Karte1-3 手術終了
色々とアスクレピオスにツッコミを入れたかった俺だが、助手としての腕は流石と言うべきで非常にスムーズな手術が出来たので良しとすることにした。
手術を終えた患者を病室に運び、アスクレピオスにこの世界の生態系、そしてこの診療所の内装や機能を聞くことにした。
「まずはこの世界の生態系を説明しますね」
「よろしく頼むよ」
アスクレピオスは、この世界には前の世界の様な生物と共にゴブリンやオーク等の所謂ファンタジー要素のモンスターも棲息するとの事。
しかし、それらも自ら人を襲う事は滅多にしない生物らしい(ファンタジー小説とかだと真っ先に勇者とかが相手にするモンスターだったが、概念を覆すのがベーシックなのか?)
「ん?じゃあ逆に人とかを襲うモンスターって何だ?」
と素朴な疑問をぶつけると、アスクレピオスは
「人を始め他種族を襲う事のあるモンスターは、彼女を襲った可能性がある(ストロングベア)とドラゴンの邪悪種の(イーヴィルドラゴン)と(リヴァイアサン)、それと(イッカクシカ)とかですかね」
「おい、今しれっとドラゴン出しただろ。」の俺のツッコミにアスクレピオスは
「居ますよ?修哉さんにはゆくゆくはドラゴンも治療して貰いますし」
「俺は獣医とかじゃないぞ?あくまでも人を治す医者だし」
その問いかけにアスクレピオスはドヤ顔で
「そこで、もう1つのスキルの処方箋ですよ。」
ともう1つのスキルの事の説明を詳しくし始めた。
「処方箋は最初に説明した通り、病気に対しての適切な治療法、投薬、技術を使える様になるスキルと言うのは説明しましたよね?」
「ああ、だけどさっきのオペは病巣透過だけだったぞ?発動したの」
俺がそう言うと
「処方箋はあくまで(スキル保持者の対応が出来ない病に対して発動するもの)ですからね。今回のオペは修哉さんが対応出来るものだったから発動しなかったんです」
とアスクレピオスは発動条件について話した。
「つまり、俺が知りえない病に対してのみ効果があると……発動されない様に勉強しとかんとな」
ナイチンゲール内でも特に負けん気が強かった俺は貰ったスキルにも対抗心をバチバチに燃やした。
「修哉さんをアースラに転生させて良かったです。中にはスキルに驕って悪徳医師に成り下がる人もいましたし」
と、胸の内を明かした。
「まあ、こんだけ立派なスキルだもんなぁ。金稼ぎとかしか考えん医者もいる事は容易に想像できるし。そういえば、そういった奴らって未だにこの世界には居るのか?」
そう聞くと
「スキルを悪しき事に使った時は直ぐにスキルを授けた神に知らされるので、即座にその人に神託を下して改心無しと判断したら神罰ですね。スキルの没収は勿論、それで得た富、名声、人望全て抹消です。更に悪質な場合はネガティブスキルを強制的に付与しますね。」
とアスクレピオスはキリッとした顔で話した。その中にあった「ネガティブスキル」また聞いた事のない言葉なので聞くことにした。
「スキルには2種類の属性があるんです。正しく使えば自身の研鑽にもなり、周りを救う事が出来、ある程度発動をコントロールできるのが(ポジティブスキル)。逆に自分にのみ不幸等が降り掛かり、命ある限り発動しっ放しで神が許さない限り取り消されないのが(ネガティブスキル)と言うものです。今回、修哉さんに付与したのは、ポジティブの方になりますね。」
と教えてくれた。
「日本の刑罰の何千倍も重いなそれ……神が許さない限りって許される事ってあるのか?」と聞くと
「ポジティブを没収されてネガティブスキルを付与されてますから基本許される事は無いです。それに、許されるにはスキルを付与した神合わせて12人の神の満場一致が絶対条件なのでまず、有り得ません。」
「天界に来た魂でも、よからぬ事を考えちまうんだなー。このスキルってやつは」
俺は、スキルの強大さを改めて感じ取った。それと同時にスキルを正しく使う事こそが俺の使命だと胸に秘めた。
「この診療所については後ほど御説明しますね。そろそろ彼女が目を覚ましそうですし」
アスクレピオスがそう言うと、麻酔で眠っていた女性がゆっくりと目を覚ました。