ちると言われている洞窟にやってまいりました。この奥に、青く輝く地底湖が存在しているという話が出ております。さぁ皆さん!準備はよろしいですか!?」
「おー。これは取れ高の匂いがプンプンするぜ」
「いい画を取ってよね。ここカメラの見せ場だよ?」
「その通りでございます。ただ、ただだよ?先にここに入った人曰く足場はあまり良くないってことなんで皆さん足元注意でお願いします。怪我だけはしないでね?良いですか?労災とかそう言うの面倒くさいんで怪我だけはしないでね?」
「変なところに気を遣うなよ。バラエティでそんな事言ってたら何もできないぞ」
「いや言うてもね、労災は怖いよ?動画として出す以上怪我されるとね、場がしらけるからね。怪我したら全カットになるからよろしく」
「マジで言ってんの!?やばい、もっとちゃんとした格好してくればよかった」
「いいですか?振りじゃありませんからね?我々は皆さんを熱湯の中に突き落とすことはしても怪我だけはしてほしくないと切に願っていますからね。その点御間違いのないようにお願いしますよ?それでは、伝説を我々は今目撃する、かもしれない!ということで行きましょう!」
カメラに向かって全員がキメポーズをしたところで、ゆっくりと、そしてしっかりとした足取りで全員が中に入っていく。
岩肌の洞窟の中は人が一人通れるかどうかという狭さで、風が通る度に全員の髪を揺らしていた。
段差もほとんどなく、ゆっくりとだが確実に奥の方に進んでいくと、奇妙な岩がいくつもあることに気付ける。
「なんだろな?全然段差ないじゃん?ちょっと坂にはなってるけど」
「俺らライト持ってるからだろ?あの二人はライトなしで行ったって話だから、この側面?にある妙な岩を段差と間違えたんじゃないのか?」
「確かに。っていうかこの岩置いてあるだけじゃね?」
「あれ?おい見ろよ」
先頭を歩いていたメンバーが声を上げると、その先には大きな岩がそびえていた。
その向こう側にも何かがあるようなのだが、大きな岩が邪魔をしていてそこから先に行くことは難しそうだった。
その手前にも幾つもの小さな、といっても三十センチ大の石が並べられるように置かれている。
既に風化して割れてしまい原形をとどめてはいないが、陶器のようなものもそこにはあったようで欠片が地面に落ちていた。もっとも、暗すぎてこの五人は全員見つけることはできていないが。
「あれー?道間違ったか?いや一本道だもんな?」
「この岩の奥?実は進めるとか?あ、この岩ちょっと薄いぞ?岩っていうより壁?みたいな感じだ」
洞窟の岸壁と目の前の岩の隙間を覗き込むと、確かに向こう側に行けるようになっているようだった。
岩の厚さは五センチ程度だ。岩というよりは石板というほうが正しいかもしれない。もっとも石板というには形が歪だが。
あのカップルはそんなことは全く言っていなかったが、奥に進むことができるとわかっている五人は、この岩が簡単に退かせるものだと思ってしまっていた。
「横にスライド?いやでも天然の洞窟だろ?」
「ちょっと待って、上の方が空いてるからそこからいけるかも……もうちょっと……ととととと!?」
足元にある石を足場に、上の方に手をかけると、石板がゆっくりと傾いて勢い良く倒れてしまう。そして地面に倒れ込むのと同時に大きな音を立てて砕け散ってしまっていた。
「あーあ。壊しちゃったよ。いーけないんだいけないんだ!」
「せーんせーにいってやろー」
「懐かしいわ!っていうかこの岩が邪魔してたのなんなんだ?あの二人そんな事言ってたっけ?」
「実は別の道があったとかかな?奥に何かあるか?」
「……いいや、行き止まりだ。ほとんど何もない」
石板が塞いでいた場所の五メートル先には何もない。ただの岸壁が続いているだけだ。もしかしたら見逃した別の道があったのかもしれないと思いながらも、五人は首をかしげる。
風が通っているということもあり、どこかしらでつながっているとは思うのだが、少なくとも彼らはそれを見つけることはできていなかった。
「あれかな、子供のころ見た映画のさ、ビブリ映画の」
「あぁ、あったもん!どろろ見たもん!ってやつな。もしやそれなのか?実はその洞窟は限られた人間にしか行けないような場所だったのか?」
「マジで伝説的なやつじゃん。選ばれしものしか行けないとか。あの二人は実は勇者の家系だったのかもしれない」
「……どうやら我々は選ばれしものではなかったということか。いや冗談はさておいてどうするよ?池に戻って筋トレする人をバックに釣りするか?」
「ちょっと面白いのやめよう。あの人の筋トレかなりガチだったろ。片手逆立ちで腕立てとか一回もできる気しないわ」
