表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風花  作者:
1/112

Prologue

Prologue




「わかった。じゃあ、別れて」

「……は?」



学校から程よい距離にあるいきつけのカフェに、俺は授業が終わった放課後、一年付き合った彼女を連れ出し大切な話しをした。

それは、俺達の今後の境遇を変える大切な話し。


その話しをした直後、彼女はそう言葉を返し…

その予想すらしなかった言葉に、俺は思わず間抜けな声を上げる。



「だから、別れてって言ってるの」

「お、おい!?なんでそうなる…」

「だって転校するんでしょ?」



狼狽する俺に、彼女は当然でしょ、と言わんばかりの表情で答えた。



――転校。

親父の仕事の都合で、俺達親子は急遽、長年住み続けてきたこの土地を離れることになった。


急に決まったそのことに、不満はあるが、別に嫌ではなかった。

親父の仕事の事は理解しているつもりだし、なにより幼い頃に死んだ母親に変わり、男手一つで今日まで育ててくれた親父に感謝しているし、尊敬している。


そんな親父に俺の我が儘で余計な心配と、余計な経済的負担をかけたくなかった。


だから俺は引っ越すことに同意し、そのむねを彼女に伝えたのだけど…


なぜそれが別れることに繋がるのか、意味がわからなかった。

俺はそんなつもりで言ったのではないのだ。



「俺は…」

「紡がどう思ってるのか知らないけどさ、私、遠恋とか無理だから。それに近くにいないなら付き合ってる意味ないでしょ?だから引っ越しするなら別れて」

「………」



呆然とする俺に、的確かつ利己的な台詞を告げる彼女。



…この瞬間理解した。

俺はこいつにとって“都合のいい男の一人”でしかなかったことに。



「それじゃ、そういうことだから。さよなら」



初めて、一年付き合ってきて初めてかいま見た彼女の本心、彼女の本質に言葉を失っていると、彼女はそう会話を一方的に締め括り、飲んでいたドリンクの料金を払うことなく、店を足早に出て行った。


その後ろ姿を呆然と見送りながら、俺は悟った。


呆気なく、本当に呆気なく、俺達の、いや、俺、“草部紡くさべ つむぐ”の“恋愛ごっこ”は終わりを告げたんだと……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