第19話 戦闘
人生初の戦闘が終わった後少し休憩をもらう。
「どうぞ、お水です」
リーシャさんが水をくれる。
「ありがとうございます」
「初戦闘でお疲れでしょう? 無理はしないで下さいね」
気を使われるのは悪い気はしないが、皆の足を引っ張っているようで申し訳ない。
「ありがとうございます。この難易度くらいは余裕を持って戦えるようになりたいでね」
強くなるに越したことはないが、争いとは無縁の日本人男性にいきなり強くなれというのは無理なのだろう。
他のダンジョンと比べ難易度の低いこのダンジョンで躓いてはいられない。
休憩が終わり、先へ進む。
そこから2回程戦った後にダンさんが声をかけてくる。
「次で最後にしようと思うがどうだ?」
「はい! これ以上のことが起きないのであれば」
「そうだな、他のダンジョンであればモンスター部屋などがあるが」
この人は素人をモンスターの巣窟にも連れていくのだろうか?
話し合いの結果最後の一戦をして帰ることになった。
「それにしても兄ちゃんセンスねえな! ガハハハハ!」
戦いの鈍くささを笑われてしまった。
「野村さん気にしないでくださいね」
リーシャさんが慰めてくれるが、実際雑魚モンスターに余裕のない戦いをしている。
あまり戦闘が得意ではないと聞いていたリーシャさんよりも弱いのだ。
しかしそれは当たり前である。
この世界の人は地球とは比べ物にならないぐらいの身体能力を有しているのだ。
いずれ自分の身体も同じようになれるとは思えないぐらいだ。
「さあ出たぞ!」
最後に現れたのは最初にも倒したゴブリン3体だった。
「1体は任せたぞ」
俺の担当は弱いモンスターとの1対1だ。
「了解です!」
ダンの指示に従い1体のゴブリンと相対する。
一方ダンさんのところの2匹はリリエルさんの弓で瞬殺されていた。
「ギギッ!」
仲間が一瞬でやられ動揺した様子のゴブリン。
このままにらみ合ってたら、逃走されるかもしれないのでこちらから仕掛ける。
「うぉりゃ!」
外から見たらなんとも情けないような声で気合を入れる。
「ギッ!」
ゴブリンも覚悟を決めたのか、こちらに武器を振るってくる。
俺は被弾するのが怖いので、相手の武器であるこん棒を自分の剣に合わせる。
こん棒に切れ込みが入るものの切断はできなさそうだ。
打ち合って鍔迫り合いになったときにこちらの利点でもあるリーチを活かして蹴りを入れる。
「グギャッ!」
態勢を崩したゴブリンは俺の攻撃を受け止めることができず、その小さな体に剣が食い込む。
「やったじゃねえか!」
「ありがとうございます」
ダンさんに褒められるが、まだまだ危なっかしいのが自分でもわかる。
「戻るぞ」
モンスターを倒すとアイテムや素材がドロップするらしいが、ゴブリンからは何も出なかった。
ダンジョンに吸収されるように消えていくゴブリンを尻目にダンジョンの出口へと向かった。