どうしようかと五人は悩みながら、とりあえず一度洞窟から出ることにしていた。
倒れた岩の下からわずかに冷気のような、霧のような靄が湧き出ていることに彼らは気づくことができていなかった。
「ん?何か暗くなってないか?」
「日が陰ってるのかな?曇ってきたか……午前中に海に出たのは正解だったな」
洞窟から出てきた時、五人は周りが妙に暗くなっていることに気付いていた。洞窟に入る前は木漏れ日からでも強い日差しが降り注いでいたが、今は太陽の光を認識できない。
周りの木々が僅かな光すらも遮っているからか、洞窟の中の暗闇がまだ瞳の奥に残っているからか、妙に辺りが暗く見えていた。
木の上の空を見ることはできていないが、気温も若干ではあるが下がっているように感じられる。
「どうする?取れ高微妙だぜ?釣りするか?道具はもってきてるし」
「やはり筋トレを背景に釣りをするしかないのか。万里小路さんに背景に映っててもらうようにお願いするか。あの人延々と筋トレしてそうだけど」
「それはそれでな、面白い画は撮れると思うんだけどさ、さすがにどうなんだ?ちなみにさっきまでの洞窟の下り丸々お蔵入り?」
「可能性はあるよね。結果面白くなかったので釣りやります!っていうのもありだけど」
「さすがになぁ……視聴者が許すかだよなぁ……まぁ筋トレ……いやもう筋トレもしてないかもなんだけどさ」
「とりあえず、池に戻ろうか。ここでしゃべってても仕方ないし」
「それか人里跡地?を見るのもありだな。明日行こうと思ってたけどさ。前倒し」
「そうすると明日やることなくなるじゃん」
あぁでもないこうでもないと話している中、五人は池の方に戻ってくる。先ほどまでは池の中心で筋トレ中の万里小路がいたはずなのだが、今は見つけることができなかった。
「あれ?もういなくなってる?どこ行ったんだろ?」
「ベースキャンプに戻ったのかな?今何時?」
「まだ十四時。日没には早すぎるぞ?あの人昨日夜になってから帰って来てたから、てっきり遅くまで筋トレやってるもんかと思ってたけど……」
そんなことを話していると、水面が僅かに揺れる。
風でもなければほとんど波を立てることすらない池が大きく揺れ、魚でもいるのかと何人かが池の方に視線を向けると、勢いよく何かが飛び上がってくる。水飛沫をあたりにまき散らしながら水面に躍り出たのは、先ほどまで池の中心で筋トレをしていたと思われる万里小路だった。
「ふぅ……よし、食料確保」
その手には魚が握られている。魚のえらを器用に掴んで持ち上げているその姿は荒々しい。ワイルドという言葉がこれほど似合う男もそういないと思いながら、全員が同じことを考えていた。
まさか、素手で捕まえたのだろうかと。
「ま、万里小路さん!大丈夫ですか?」
「ん?おや皆さんお揃いで。どうかされましたか?」
どうかしたのはあなたの方ではないのですかと聞きたいのを必死にこらえながら、普通に泳いで池のほとりまでやってくる万里小路の姿を見て全員が一瞬息をのむ。
今は泳ぐためにパンツ一丁になっているためか、今まで衣服に隠されていた筋肉が恐ろしいまでに主張している。
これほどの筋肉を作るのに一体どれだけのトレーニングを重ねたのか想像もできない。あとで決めポーズだけでも撮影させてもらえないだろうかと考える中、全員の視線が筋肉からその手にいる約三十センチほどの大きさの魚に向けられる。
「それ、どうしたんですか?魚」
「どうしたって……捕まえたんですよ。昨日と同じです。夕食にしようかと思いまして」
「…………どうやって捕まえたんです?」
「どうやってって……こう……シュバっと」
万里小路は手で摑まえるような動きをする。水中にもぐって自由に泳いでいる魚を素手で捕まえたというのかと、全員が信じられないような顔をする。
「あ、信じていませんね?ではもう一度獲ってきましょう。私は今何も持っていませんよ?調べてもらっても構いません」
万里小路は獲ってきた魚を無造作に池の一角に放り投げてから万歳をする。何も持っていないというアピールなのだろうが、パンツ一丁でいったい何を持てというのかと疑問も浮かぶ。とりあえず五人で万里小路を囲うように配置して観察する。
良い筋肉だと感心しながら、何も持っていないことを確認すると、筋肉を主張しながら再び池の中に飛び込んでいった。
そして数十秒して、一瞬池に小さな波が立つ。いったい何をしているのかと疑問だったが、その数秒後に先ほどと同じように三十センチ程度の魚のエラを器用に掴んだ状態で水面に上がってくる。
水飛沫をあたりにまき散らしながら魚を掲げて戻ってくる姿は、某バラエティー番組の野生児芸人のようだった。
