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マジック★ソルト 〜JKと異世界転生したのに、固有魔法が地味すぎて勇者の荷物持ちになりそうな件〜  作者: 揚げたてアジフライ
第一章 フェルメウス地方 冒険の始まり編
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<第5話 社畜でも分かる魔法講座>

魔法の鑑定パートです。

まずはヒロインから。


 暗幕に覆われた個室の中、蝋燭の灯りだけが揺らめく。

 床には分厚い魔導書や何かも分からない生物の干物が散乱しており、その怪しさを一層引き立てる。


「ヒッヒッヒッ……。ようこそ、魔法の鑑定じゃな……?」


 闇のように黒いローブを身につけた老婆が、しわがれた声でそう囁いた。

 鉤鼻につば広の三角帽子、目の前には不気味な水晶玉。

 人でも呪い殺さんばかりに鋭い瞳が、俺の姿をしっかりと見据えている。


「……すいません間違えましたー」


 暗幕を開くと同時に、俺は踵を返して立ち去った。


「真帆、ここはダメだ。多分次に入ったら変なパワーストーンとか売りつけられる。名前でも教えたらそれが最後だ。きっとそのまま呪い殺されるぞ……!」


「え、何?どういうことなの……?」


「……ええい、失礼な!ラビュアドネで一番の大魔道士である儂を捕まえて何を言うか!」


 俺の発言を聞いてか、怒った様子で老婆が暗幕から飛び出してくる。


「いや、どう見ても人を呪い殺すタイプの魔女だろ、アンタ……」


「おい小僧、あまり巫山戯た口を聞いておると、本当に呪い殺すぞ……!」


「やっぱり呪い殺すんじゃねえか!」


「ええい、魔法の鑑定じゃろうが!早う入らんか!」


「やめろ、引っ張るな!このまま引きずり込んで俺を呪う気だろうが!」


「儂を黒魔術師(ウォーロック)扱いするでない!いい加減にせんか!」


「……はぁ。おばあちゃん、この中に入れば魔法を鑑定してもらえるの?」


 取っ組み合いにでもならんばかりに騒ぐ俺と老婆に、真帆がため息をつきながらそう言った。


「おお、お嬢ちゃん!その通りじゃとも!ささ、このような阿呆な男は放っておいて、鑑定をしてあげようね」


 老婆は嬉しそうに真帆の手を引いて暗幕の中へと入っていく。


「孫とお婆ちゃんかよ……」


 俺は思わずそう呟く。

 そして、やれやれとばかりに首を振ると、真帆達に続いて暗幕へと足を踏み出すのであった。




◆◆◆




 暗幕へと招き入れられた俺達は、薄ぼんやりとした灯りの中、老婆から講義を受けていた。


「良いか、まず魔法の基礎知識から話していくぞ。魔法は誰しもが使える訳では無いという事は知っておるかな?」


「はい、受付の人から、生まれ持った資質によって魔法の有無が決まると聞いてます」


「うむ、その通りじゃ、お嬢ちゃん。魔法を使える者とそうでない者との違いは、体内に魔力を宿しているかどうかで決まっておる。体内の魔力を変換することで、魔法を生み出すという訳じゃな……」


 それでは、と老婆が前置きをする。


「魔法の威力を上げる為にはどうすれば良いか、分かるかな?」


「ええと、魔法を撃つ前に、魔力とかをいっぱい篭める、とか……?」


 少し間が空いて、老婆の問いに真帆がそう答えた。


「うむ、それも間違いでは無い。じゃが、それ以上に魔法の効果を高めることに直結するものがある」


「……ステータスの知力の値か?」


「……はぁ。癪じゃが、その通りじゃよ、小僧」


「その反応は置いとくとして、だ。魔法の効果を高めるためには、経験値を稼いで、ステータスの知力の値を上げる必要があるってことだな?」


「うむ、そうなるな。なんじゃ、小僧。存外に頭は回るようじゃな。では、魔法を過剰に使いすぎるとどうなるか、答えてみよ」


「そうだな……」


 魔法を使う為には、体内の魔力が必要になる。

 つまり、魔法を過剰に使えば、体内の魔力が空っぽになると言うことだろう。


「普通に、魔法を使えなくなるだけじゃないの?」


 ぽつりと、真帆がそう呟く。

 恐らく、それも間違いでは無いだろう。

 ゲームなんかでは、魔力を使い果たしてもただ魔法が使えなくなるだけで済むことが多い。


「……魔力がある種のエネルギーのような物だと仮定すると、それを使い果たせば動けなくなる。もしくは気を失う、とかが無難なところか?」


「そう、その解釈で間違いない。一般的に、魔力を過剰に喪失した状態を【魔力減衰(マジックロスト)】と呼ぶ。魔力を消費するに連れて、虚脱感に襲われ、一線を超えたところで気を失う。ルーキーにありがちじゃな」


