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異世界人生四苦八苦  作者: yappoi
6/7

第6話 スキル

ソラはバケツに入っている石ころを眺め、何かを決心した様子だ。


「……打製石器、作るか!!」


うん、やっぱり刃物必要だわ。

そろそろ上裸生活から抜け出したいし、

はやく美味しいご飯食べたいし。

それに、なによりもめっちゃ暇なんだよ。

うん、これが一番の要因だね。

だってさ、異世界生活って結構暇よ?

布団とかないから、寝ようと思っても眠たくないと眠れないし。電気やスマホもないから暇を潰そうと思っても潰れないし。

憂さ晴らし程度にやってた水切りも飽きてきたしね。

そろそろ建設的な事をやってかないといけないと思うんだよ。うん。

幸い時間はたっぷりあるし、片手間程度に毎日やってればいつかはいい感じの出来るでしょ。


ま、そうと決まったら善は急げだ。

まずはいい感じの石ころ探しに行くかぁ~


□□□


「うーん、なんか、こっちのがいいのかな……」


俺は石ころ探しに近所の川に来ていた。

この川は、俺の異世界生活とは切っても離せないぐらい縁がある、思い出?の場所だ。

実は、今の主な水分供給地点である地底湖を見つけるまでは、この川を拠点としていた。 誰も飯を恵んでくれない日々で、何度もこの川の水をお腹いっぱいまで飲んで空腹を紛らわし、人が多くいそうな方へと川沿いを歩いてきたものだ。


「おっ、これとか良さそう。いい感じに黒光りしてるし」


なんか黒曜石っぽいのを見つけたのでバケツに収納。他にも紅色の石や蒼色の石、他にもスタンダードな灰色の石やめっちゃ尖ってる石など、多種多様な石を見つけた。

もう十分過ぎるほど集めたし、そろそろ拠点に戻るとしよう。


そう思い、拠点へと帰る俺だったが、道中気になるものがいたので歩みを止めた。

フワッフワの白い毛、特徴的な長い耳、キュートな出で立ち。


「あれは……ウサギか?」


元の世界では動物園や牧場なんかで何度も見たが、この世界では初めて見る。

そもそも、今まで俺が遭遇してきたモンスターは巨大イノシシとメチャ強ハリネズミの2種類だけ。あんな狩りやすそうな獲物がいたなんて知らなかった。イノシシと違ってめっちゃでかくもないし、ハリネズミのように殺傷能力が高そうでもない。

ほんっとーに何の変哲もないただのウサギである。


俺はウサギに気づかれないよう、そっとバケツの中に手を伸ばし、手頃な石ころを掴む。

音を立てないよう慎重に射程距離まで近づき、ウサギ目掛けて思いっきりぶん投げた。


「……は?」


ウサギはちらっとこちらの方を振り向いたが、すぐにどこかへ逃げて行ってしまった。

結果から言うと、投げた石ころはウサギには当たらなかった。いや、正確には当たったはずなのだが、石ころがウサギの胴体をすり抜けたのだ。


ただ、俺が驚いたのはその事じゃない。

いや、勿論すり抜けた事に驚いてはいるが、そんな事どうでも良くなるくらい衝撃的な事がおきていたのだ。

俺はあの兎に石ころを投げたんだが、なんか、いつもと勢いが全然違かった。

石ころには青いオーラのようなものが付与されてたし、投げた石ころも兎の背後にあった木の幹に突き刺さっていた。

……俺は勿論その時思ったよ、

『あれあれ? 来ちゃったんじゃない? 俺のチートスキルってこれなんじゃない?』と。


いやだってそうでしょ!

異世界転移と言えばチートスキル!

からの異世界無双でやりたい放題!

ゆくゆくは異世界チーレム!

というのが王道テンプレのはずでしょ?


それに対して俺の場合、

チートスキル0!

異世界無双どころか物乞いの毎日!

チーレムどころか女の人に会ってすらない!

という三拍子。異世界転移させられたというのになんと不遇なのだろうか。

そろそろチートスキルの1つや2つ貰ってもいいだろ?


