第17話 穴堀の方法
「穴を掘ることはできますか?」
「なんじゃ? 妾なら余裕じゃよ?」
「アデル様は既に道の整備をしてもらっているので、そちらを優先でお願いします」
俺は井戸を作るために穴を掘る方法を探していた。
「そもそも水には困っておらんぞ?」
「水汲みにかけている時間はどのくらいかわかりますか?」
「わからん!」
即答だった。
「片道一時間、合計二時間かかるんですよ?」
「それが?」
「荷車を使っているとはいえ、それなりの人員と時間がそこに割かれているわけです!」
「ほう」
「その移動をなくすだけでかなり助かると思いませんか?」
「確かにのう。水汲みのあとは動けなくなっておるし」
「なので! 井戸があるのとないのとじゃ村の労働力に差がでるんですよ!」
「わかった! しかし穴を深く掘るんじゃろう?」
「そうなんですよね」
この世界には魔法があるが、これがなかなかに弱い。
一般の魔族では生活を少し便利にするぐらいしか使えない。
つまり、穴を掘るときに道具を使ったほうがマシと言えるほどなのだ。
「お主魔法を覚えてみんか?」
「俺ですか?」
「そうじゃ」
「魔法は人間の方が苦手なんですよね?」
「そうじゃ! だがお主はこの世界で初の異世界人じゃ」
「やってみろと?」
「何事も試してみないとわからんじゃろ?」
「そうですね……じゃあ今日試してみて様子をみましょうか」
「そうじゃな。では夜に妾直々に教えてやろう」
「よろしくお願いします!」
魔王の妹が師匠になってくれるようだ。
これ以上の先生はいないだろうと思える人選だが、アデル様は夜にも魔力を消費している。
「アデルさま、その……」
「ん? 気にするな」
その幼い容姿とは裏腹にアデル様が大きく見えた瞬間だった。
「それでは休憩は終わりじゃ! もうひと頑張りしてくるかの!」
「無理はしないでくださいね!」
「わかっておる!」
強がっているのか、本当に大丈夫なのか俺にはわからない笑顔でアデル様は出て行った。
「俺ももうひと頑張りかな!」
アデル様に負けないように気合を入れて仕事に取り掛かる。
「次は」
次の予定場所に行こうと扉に近づいたら、丁度ノックをされた。
「はい」
返事をするとリーシャさんが入ってきた。
「野村さん迎えに来ました」
「ああ、すみません。もうみなさん集まっていますか?」
「はい。準備ができました」
階級的には完全に俺の方が下なのに、まるで上司にするような対応をされるので、少しむず痒かった。
「では行きましょうか!」
本日最後の仕事をするために、リーシャさんと一緒に部屋を出た。




