第3話 面接
黒髪眼鏡の男性と褐色美人に相対している状態だが、不思議と緊張はなかった。
面接が始まって色々聞かれた。
志望動機は勿論。海外へ行くことは家族に知らせているのかとか、まあ主に今の生活を捨てても大丈夫かという確認だった。
そして最後に聞かれた質問が不思議に思った。
「もしあなたの仕事が国造りのアドバイザーだったらどうしますか?」
「国造り?」
流石に国造りをさせたいわけではないだろうが、この質問はこの仕事の何かに繋がっているのだろう。
「そうですね。まずは国の現状把握から始めて、‘‘人‘‘の暮らしを中心に作っていきたいと思います」
「具体的には?」
「その国の状態によりますが、もし食べるのが困るような国なら食料確保を中心に。日本のように食べ物に困らない豊かな国なら生活の質の向上を目指します」
「わかりました。面接は以上となります」
結構無難というか、綺麗ごとと捉えられかねないような答えだったかと不安になったが、今さら変えられないので切り替えることにした。
「本日はありがとうございました」
以上で面接が終わり会社を出る。
褐色美人さんが見送ってくれた。
結果は来週中に来るようで、もし合格しても研修からなのですぐ海外というわけではないようだ。
詳しい仕事内容は採用が決まってからしか伝えられないということだった。
週末にになり後輩との約束を果たすべく、待ち合わせ場所に向かう。
「先輩!」
こちらは白い肌に切りそろえられた前髪が特徴的な和風美人の後輩、戸田 愛実だ。
「お! 久しぶりだな」
「先輩いきなり会社辞めるなんて! 聞いてないですよ!」
「悪い悪い、流石に会社辞めることを言いまわることは出来ないからな」
「個人的に言ってくれてもいいじゃないですか!」
「今回は自分で決断したかったんだ……わかってくれ」
誰かの言葉を聞いて迷うのが嫌だった。辞めると決めたからにはスパッと辞めたかったのだ。
「それズルいです! 何も言えないじゃないですか!」
それでも愛実の腹の虫は治まらないらしく、お店へ入るまで小言を言われ続けた。
「そのあと大変だったらしいですよ?」
「引継ぎはちゃんとしたはずだったけど?」
「噂なんですけど、取引先に失礼なことを言っちゃって」
「それで大変なことになったのか?」
「はい。どうやら先輩の後任の人がやらかしちゃったみたいで」
俺の後任は今年入った新人だったので、引継ぎをしつつ上司にも情報を共有してカバーできるようにしたはずだ。
「係長は何かやってたか?」
「これはその部署の友達の聞いたんですけど、先輩の後任の方一人でせっせか頑張ってたみたいですよ?」
「確かにあいつは仕事は早いけど、ミスも多いからな」
そこの教育やカバーをどうにかさせるための情報共有だったのだが、上司は何もしなかったらしい。
「そういえば、先輩は辞めてから何かやっているんですか?」
「ああ、海外に行こうと思ってな」
「へ?」
愛実の顔が固まってちょっと笑ってしまった。