「ほら、どうです?」
「マジっすか!?マジで手づかみっすか!?やべえ、すげぇ」
「めっちゃ暴れてる。マジで獲りたてって感じ。えー……俺らこれから釣りしようってのに、なんかもう凄いもん見せられちゃったよ」
「……この様子、もう一回くらい、撮影してもいいですか?」
「構いませんよ?ちょうどあと一匹くらいとろうと思っていましたので」
明らかに怪しい。どう見ても怪しい筋肉と職業をしている万里小路だったが、多くの視聴者を抱える動画配信者としてはこれほどの技術を見せられて興奮せずにはいられなかった。
その後、筋肉を主張する万里小路と、水中用のカメラを使ってその様子を撮影することになる。
「それでは本日の晩御飯。皆さんはね、そこらへんで釣りしててください。もっと見栄えのいい映像撮ってくるんで」
「毒を吐かなきゃいけない病気かなんかなのか?いちいち棘あるなこいつ」
水中で撮影する間、他のメンバーはこの池で釣りをする準備を整えている。海の魚に川の魚を一緒に捕まえれば、その分食卓は豪華になるというものだ。
「本日のアドバイザーはこの方。万里小路道満さんです。本日は手づかみの実演をしていただけるとのことで、よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします」
「では早速お願いします。先ほどすでに二匹ほど捕まえていますが、どのようにやっているんでしょうか?」
「やっていること自体は単純です。魚の逃げる方向に先に手を出すだけですので。口で説明するよりも、実際にやって見せたほうが早いでしょう。どうぞ、ついてきてください」
「よろしくお願いします。それじゃ地味な皆さんは今日の晩御飯の確保お願いしますね!」
「うるせぇ!とっとと行ってこい!」
水中カメラを構えながら先に潜った万里小路の後についていく。少し進むと池はしっかりと深くなっており、足が届かない程度になっていた。
余裕をもって泳ぐ万里小路は常に後ろからついてきているカメラを気にしている。そしてゆっくりと潜ると、水の底をゆっくりと泳いでいる魚を指さした。
カメラがしっかりとその魚に向けられていることを確認してから、万里小路はゆっくりと近づいていく。
指を二本だけ立てて、ゆっくりと近づいていくが、当然魚も水中を自由に動く。普通なら腕の届く範囲にはなかなか近づかせてもらえないことはわかっていた。
だが、どういうわけか魚は逃げない。むしろ万里小路の方に近づいてきていた。そして、ゆっくりとその体を翻した瞬間、鰓部分目掛けて二本の指が突き刺さり、がっちりと捕まえていた。
腕の振りの速度、水の中だというのに地上にいる時と遜色ない速度をしっかりとカメラに収めていた。
水中でのあの動き。そして魚が何故か寄っていった奇妙な流れ。何もかも説明はできないが、すごいということだけは構えていたカメラにしっかりと収められていた。
「ふぅ!どうでしょう?いい画が撮れましたか?」
「最高です!おいお前らすごい映像撮れたぞ!もうお前らもあれくらいやってくれよな!」
「やかましいわ!お前魚の一つも獲ってから言えよなそういうことはよぉ!」
さっそく釣りをしているメンバーと口喧嘩をしながらも、その興奮を抑えられないのか、感謝しつつもすぐに周りのメンバーに映像を見せようと池のほとりへと戻っていこうとしていた。
そして万里小路はそんな様子を見ながら、僅かに違和感を覚えて視線を山の方へと向けていた。
「皆さん、魚を釣ったら早めに戻ったほうがいいかもしれませんよ?」
「んぇ?まぁ、いい画が撮れたんで取れ高的には大丈夫っすけど、なんでです?」
「えぇと……天気があまり良くないようです。もしかしたら降ってくるかもしれません」
「あー……そういえば暗いですもんね。仕方ねえか。オラお前らとっとと一匹でもいいから釣れ!」
「やかましい!そんなに簡単に釣れるなら釣ってるっての!」
騒ぎながら池の魚を何匹か釣り上げたところで一度ベースキャンプに戻ることにしていた。
「いや大漁大漁。これで鯖井さんに晩御飯ご馳走できそうだ」
「万里小路さんもありがとうございました。魚一匹貰っちゃっていいんですか?」
「さすがに三匹も食べきれませんからね。どうぞ皆さんで」
「よっしゃ、今日はめっちゃ豪華に飯食える!」
釣ったり捕まえたりした魚を運びながら、五人に一人を加えて六人でベースキャンプへと戻ろうと川を下っていると、周辺の空気が急に冷えていく。
川沿いを歩くことで太陽光が降り注いでいるはずなのだが、相変わらず空は暗いままだ。
分厚い雲があるように灰色の空が広がってしまっている。あれが雲だとしたら、いつ振り出してもおかしくないような状態だ。
