異世界召喚初日から窃盗事件
初の学校をサボるという行いをした俺は公園のベンチで眠ってしまい目を覚めると異世界に召喚されてしまっていた。
しかし、召喚されたと言っても俺は失敗作らしく特別な力を持たない平凡なただの人間のまま異世界に召喚されたらしく、俺は理由もそこそこで俺を召喚した張本人であろう王様みたいな老人に城を追い出され途方に暮れていた。
「はぁ~・・これからどうしたらいいんだ。」
城から追い出された俺はあれから大きな門を何度も叩きもう一度話をしてもらうように大声をあげてみたが何の反応も見せなかった。
それでもしつこく門を叩いていると城壁から数名の兵士が出てきて俺に向けて弓矢を撃ってきた。
流石に危険を感じた俺はその場から離れ城から少し離れた場所にあった街でブラブラと歩いていた。
そこで俺は街の風景を見て改めてここが異世界であるのだと再認識した。
街の人達は俺が知ってる服装とは違い本当に御伽噺に出てくるようなボロボロの服を身に付けていた。
お店も色々なものが売られており、見た事もない野菜や魚、宝石に武器店、さらに装備店やアイテム店といったファンタジーゲームに出てくるようなお店が沢山存在していたのだ。
「・・・」
そうやって色々な店を外から見ていた時に気が付いた。 俺が歩く道の通りすがりでチラチラッと俺の事を街の人達が見たりヒソヒソを話したりしていたのだ。
今の俺の服装は学校のブレザー。 この世界からしたら俺の服装はおかしな服を着た人に見えているのだろう。 段々とその事が恥ずかしくなってきたが、服を調達などどうすればいいのか・・・。
「あっ。 そういえば・・・」
城を追い出される前に魔女と呼ばれる人が俺のポケットに何かを入れていたのを思い出した。
ポケットからそれを取り出すと袋の中からコインのような物がジャラジャラと出て来た。
「これは・・お金・・だよな?」
この世界のお金らしきコインが出て来たことにも驚いたが、俺が今一番驚いたのはコインが出てくる量だ。 袋は俺のポケットに折りたたんで入れられた状態だった。 その袋を逆さにすれば次から次へとコインが出てくるのだ。
俺は手のひらに納めきれなくなった所でコインを袋の中に戻して咄嗟に周りを警戒した。
理由は分からないがこの袋、まるであの有名なアニメのロボットが持っているポケットと同じ役割を持っているようだ。
俺は足りない頭をフル回転に働かせ考えた結果、丁度目の前に見えた服屋らしき所で一式の服を買う事にした。
◆◆◆
「毎度ありがとうございました! またのお越しをお待ちしております!」
店の店員さんがハキハキとした声で服を買った俺に深々と頭を下げた。 俺はその様子を何度も頭をペコペコと下げながらその店を後にした。
さて、俺が買った服だがこの辺りでは誰もが着るラフな格好を選んでもらった。 上下服とも長袖の普通の服と動きやすい靴、そして鞄を肩紐型の鞄を1つ購入した。
これで何とか周りから物珍しそうな目で見られる事はないだろう。
「それにしてもこの袋。」
鞄の中に片付けている四次元袋をチラッと視線に入れる。 一体どれくらいのコインが入っているのかまだ分からないが普通に考えればこの袋は絶対に超貴重なものだ。 容量も分からないがこんなものが一般の人が持っている筈がない。
それなら何故、あの魔女は俺にこんな貴重な物をお詫びとはいえ渡してくれたのだろうか。
俺を勝手に召喚しといて用無しだから城を追い出した連中の一味にしては義理人情がかなりあるような・・・。
「・・・まっ。 いいか。 とにかく向こうもなんだかんだと嫌な奴ばかりじゃないって事でしょ。」
もう関わりを持たない人の事などどうでもいい。 貰えるなら貰って置く事も時には人として気を遣う方法の一つである。
俺は気を取り直して自分が元いた世界に帰る方法を見つける事に集中しようと意識を切り替えたその時だった。
ドンッと後ろから何かがぶつかって来た。 後ろを振り返ると俺の背中半分しかない子供が俺にぶつかって鞄をあさっているのだ。
「ちょっ! オイッ!」
すぐに鞄を取り上げ子供から距離をとろうとした瞬間、子供は俺の顔に何かを投げつけて来た。
「ぐわっ! くさっ! これ腐った卵か!?」
子供は狙ったのか俺の目に卵を投げつけ俺は目を開ける事ができなかった。
その間に子供は俺の目の前から姿を消していた。
「うわ~くさ~。 ペッ! ペッ! たっく、一体なんだったんだ? ・・・ん?」
子供の悪戯にしてはやけに手慣れているというか何か狙っていたかのような動きに見えたのは俺の勘違いではない事は鞄の中を見て瞬時に理解した。
その意味は、鞄の中に入れていた四次元袋が無くなっていたからだ。
「やられたァァアアアアアア!!??」
◆◆◆
グギュルルルルルㇽㇽㇽㇽ――――
俺の腹が大きなサイレン警報を発生している。 それもその筈、コインが沢山出てくる不思議な袋を奪われて早半日、空は暗くなり街は一日の疲れを癒す労働者たちが飲み食い騒ぎで賑わっていた。 街中にいたらそれこそ周りから香ばしい匂いが漂い俺の腹はさらに大きなサイレンを発生させる。
「俺このまま異世界に来て飢え死にするんじゃないよな? 笑えないんですけど・・・」
兎に角このまま誘惑が広がる街にいてはダメだ。 そう判断した俺は誰も通っていない所謂路地裏へと足を運んだ。
「あぁ・・俺何してるんだろ。」
元いた世界では特に何もない人生で、一生に一度もない異世界召喚とかいうイレギュラーに巻き込まれたのに結局何もできていない。
しかも異世界で唯一のお助けアイテムまで奪われて今では飢え死にしそうな勢いだ。 俺はつくづく何もできない普通の人間なのだと思い知らされる。
フッと空を見た。 元いた世界では心地の良い風が流れるいい天気の光景だったが、今俺が見える空は暗くて何も見えない。 それぐらい何だか虚しい気持ちになる空だった。
そんな暗い気持ちを持っていると不幸が訪れるとよく言われるが、まるで神様が見ていたかのように目の前で不幸が訪れた。
ドカンッと建物のドアから勢いよく何かが外に出て来た。
「イッ痛ぅ~~~~~!? おい! 何すんだよ!!」
(!? アイツは!)
