Karte2-7 深刻な人員不足(アッサリ解決しました)
「天界から呼び出しがかかったので少しの間戻ります」
リーフィアの治療方針が決まり、投薬治療が始まった翌日のことだった。
アスクレピオスが突如、天界に戻ってしまったのだ。何でも、俺と同様に魂が来たらしく(しかも相当数)アスクレピオスが居ないと対処しきれないとの事だ。
「まあ、こっちは何とかするよ。ついでにいい人材が居ればこっちに連れてきてよ」
俺がそう言うと、アスクレピオスは任せてくれと言わんばかりにグーサインを出して天界へと帰っていった。
アスクレピオスが居なくなっても何とかなると思っていた俺だったが…
「今日に限って患者多くね?」
集落の中で病が流行りだし、診療所に駆け込む患者が急増したのだ。
勿論それは、リーファの診療所でも同じはずなのだが…
「あれ?診療所閉まってる…」
リーファの診療所の様子を見た俺は、診療所が閉まってることに気付いた。
最初、(患者が苦しんでるのに何やってんだ)と思ったが診療所の扉に(先生急病につき休診)と書いてあった。
リーファは、リーフィアの投薬治療の手伝いをしてくれてるので、俺の診療所に居たので問題無かったが
「医療崩壊手前だなこりゃ…にしても、この病何だろう…この症状すごい見覚えあるんだよなあ…」
今日、診察している患者は、皆(くしゃみ、鼻水、結膜炎、倦怠感)の症状だった。俺はまさかと思い、患者1人にあるテストを行った。
それは、アレルギー反応のテスト。所謂、パッチテストだ。
検査の結果、その患者は杉アレルギーだと言うことが分かった。
他の患者にもリーファと共にパッチテストをした結果、やはり皆、杉アレルギーの反応が出たのだ。
つまり、この病の正体は
「花粉症か」
原因が分かればこっちのものだ。俺は素早く、患者に抗アレルギー薬(目薬、点鼻薬)を処方し、治療に当たった。リーファの診療所の面々にも抗アレルギー薬を処方した所、たちまち活力を取り戻し、村人達の治療に尽力してくれた。
その結果、何とか村人達の治療は完了した物の、終わった時には、既に3日徹夜してしまっていた。
(村人多すぎ…その上元気になった人から他の相談も受けるハメになるし…)
「も、もう無理…」
俺はそう言い残して、診療所の机に突っ伏して爆睡した。
しばらく経った時だった。
「皆さーん、ここが修哉さんの診療所ですよー」
「本当に桐崎先輩がここに居るの?」
「小綺麗な診療所ね」
「死んだ奴に会うって何だか違和感あるぞ…」
外から声が聞こえて来た。
その喧騒で眠りから覚めた俺は、伸びをして聞こえて来たアスクレピオス以外の声の推理を始めた。
「新たな転生者か…それにしても俺の事知ってる様子だったなあ…まさかナイチンゲールのメンバーだったりして…」
そう独り言を呟きながら眠気覚ましの為のコーヒーを入れていると、診察室の扉がノックされた。
「修哉さーん。帰ってきましたよー」
アスクレピオスの声だった。
「入っていいよー。」
俺がそう言うと、扉が開きアスクレピオスを始め見慣れた3人が入って来た。
「あー!桐崎先輩!」
「随分立派な診療所ね。修哉くん」
「本当に桐崎なのか?生きてるのか?」
口々に俺に話しかけてくるのは、かつてナイチンゲールとして組んでたメンバー全員だった。
「心配しましたよー!森の奥に居るなんて言われたからどんな事なってるのかとー!」
そう言いながら抱きつこうとしてるのは後輩の瀧澤春夏だ。
見た目は年齢の割に幼く、海外で治療に携わってると八割九分の確率で子供扱いされるのだが、看護師としては超優秀で患者の注射において痛みを感じさせること無く施術したり、医師が必要な器具を予測し事前に渡す事が出来る為オペ看として、有事の際には事に当たる。
性格は天真爛漫で人懐っこく、子供によく好かれる。また、ショートヘアがトレードマークで活発に動き回る事から良く犬扱いされる事もしばしば。あだ名は「忠犬」
「元気そうで相変わらずだなー。春夏。別にホームレスやってる訳じゃないし心配すんな。ところで……お前らが来たってことは……あっちで何かあったんだよな?」
俺がそう聞くと、2人目の女性
本山楓が答えた。
「修哉くんが死んでから、私達で難民達を治療してたんだけど、紛争どころの騒ぎじゃなくなってきて身の危険を感じた所で私達皆、全滅したの。」
そう説明した彼女は俺の一つ上の先輩で同じ師を持つ、俺にとっては姉弟子だ。
彼女は切れ長の目、後ろで纏めたポニーテール、そして凛々しく時に厳しく患者に接する事から初対面の人は怯えがちだが、この性格は患者に舐められないようにする為で普段は大人の女性の様に子供にも大人にも優しい一面を持つ。
医師としての腕前は流石と言うべきか、特に外科の脳神経、消化器、整形は修哉より腕は上である。
因みにあだ名は「女帝」
「ナイチンゲールが全滅か……随分妙だな……全く同じタイミングでこっちに転生してくるなんて。」
俺がそう呟くと3人目の男性
遠藤和也が転生の経緯を話した。
「何でも、紛争地帯の無線を傍受してたら「爆弾の皇帝を落として終わらせる」とか言っていた。なんの事かさっぱりだったが、その無線の2日後か、強烈な青い光が見えたと思ったら、彼女に会ったのさ」
そう話した。
彼は俺の同期で治療における機械の操作のスペシャリストだ。
機械操作だけでなく、担当する医師のクセを見抜きら和也の話を聞いて俺は少しゾッとした。
・爆弾の皇帝
・青い光
この2つで容易に想像できる武器が一つだけある。
「原子力爆弾」通称、原爆だ。
青い光というのは臨界時に発生するチェレンコフ光で間違いないだろう。そして、名前の爆弾の皇帝。
これはかつて、ソ連が核実験で用いられた「爆弾の皇帝」(ツァーリ・ボンバ)と全く同じだ。威力は第二次世界大戦で使われた爆薬全て合わせた物の10倍の威力だ。そんな物が落とされたとあっては、一溜りもない。
「国どころか地球終わるぞそれ……まあ、皆がこっちに来てくれて助かったよ。来週位にかなりの大手術が待ち構えてるから人手が欲しかったんだよ。」
俺は、前世の事を気にかけつつ診療所の現状を話していくと同時に診療所を簡単に案内する事にしたのだった。
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