第16話 水問題
「他に何かあるんですか?」
「私たちは地球での活動が限られているんですよ」
「活動が限られている?」
「はい。地球に入ると何故か思考能力が落ちるらしく、危険なんです」
「危険?」
「遠くに行ってしまうと帰れなくなるんです……」
「え?」
かなり重症だと思うのだが。
「あの扉から離れれば離れるほど症状が酷くなるらしく、この間大変なことが起こったんですよ?」
「帰れなくなった人が出たんですか?」
そうなったら一大事だ。迎えに行く人も同じ状況になってしまう。
「そうなんです! 迷子がでたんです!」
「迷子……」
軽い言い方に聞こえるが、行方不明と一緒だと思うが。
「でも魔王様が頑張って探してきたんですよ!」
「え! 魔王様が?」
魔族のトップが危険な場所へ単独で行くのが理解できなかった。
「妹さんが……」
「アデル様か……」
喋った感じ頭は良さそうだが、好奇心も旺盛そうだったので、異世界に舞い上がってしまったのだろう。
「それ以来地球への調査はチームを組んだ上で、魔王様の許可が必要になったんですよ」
「へ~。よくパソコンを再現できましたね」
ろくに調査もできない中、よく作れたものだと思った。
「時間はかかりましたし、実際地球のパソコンとは比べられないですよ?」
「性能が悪いんですか?」
「はい。まずインターネットがありません」
「なるほど」
インターネットがないので、記録媒体としての活用になるのだろう。
「それに、他のパソコンにデータを移したりとかもできません」
「え! それじゃあ紛失したら」
「そうです。終わりです」
「使って大丈夫なんですか?」
「この村で実験的に使っているだけなので。それに結局紙に書きますよ?」
この村で試験をして品質向上に繋げようとしているのか。
いずれにしても地球と同じようにはいかないらしい。
「あの、俺みたいな人はどのくらいいますか?」
「野村さん一人です!」
「俺だけ?」
「はい! 何ででしょう、あんなに素敵な広告を出してるのですが」
確か海外勤務と書かれていた。
あんな怪しい広告応募するやつ……はい俺です。
「ははは! いずれにしても人数が集まれば凄い発展しそうですね!」
「はい! 我々もそれを期待しています」
ダンジョンの繁栄だけでなく、この世界の文明レベルを上げることも目的に入っているのか。
「あ! 聞きたいことが他にもありました!」
俺はここに来た本当の目的を果たす。
「何ですか?」
「この村の水の調達はどうしてますか?」
「水ですか、ここから1時間行ったところに川が流れているのでそこからですよ?」
「井戸を作りましょう!」
「井戸?」
俺は水汲みかける労力を減らすために、井戸づくりをすることにした。