ドアから転がるように勢いよく飛び出してきたのは昼間俺の四次元袋を奪った子供だった。
俺はすぐに子供に駆けつけようとしたが何やら不穏な雰囲気がだった為、瞬時に目の前にゴミ置き場に身を隠して様子を見る事にした。
すると子供が飛び出て来た建物から見た目がかなり不衛生なデブのオッサンがフラフラとした足取りで出て来た。
「ヒック! あ~? なに? 文句あんのかお前?」
「文句しかねぇよクソ野郎! それは俺が見つけて来たもんだ! さっさと返せ!!」
子供が怒鳴りながら指を指したのはオッサンが持っている一枚の袋。
(四次元袋!?)
しかしオッサンは子供の怒鳴りなど気にせず片手で持っていた酒瓶を溢しながら飲む。
「あ~? ヒック! 何言ってやがるんだよ~。 俺はお前の面倒を見てるいわば保護者だ。 ヒック! 保護者が子供の物を預かってなぁ~にが悪いんだよ! 言ってみろ! ・・・ヒック!」
オッサンは怒鳴りながらも片手に持った酒瓶を飲み干し空っぽになった事を理解すると舌打ちをして俺が隠れているゴミ置き場に放り投げた。
「何が保護者だ! 俺が仕事で稼いだ金も何もかも全部お前が取り上げてんだろうが! それを保護者ってよく言えたもんだなオッサン!!」
「・・・おい。 口の聞き方には気おつけろよガキが!! 誰のおかげで飢え死にせずに入れるとおもってんだ! アァ?!」
(!?)
オッサンは子供の顔を容赦なく殴りつけた。
「飢え死にしそうだったお前を誰が助けてやったと思ってんだ! アァ! この恩知らずが! お前は俺の為に働いて俺の為に人生を捧げればいいんだよ!!」
何度も、何度も容赦なく子供に殴りつけるオッサンは体力が切れたのか肩で息をしながら殴りつけるのを止めた。
「ハァ・・ハァ・・・ハハハッ。 おいクソガキ。 これで終わると思うなよ? 恩を仇で返すような悪いガキはお仕置きをしなくちゃなぁ~。」
「!? や、やめろ! それだけはやめてくれ!!」
不気味な笑みを浮かべるオッサンは涙目で抵抗する子供の腕を逃げられないように掴む。
「ギャハハ! この前のお仕置きは確か背中だったよなァ~? それじゃあ今日は顔にでもやってみるかァ?」
オッサンは子供を掴んでる方とは逆の手の平を広げる。 そこにはインクか何かで書かれた丸い円が描かれていた。
「五元魔法・一の術。 炎魔法!」
そういうと手の平から火の玉がゆっくりと燃え上がるように現れた。
「ギャアハハハ! 喜べよガキ! 俺様がお前の顔をもっといい顔にしてやるからよォ~!」
「~~~~~~~ッ!!」
オッサンは笑いながら手の平の火の玉を怯えながらも覚悟を決めたように目を瞑っている子供に当てようとした。
―――が、火の玉が子供の顔に当たろうとしたその時、先程オッサンが投げ捨てた酒瓶がオッサンの頭を直撃した。
「ふぁ?」
「・・・・え?」
かなり強力だったのかオッサンはその場に倒れ込み、子供は目を瞑っていたせいで何があったのか現状を把握しきれていなかった。
そんな状況の現場に俺は全速力で走り込み、子供を抱えてその場から走り去った。
「ちょっ! あんたは昼間の!!」
盗んだ本人は俺の顔を覚えていたらしくすぐにその場から逃げようとしたが、俺は自分が持てる限りの力で子供の抵抗を防いだ。
「逃げるなバカ! とりあえずあの場からできるだけ離れるぞ!」
「な、なんなんだよあんた! 俺を連れて何しようってんだ! 昼間盗んだもんなら今持ってないぞ!」
「知っとるわ!」
「ハァ?!」
子供はさらに疑心暗鬼になり暴れるが俺が否が応でも逃がさないように抱きかかえていた為か諦めて大人しくなった。
そしてその夜。 俺は何処まで逃げれば安全圏なのか分からかったから、とりあえず1人の子供を抱きかかえながら走り続けた。