「あれ?なんか……?」
「ん?どうした?」
「いや、霧かな?なんか靄っぽいのが出てねえか?」
視線の先、先ほどまで六人がいた山の方からゆっくりと、だが確実に靄のようなものが溢れるように、流れるように溢れてきていた。
「霧なんて出るんだな。こりゃ早く戻ったほうがいいかもな。いや万里小路さんに言われた通り早めに切り上げてよかったっすわ」
「そうですね。少し急ぎましょうか」
万里小路は少し焦っているようにも見えた。少し風が吹く度に霧が大きく揺れ、木々を覆い隠すように迫ってくる。
霧の向こう側の景色はもうすでに真っ白になってしまっており見ることができない。移動中、その霧は六人を覆ってしまい、周りの景色は完全に一変してしまっていた。
「うぉ、結構濃いな。十メートル先も見えねえぞ」
「位置は大丈夫か?もうあと少しでベースキャンプだよな?」
「川に沿ってきたからな。途中に立て札みたいなのあったからそれを目印に……あぁあった!あれあれ!よかった。ここまで霧が濃いとマジで危なかったな」
六人を飲み込んだ霧はかなり濃く、周辺の景色すら飲み込んで通って来た道もわからなくなってしまうほどだった。
夏らしい緑に覆われていたはずの景色は白一色へと変貌し、霧のせいか気温もかなり下がって来てしまっている。
まだ夕方というのも早い時間だが、これは早めに戻ったほうがいいだろうと全員が判断して足早にベースキャンプに戻ると、すでにそこには六人以外の全員が戻っており、各々火を焚いている状態だった。
「あぁ!皆さん無事でしたか。無線に返事がなかったので何かあったのかと思いましたよ」
「え?無線入れてくれてました!?すいません、たぶん騒いでて聞こえなかったんだと思います」
スタッフの一人が心底心配した顔で、それでも全員そろって戻ってきているという事実に安心したようで大きく息を吐いていた。
五人のうち二つ、そして万里小路が一つ、それぞれ無線を持っていたが、それらの無線には全く応答がなかったように思えたが、どうやらスタッフはこの霧が出たタイミングでそれぞれに連絡を入れていたようだった。
「もうみんな戻ってるんです?」
「えぇ、日が陰ったあたりで、海に出られていた方は皆戻ってこられました。随分と気温も下がってきましたからね」
「こんなすごい霧も出てきてますもんね。普段こういうの出たりするんですか?」
「季節によっては、出たりもするんですが、この時期にしては珍しいですね。雨が降る予兆かもしれないので、濡れたらまずいものをテントの中にしまっていただいて、早めに火を焚いておいたほうがいいかもしれません」
「了解です。オラお前ら!さっさと火を焚いて飯の準備するぞ!昨日より手際よくやってくれよ?」
「わかってるっての。あ、鯖井さん!今日めっちゃ魚取れたんで!おすそ分けっす!」
動画投稿者メンバーが火を焚いてコーヒーを飲んでいる鯖井の方に向かって走るのを見送ってから、万里小路は自分の場所に魚を置いてスタッフに話しかけていた。
「すいません、この山の上の方に何かありますか?」
「なにか?池があるくらいですが……あぁ、あと洞窟があるらしいですね。私は見に行ったことはないんですが」
「洞窟、ですか」
「えぇ、山の方に池があるんですが、そこから少し行ったところに洞窟があるらしいです。確か、阿部様たちがとても綺麗なものを見たと話してくれていましたね」
その会話は今日の昼前に行われたものだ。その際に万里小路はその場にはいなかったために知らなかった。
視線の先、といっても霧のせいで全く何も見えなくなってしまっているが、その先にあるものを睨むように鋭い目を向けて万里小路は小さく息を吐く。
「どうかされましたか?」
「いいえ。少し様子を見ましょうか。明日になっても霧が収まらなければ、ちょっと大変かもしれませんから」
「そうですね。せっかくの無人島ですから、カラッと晴れてくれると嬉しいんですけど……」
「あ、そうだ。食料を買い足してもいいですか?」
「構いませんよ?なににします?」
「魚が獲れたので、塩と醤油と、あと米を」
「ありがとうございます。万里小路様は池の方に?」
「えぇ、彼らと一緒に。とても楽しそうでしたよ」
「あぁいう方がいると、キャンプも楽しい気分を味わいやすくなりますからね。まぁ今日は霧も出てきましたし、この辺りで静かに過ごすのが良いかと」
「……そうですね。そうします」
万里小路は食材を買い込んでから自分の場所に戻り火をおこし始める。少し離れた場所では動画配信者の五人が騒ぎながら夕食の準備を整えているようだった。
その様子を見て万里小路は同じく夕食の準備をすることにしていた。




