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夢であっても、

作者: PEN


そいつは、同じクラスの男子(だんし)だった。


彼は両耳にイヤホンを付け、街の大通りを歩いていた。


だから最期まで気づかなかったのだ。


工事のミスによって、頭上から落ちてくる鉄骨の存在に。


そして、彼はそのまま頭から潰され死んだ。


○⚫○⚫○⚫○


そこで私は目を覚ました。


夢だった。


しかし、私の場合はそれを『ただの夢』で済ます訳には行かない。

急いで身支度をすると、私は大通りへと向かった。



10分程走っただろうか、大通り沿()いのビル建設予定地に着いた。


上を見上げると、オレンジ色のクレーンが今日も元気に動いている。

あれを見る度に、どうやってあんな高い所まで持っていったんだろうかと気になってしまう。


その時、聞き慣れた声がした。


近くの曲がり角の方を見ると、そこには夢の中で死んだやつがいた。

だが、夢とは違いイヤホンはしておらず、隣には沢山の友達を連れていた。


(時間帯が違ったか?)


とりあえず私は、彼が通り過ぎるまで顔を伏せてやり過ごそうとした。


しかし、そう上手くはいかなかった。


彼は私を見つけると、邪悪な笑みを浮かべながら声をかけてきた。


「よぉ!まな板!」

彼の声につられて、周りの男達も私の方を見る。


あっという間に囲まれてしまった。


彼らが俗に言う『陽キャ』なら、私は反対側の『陰キャ』だ。


何か悪口を言われているようだが気にしない。私は心の扉を閉めて、自分だけの世界に逃げ込む。



気が付くと男達は消えていた。どうやら泣いている思われたようだ。女の涙が武器とはよく言ったものだ。


○⚫○⚫○⚫○


私はそこで5時間もの間待っていた。


そして、男が1人でやって来た。


今度は先程とは逆の方向から。しかも、今回はイヤホンを付けている。


ビルの上の方を見上げると、クレーンが巨大な鉄骨を持ち上げているところだった。


(間違いない……、今だ。)


再び男を見る。


彼はゆっくりと。しかし、確実に自らの死に場所へと向かってきている。


私がここに来た理由は、彼を助けるためだ。

しかし、ここにきて疑問を抱いてしまった。私の事をいつも馬鹿にし、いじめてくる彼を助ける必要はあるのか、と。



そうこうしてる間にも、彼は死に近づいている。



そして、頭上から『危ない!』という叫び声が聞こえた時。私は思わず駆けだしてしまっていた。


流石に目の前で人が死ぬのを分かっていて、見捨てるような性格はしていなかったようだ。


私は彼の腕を掴むと、その場から離れようと引っ張った。


しかし、微動だにしなかった。


彼は私を睨むと、




「いきなりなんだよ?触んなブスが」




私は彼と一緒に鉄骨に潰され死んでしまった。



○⚫○⚫○⚫○


10年程前から、10代の若者達が100人の内1人の割合で異能力者になるようになった現代。


私は運良くもその1人に選ばれた。


能力は『予知夢(よちむ)


しかし、それは自分や他人の不幸な結末。つまりバットエンドのみを見ることができる能力だった。



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