少女失踪事件
今作が初投稿です。
普段物語を書いたり考えたりはしていなかったのですが衝動的に書いてみたくなったので始めました。もしかしたら長くなるかもしれないし、短くなるのかもしれません。しばらくお付き合い頂ければと思います。
…ビシッ!…ビシッ!
薄汚れた壁、薄暗い灯り、汚物の臭気、劣悪さを極めた空間に音が響き渡った。
「ほら!もっと泣き叫んでよ!ねぇ!」
「うっ…うぅ…」
元々は海を連想させる鮮やかな蒼い色をしていた髪は脂と血反吐に汚れ、透き通るような白い肌は見る影もなく赤黒い痣を無数につけていた。拷問は三日三晩に渡って続けられていた。少女は既に意気消沈しており、生きることを諦めていた。
「はーあ、つまらないの。ねぇそこの貴方、もうこの子処分して新しい子連れてきてくれない?」
顔を青ざめさせた従者は、その言葉が自分に向けられた言葉だと認識すると慌てたように少女を抱え部屋の出口に向かった。
「あ、今度調達する子なんだけどタイプは…」
ここはこの世の地獄、ただその部屋の主人にとっては天国そのものだった。主人の楽しそうな声だけが部屋に響き渡る。
*
クワドラ王国
聡明な王により統治されているこの国は活気に満ち溢れていた。産業は発展を続け、市場は人が溢れんばかりだ。娯楽に関してはカジノ、闘技場、娼館等、朝から夜まで飽きさせない全てがそこにはあった。
「退屈だ。」
金がなくなってしまったせいで何もできん。
「アレス!この間貸した金早くかえしやがれ!」
うるさい奴がきやがった。
「金ならねーよバーカ!一昨日来やがれ!」
こういうときはさっさとトンズラするに限る。お前の金は俺の金、俺の金は俺の金だ。俺はアレス、ほんの少しエロエロなとってもすごーい冒険者なのだ。
(しかし金がないのはまずいな…そろそろ仕事しねぇとな…)
「久しぶりにギルドにでも顔を出しに行くか」
ギルドとは所謂冒険者に仕事を斡旋する施設だ。迷子の猫探しから海の主の討伐まで幅広く紹介してくれる。
ギルドに着くといつもの場所で暇そうに葉巻を口にくわえているゴリラが座っている。
「おい!ゴリラ!ボインなお姉さんとエッチをする仕事を紹介しやがれ!」
「そんな仕事があったら俺がやっている…あとゴリラと呼ぶんじゃない」
ポリポリと頭をかきながら応える初老のゴリラ…おっと、名前はマウンテンゴリラだったかマンドリルだったか…
「ゴンザレスだ」
そんなことは大した問題じゃない。
「おい!ないってどういうことだよ!この俺が依頼を引き受けてやろうって言ってるんだぞ!」
「そんなもんがある訳ないだろ…」
なんて使えない奴だ。このギルドも終わりだな。
「じゃあ用はねぇな。さっさと老衰で死んどけゴリラ。」
「あ、待った。そういえば1つあった。」
「それを早く言え!ぶち殺されてえのか!」
腹ただしいゴリラだがエロい依頼の方が優先だ。
「はいはい…しかし別にエッチをする仕事では…」
言い終える前にゴリラが持っていた依頼書を強引に奪い取る。
「どれどれ…」
依頼内容:娘の捜索、依頼主:ウスラ・ゲハ
一人娘のサラが帰ってこないんだ。警備隊にも相談したが不安で夜も眠れない。すぐに見つからないということは国の外に出てしまったのか、攫われてしまったのか…お願いだ!報酬は弾む!娘を見つけてくれ!娘の写真を同封している。捜索に役立ててくれ。
ほう、写真があるのか。
「なっ!」
か、可愛い…光り輝く金色の髪、大きく形の良い乳、宝石を連想させる綺麗な瞳、紛れもなく美少女だ。
「うおおお!この依頼は俺が受ける!」
そしてこの子を見つけ出して惚れさせてエロいことをさせてもらう…完璧な作戦だ。
「はぁ…じゃあ依頼主に連絡しておくから詳しい話はそっちで聞いてくれ」
ゴリラが何か言っているが聞こえねぇ。さっさとサラちゃんと子作りに励むのだ。
「そうと決まればまずは聞き込みだ!」
情報が集まる場所の定番と言えば酒場だ。
バーンと音をたてて酒場に入り、カウンターの席につく。
「おう!ハゲオヤジ!酒だ!」
「…」
返事がない。どうなってんだ。
「酒を出しやがれ!」
「あ…ああ、すぐに出すから待っててくれ」
店主がぼさっとしてやがるとはどうなってんだ。
「ほら、持ってきたぞ」
ゴトっと音をたてて置かれたそれを一気に口にぶち込んだ。
「おえええええ!なんじゃこりゃ!クソまずいぞ!」
飲めたもんじゃない。消費期限を3年過ぎたクソジジイの小便みたいな味がしやがる。
「ああ、間違えてうちの犬の小便を出してしまった…」
「てめぇ殺されてぇのか!」
怒りが頂点に達し、腰の剣を引き抜き首筋目掛けて振りぬこうとすると。
「ちょっと待ってくれえ!」
ハゲオヤジが命乞いを始めた。
「娘が…娘が帰って来ないんだ…」
「はぁ?それが今の状況と何の関係があるんだ…ほあああ!?」
こいつまさか依頼主か!?
