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明智小五郎(あけちしょうごろう)の事件簿3  作者: 鮫田鎮元斎
Part2 本物が出てきました
9/13

9 本物っぽいのが出てきやがった

○○○

二年前――


「はぁ……」

「どうしたの? そんなため息ついて」

 

 私は無数の申込書を放り捨てた。


「この間さ、うちのテナントいなくなって新しいとこ募集してたでしょ? その結果よ!」


 巨大な氷で彫刻を作っていた梓はその中の一枚を見て言う。


「へぇ……超能力研究所? 面白そうじゃない」

「いやよ! そんな怪しいところ! 絶対警察に捜索されちゃうでょ!?」

「仕方ないよ、家賃高いんだからさ。値下げしてみたら?」

「えー……うちは都内の一等地に建ってるのよ? とっても損する気がする」

「だからって、こんなご時世に、わざわざ高い家賃払ってまでいい場所住む人いると思うの? なんなら私も家賃払うし」

「だめよ。友達からお金は取りたくないし」

 

 ガスッ! と氷の彫刻にアイスピックが突き刺さる。

 怒ってる。絶対に怒ってるんだ。


「申し訳ないのよ、タダでこんないいとこ住ませてもらって。少しくらいお礼させてよ」

「でも……お礼って言っても」

「……ここはどう? “明知探偵事務所” 言い値で借りるって言ってるし、交渉したげようか?」
















 ――目が覚めた。

 ずいぶんと懐かしい夢だ。あの時、梓が発掘していなければ、私たちは出会っていなかった。

 それでよかったのかな? もし私と出会ってなかったら、あいつは今も高校に通っていたんじゃなかろうか。だって、あいつが探偵を名乗るようになったのって、私のせいだし。

 私があの事件に巻き込まれたから、あいつの人生を狂わせちゃったんだし……。


















○○○


 落ち着こう。落ち着くんだ……。

 飛行機の事故率は0.0009%、400年近く乗っていて1回は事故にあう計算。

 普通に考えれば、大船に乗った気持ちでいればいい。言うならば世界で一番安全な乗り物なのだから。

 が、俺の強運を考えるとそうでもないかもしれない。

 偶然外出した時、殺人事件に遭遇する確率は? 当然飛行機事故にあうよりも低い確率だ。

 乗り合わせている皆様方、事故にあってしまったら申し訳ありません……。


『まもなく離陸の準備に入ります。今一度シートベルトの着用をご確認ください』


 うっ動いた。

 滑走路を動き、所定の位置へ動いた。

 そして、体に強い圧迫感が襲う。




 ……飛んだ。田園地帯が窓の外に見える。

 離陸は無事に済んだか……。

 結構轟音がするもんだな。気圧と音で耳が痛い。

 って結構上下運動するもんだな。大丈夫なのか?


 




 ――――爆発音がした!

 やっぱ事故ったんだ! なんで俺はこういう運は強いんだ!?

 急降下の影響で上から酸素マスクが降ってくる。俺は慌ててそれを装着する。

 救命胴衣は座席の下だ。

 頼む……何とか持ちこたえてくれっ!

 しかし、その思いが届くことはなかった。





――――――――完―――――――― 

















「――――んがっ」


 目が覚めた。なんだ夢オチか。外をみれば、無事滑走路を走っている。

 あっという間だったな。一瞬で着いた。

 さーて、こっからどうしようか。なんも考えてないし。

 空港付近には何もなかった。

 確かお屋敷の住所は――


「君が明智 小五郎しょうごろうさんだね」


 だとすると、電車に乗って市街地へ行かないといけないから。


「ちょ……無視しないでくれるかな?」


 やべっもう時間じゃねぇか。急がなきゃ。


「待ちたまえっ!」

「あん?」


 なんだこいつ。いいとこのボンボンみたいなくせに、俺に一体何の用だってんだ。

 この電車逃したら次まで時間があるというのに……道聞くならほかの人にしてくれ。


「噂通りの、嫌な性格だね。そんなに僕と話したくないというのかな?」

「あいにく、知らない人についていっちゃいけないって、小学校の先生に教わったもんでね。誰だお前は?」

「失礼した。僕の名前は明智 小太郎(こたろう)だ。どうだい、僕と話さないか?」


 ほーん。明智、ねぇ……。

 少し興味がわいたが、あいにくと時間が――っ逃しちまったぜ。許せん。


「次の電車が来るまでなら、いいぜ」

「そんなこと言わず、ゆっくりと語り合おうじゃないか……なんなら、君の行きたい場所に送って行ってあげよう」


 なるほどな、完全に初対面ってわけでもなさそうだ……。少なくとも、あちら側からしたら。

 それに、あいつの名字。

 俺の読みが正しけりゃ、ありうる。

 

「へぇ……もし、お前が俺を間違えた場所に連れて行ってしまったら、どう責任とってくれるんだ?」

「僕の推理が間違っている可能性は万に一つもないが、君の望みを一つかなえてやろうじゃないか」

「乗った。今の言葉忘れるんじゃねぇぞ?」


 さーて、お手並み拝見といきましょうか。

 かの名探偵、明智 小五郎(こごろう)の子孫の推理力、見せてもらおうじゃないの。


















 普通のおベンツ様に乗っけてもらえるかと思ったら、リムジンだった。金持ちってすごい(小並)


「僕は、かの明智 小五郎こごろうの子孫なんだ。昔から、代々探偵業をやっているんだ」


 うん、知ってた。


「だから、君の求めていることは容易に推理できる。一つ一つ順を追って説明しよう」


 はい、出たよ。探偵(笑)の長々しい推理。正直聞く気はないし、寝るか。


「まず君の服装。あまりに貧相で、手荷物も少ない。つまり、ここへ来たのは急な事であったと、容易にわかる。ここで疑問なのが、なぜ東京に住んでいる君がこんなところに急に来たのか? ということ。一番考えられることとして、誰かを追ってきた、と考えられるね。そうなってくると――」

「随分おしゃべりなんだな。悪いが10文字以内で簡潔に説明しやがれ」

「薫さんを追ってきた。句読点を含めても10文字だよ」


 あーあ、来るんじゃなかった。ていうかこいつに出くわさなきゃよかった。

 全部読めてしまった。こいつと、薫の関係が。

 早い話が、許嫁の類。家同士の縁談。

 だから、こいつは俺のことをよく知っているんだ。薫と一緒にいた異性だから。


「君が来たがっていたところは、ここだろう?」


 目もくらむような大豪邸の前でリムジンは止まる。


「ようこそ。()()()明智家へ」

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