Karte 幕間 私はリーファ
私はリーファ
エルフの森に住む女エルフで医師を勤めている。
エルフは長寿の生物なので、医学に関する知識は他の種族より優れてる。特に薬草を使った治療はその調合法を知りたいが為に森の外からわざわざ来る程だ。
その中で私は、医師の集まりのトップとして他のエルフ達の体調管理を行っていた。
あの日も、病に使う薬草を探しに森の深部に足を踏み入れた。
エルフの森は、凶暴な生物はほとんど居ない。なので私は油断していた。
「ふぅ、こんな所かしら。」
いつもの様に薬草を摘み取り、帰路につこうとした時、近くの茂みから唸り声が聞こえた。
「グルルル……」
現れた獣を見て、私は血の気が引いた。
「ス、ストロングベア!?森に生息なんてしてない筈なのに……」
ストロングベアはその巨大な体躯と鋭い爪で獲物を狩るクマ型モンスターだ。
丸腰で出会った時は死を意味し、例え武装しててもけが人が必ず出る危険なモンスターだ。
私は護身用に弓を持っていたが、弓は遠距離武器。
今の距離では構えてる内に食われて終わり……。
私は薬草を刈り取る用の鎌を構えて、対峙した。
勿論戦うつもりは無い。隙を見て逃げ出すためだ。
少しずつ、私は後退りをしていた時足元の木に足を取られバランスを崩してしまった。
その瞬間、ストロングベアが一気に加速し爪で私を切り裂いた。
「あぐうっ!」
首元を切られたようだ、赤黒い血がダラダラと流れ出る。
更にストロングベアが突っ込んできた衝撃で足の骨も折ってしまったようだ。
(終わった……)
そう思った時だった。が、私の視界に映るのは苦しむストロングベアだった。
よく見ると、ストロングベアの首には鎌が突き刺さっていた。交錯した際に運良く鎌が突き刺さっていた様だ。
そのまま、ストロングベアは私に背を向け森の奥に消えていった。
「た、助かったの?」
しかし、出血は酷く足も動かない。
死を覚悟した時だった。
近くで声が聞こえた。
「しかし、凄い森だなここ。こんな所に人は住めるのか?」
「この森はエルフの森って呼ばれてるので住んでるのはエルフくらいですね」
どうやら男女の声。
この森に来たということは冒険者かもしれない。
私は、声の聞こえる方向に這いつくばって行った。
すると、声の主と思われる男女が見えた。
男性は私を敵と思ったのか見たことの無い武器を構えたが、私を見るや駆け寄ってくれた。
そこで、私の意識は途切れ、気づいた時にはふかふかのベッドで寝かされていた。
目の前に居たのはあの時駆け寄ってくれた男性と女性。
その二人を見て私は違和感を覚えた。男性は人間だろうが、人間特有のマナとはまた違う感じで、女性に至ってはどう見ても創造神様とウリ二つ。
話してみると、やはり女性は創造神アスクレピオス様に間違いはなかった。アスクレピオス様は創造神であり医術の絶対神、そのお方に治療をして頂くなんて恐れ多すぎる……
と思ったが、治療したのは男性だとアスクレピオス様は教えてくれた。
私は恩人に無礼を働いたと思って謝意を表した。
男性は「桐崎修哉」と言う名前でアスクレピオス様に導かれてこの地に来たらしい。所謂、転移者ということか……。
彼は、私に施した治療方法を2枚の紙を見せながら教えてくれた。
見てる時は何とか表情は平静を装ったが
(何!?あの黒い紙!あれって私の骨!?どうやって骨を透かしたの!?そしてあのスケッチ!!あれだけ人体を精巧に描けるなんて……)
ただでさえ驚かされてるのに治療方法もまた聞いたことの無いものだった。
(縫合!?縫い合わせる!?人体を縫い合わせるなんて聞いたこと……輸血?他人の血液を私に!?もう訳が分からない!!)
この医師が私の知らない知識、技術を持ってる事は明白だった。
と同時に自分自身の天狗具合に恥ずかしくなった。
そんな事を考えてると不意に言葉が出た。