「おい!その娘の名前は!?」
「…グスン…サラだが…」
ビンゴだ。危ない危ない、将来の義理の親父をぶち殺しちまうところだったぜ。
「あーあー!お義父さん!立って下さい!娘さんは僕が責任を持って見つけ出して見せます!」
「ほ、本当かい!?」
目から涙を流しながらこちらを伺うハゲ。
「もちろんですとも!ささっ、今回の件について詳しく聞かせて下さい!」
「うぅ…なんて良い人なんだ…」
落ち着きを取り戻したハゲはゆっくりと語りだした。
「サラがいなくなったのは1週間前だ…」
ーーー
「お父さん!学校行ってくるね!」
「おお、気をつけていくんだぞ」
その日はいつも通りの朝だった。サラを見送り、自分も酒場の準備をしていた。
(ふふふ、サラも大きくなったなぁ…)
亡くなった妻であるツヤによく似てきた。妻に先立たれた私にとってサラは何物にも代えがたい宝物だった。サラを立派な大人にすることが私の生きる意味なのだ。
「さて!準備も終わったし、あとは夜を待つだけだ」
そして日が沈み、辺りが暗くなってきたのだが…
(やけに今日は帰ってくるのが遅いなぁ…)
いつもは日が沈む前には学校から帰ってきて手伝いをしてくれるサラがまだ帰ってこないのだ。
幸いその日は客も少なく1人で回せる程度の忙しさだったのだがサラは閉店前になっても姿を見せない。心配になり、早めに店を閉めて街を走った。しかし、どこにも見当たらない。日が昇り始めたところで一旦家に戻ったが、やはりサラの姿はどこにもなかった。
ーーー
「そのあとすぐに警備隊に捜索願を出して、それでも不安だったからギルドにも依頼を出したという訳だ」
「ふむ…」
何の手掛かりにもならねぇな…
「他に何か気になることはないのか?」
「そうだな…あぁ、そういえばクワドラ王国領内のはずれの方に盗賊団のアジトがあると噂がある!もしかすると奴らが…」
「そこだ!」
俺の灰色の脳細胞がありとあらゆる計算をした上でそこにサラちゃんがいると言っている!
「わははは!サラちゃん!今行くぞ!」
善は急げだ。すぐに出発するぞ。
「相当危険な場所だと思うけど本当に行くのかい?」
ハゲが何か言っているが無視だ。
「出発進行!」
俺はすぐに街を飛び出した。
*
盗賊団のアジトは思いのほかすぐに見つかった。町外れの林をぶらぶら歩いていると明らかに怪しい洞穴があり、その前に御丁寧にも門番が立っているのだ。
(こんなのアジトですよって言っているようなものだ)
顔をローブで覆っていて顔はよく分からないが小柄で弱そうだ。(不意打ちで叩き切ってやるぜ)
すぐさま木の影に隠れながら門番の近くに移動し切りかかった。
「うおおお!アレスファイヤースラッシュ!」
「ッ!?」
門番が吹っ飛んだ。頭に叩き込んだのだから恐らく即死だろう。
「うっ…かはっ…なんなんだ…」
生きてやがる…どんな石頭なんだよこいつ。
「ん?」
門番の手には一振りのナイフが握られていた。なるほどな、咄嗟に俺の斬撃が直撃する前にナイフでガードした訳か。しかし、衝撃が伝わったせいかダメージは大きいようだ。
「よーし!今のうちにトドメだ!」
「ま、待って…殺さないで…」
命乞いをしてきたが知ったことではない、男は皆殺しだ。
「わははは!アレスヴィクトリースラッ…ん?お前もしかして女か?」
ローブが取れかけて顔が少し見える。それを引っ張って強引に引き剥がした。するとショートカットで、肌は褐色の少し中性的な顔立ちをした綺麗な美少女のお出ましだ。
「んほほほ!中々の美少女じゃないか!それなら問答無用でセックスだ!」
「え?え?いやっ!」
「わははは!まずはおっぱいだ!んほほほ!柔らかくて良い気持ち!」
「きゃあああ!やめて!離して!」
抵抗してくるがダメージを受けている女の力などたかが知れている。
「わははは!サラちゃんとエッチをする前のオードブルとして頂きだぜ!」
「いやーーーー!」
「わははは!そんなに喜ぶな!」
林にアレスと褐色美少女の声だけが響き渡った。