「ふぅん、仮に【魔力減衰】になったとしても死ぬわけではないんだな」


「まぁ、そう言う迷信が無いわけではないがな。普通はある一定の時点で気を失うから、死ぬことはあるまいよ。無論、気を失っている間に魔物にでも襲われれば別じゃがな……」


 そう言うと老婆は、まぁ、魔力が完全に枯渇してしまえば、死に至る可能性はあるかもしれんな、とだけ呟いた。


「では、次に魔法の属性について話していくとするかの」


 老婆の話はこうだ。


 魔法は、基本的には火・水・土・風の四つの属性に分類される。

 だが、例外として、伝承の勇者や聖者が使ったとされる光属性、魔に属する者のみが宿すと言われる闇属性、そして、これまで挙げられたどの属性にも分類されない特殊な性質を持つ、固有属性が存在すると言う。

 属性は基本的には一人に対して一つであるとされるが、魔法の資質が高い者は二つ、三つと属性を有することもあると言う。


 ちなみに、老婆は火・水・風の三つの属性を使いこなすとのことである。

 自称かと思っていたが、大魔道士と言うのも嘘では無いのかもしれない。


「……ま、長くなったがお勉強はこんなところで良かろう。本題の魔法の鑑定といこではないか」


「よっ、待ってました!」


「ふん、調子に乗るでないわ。まずはお嬢ちゃんからじゃ。この魔水晶へ魔力を流し込むんじゃ」


「ええ、急に言われても……。魔力を流し込む……?」


 困惑するのも当然だ。

 俺達は魔法なんて存在しない世界から転生してきたのだ。

魔力なんて言われても、どうしていいのか分かるはずがない。


「ふむ、大切なのはイメージじゃ。魔法を宿している時点で、既に魔力を扱うための土壌は出来上がっておる。目を閉じて、身体の中心で渦巻くような魔力をイメージしてみると良い」


「渦巻くような魔力……」


「おいおい、フィーリングが過ぎるだろ……」


 考えるんじゃない、感じろってか。

 そんなもんで魔法が使えるようになったら苦労はしないだろう。

 さては、この婆さん、教えるのが下手だな?


「渦巻く魔力……見えた……!」


「ええ……見えるのかよ……」


 存外、真帆は天才肌なのかもしれない。

 婆さんとは気が合うかもな。


「うむ、やはり筋が良い。では、その魔力を、手先に向かって、ゆっくりと……」


「ゆっくりと、魔力を水晶に流し込む……」


 真帆がそう呟くと、水晶の中で炎のように揺らめく赤い光が渦巻いた。


「ふむ、適性は火……」


 あぁ、確かにゴブリンの時の猪突猛進具合とか火属性っぽいわ。

 でも、仮にも勇者として選ばれたのなら、もっとチートで属性の3つや4つは持っているかと思ったのだが……。

 案外、魔法に関しては適性が無かったのかもしれないな。


「更には水・土・風属性……!そしてなんと……光属性にまで適性があるようじゃ!」


 炎のような赤い光に続き、揺蕩たゆたうような青い光、温かみを感じる茶褐色の光、吹きすさぶ風のような緑の光が、次々と水晶の中で揺らめき出す。

 そして、それら全ての光の中心では、神々しく白い光が渦巻いていた。


「ああ、知ってたよ畜生め!」


 期待通りとでも言うべきか、真帆は基本四属性に加えて、光属性の魔法まで使えるらしい。

 まさに、勇者に相応しいだけの資質があるようだ。


 誰だよ、さっき魔法には適性が無いとか言ってたやつ。


「このマリガン、魔の道を歩み始めてはや78年。まさか、伝説とも言える光属性に適性を持つ者を目にすることができるとは……。長生きはするものじゃな……」


 まぁ、光属性とやらは伝承の勇者が使っていた魔法なんて話だから、相当に珍しい部類なのだろう。

 恐らくは、勇者の役割を持って転生した真帆だからこそ適性があったのだ。

 まさか、マリガンを名乗ったこの老婆も、目の前のいる少女が本当に勇者だとや露ほども思ってはいない筈だ。


「では、小僧。次はお前の番じゃな。まぁ、どんな結果であれ気にするでないぞ……」


 マリガンは、俺を慰めるようにポンと肩を叩く。

 うるせえな、ほっといてくれ。

 というか、アンタは一体何歳なんだよ……。


「はぁ……。なんか、気が進まねぇなぁ……」


 流石に、これだけのものを見せられてはいくら何でも気が引ける。


 ステータスの時点で相当な格差があったのに、十中八九、魔法でも差をつけられてしまうのだ。

 そうなれば、鑑定の為に水晶へと進む足取りも自然と重くなる。


(まぁ、女神に貰った魔法ではあるし、期待している部分もあるんだけどな……)


 そんなことを思いながら、俺は魔水晶へと歩を進め、静かに目を閉じるのであった―――。


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