「……まぁまぁまぁまぁ、まずは拠点に帰るか」


俺は高鳴る胸を抑えながら、拠点へと戻った。


「さて…… 試してみますか!」


本来の目的である石器作りそっちのけで、まずは先程のチートスキル? の確認をすることに決めた。


手頃な石ころを1つ掴み、地底湖の対岸の壁目掛けて思いっきりぶん投げた。

放たれた石ころは青いオーラを纏いながら勢いよく飛んでいく。

数瞬後、石ころは俺が狙った場所に突き刺さっていた。

俺のいる場所から俺が狙った場所まではそこそこの距離があるにも関わらず、石ころは全く高度も下がらず一直線に飛んでいたことから、青いオーラが効果をもたらしているのは間違いないだろう。


「おぉ…… これはきてるな……」


新たな力を得たことに感嘆の声が漏れる。

この力があれば、もっと戦略が広がるし、この世界で生き抜く希望も見えてくる。


「んー、でも、これはチートスキルではないなぁ…… 多分、一般的に取れるスキル……かな?」


俺は結構前から気づいていた、これがチートスキルでは無いということに。

というのも、このスキルが現れた時は嬉しさのあまりチートスキルだチートスキルだと騒いでいたが、冷静に考えればこの程度のものがチートスキルなわけが無い。

それに、昔襲ってきた盗賊達も、武器を使う際、武器に青いオーラが纏っているのを確認している。そのため、多分これも普通のスキルなんだろう。多分……投擲(とうてき)スキルかな。


それにしても、なんであのタイミングでスキルを得たんだろ? 今までだって何回も石ころ投げてきたし、何か特別な投げ方をした訳でもない。……通算投擲回数か? いや、そんなに投げた覚えがないし、多分キリのいい数字にもなってない。うーん、だとすると……


「あ、『投擲による討伐』をしたからか?」


……うん、多分それだな。

最初に殺したイノシシは最終的には素手でボコボコにして殺したのに対し、確かに昨日殺したイノシシのトドメは投擲によるものだった。おそらく、それが取得条件だったんだろう。


「あ、そういやこのスキルって伸ばせるのかな? 取得するタイプってことは伸ばせそうな感じはするけど……」


ゲームで出てくるスキルは、大まかに2つあると俺は思っている。

1つは完全取得型。スキル自体にレベルアップ要素などなく、強くなるためには強いスキルを得るのが最も手っ取り早い制度である。

こちらの方は重課金勢にならないとランカーなどには名を挙げれず、無課金にはきつい仕様となっている事が大半だ。

2つ目は育成型である。スキルが使用回数などによってレベルアップするパターンである。熟練度が採用される場合もあるが、この場合はどちらも使い続けることによって強化されるので、必ずしも重課金勢が強くなるパターンでは無い。


俺が今望んでるのは勿論後者だ。前者だった場合、強いスキルをとるには難関な条件をクリアする必要があるのだろうし、そもそも潜在的なものに由来するという結果すらある。

普通のチート小説なら神に愛されてるだの、異世界転移したものには~だのご都合主義を展開してチートスキルを初めから保持していたり、潜在的に全てのスキルが入手可能とかになってるのだろうが、そんな展開は俺にはない。むしろ神に嫌われてる感すらあるのだ、前者だったらもう打つ手がない。

それに比べて後者ならどうだろう?

使えば使うほど強くなるスキルなら、時間さえかければ一定の強さにはなれる。

それに、今の俺はメシを借り終えたらあとはすることが無い。まぁつまりは、スキル上げの時間はたんとあるという事だ。


「……んまぁ、まずは打製石器作るかぁ」


これは考えたって答えが出ない問題だし、今は刃物の方が欲しい。

スキルの方はおいおい考えてくとして、まずは打製石器制作の方に移ろう。



打製石器とは、呼んで字のごとく石を打ち砕いて作った石器の事である。古くは旧石器時代から使用され、金属器が使われるまで人類のメインウェポンとして使われてきていた。

制作方法は至ってシンプル、石ころ同士を打ち合わせて砕いてくだけ。

まぁ、思った通りの形に砕くのはかなりの技術が必要なのだが。


「……こんな感じかな?」


とりあえずやってみたが、出来上がったものはお粗末の一言につきる。

思った通りの場所を削ることが出来ず、鋭さもないし、全体的に小さい。削ったというよりかは、壊れたといった方が正しい。


「……先は長いかな」


とりあえず時間はたっぷりあるんだ、スキルの考察でもしながら気長に打ち続けていこうか。


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