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クローズド  作者: 三笠ことなり
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久しぶりに書いた物語なので今まで以上におかしなところがあると思いますがぜひ読んでください。

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「……ん?」

 ここは、どこだ。

「あ、目が覚めました?」

 右のほうから女の子の声がした。声の方向に顔を向ける。

 そこにはどこかで見たことのあるような制服を着た女の子がいた。

「……君は誰? ううん、そうじゃない、ここはどこ?」

「わからないです。私もさっき目が覚めたところなので。」

 少女がそう答えたため、僕は改めて周りを見渡した。

 今僕と少女がいるのは六畳ほどの狭い部屋である。

 まぶしい。

 一番初めに抱いた感想がそれだった。

 床、壁、天井のすべてが白く塗りつぶされており、不愉快な機械音がかすかに聞こえる狭い部屋。気温は暑くもなく寒くもない、過ごしやすい部屋だった。

 扉はどこにも見当たらない。

「出口は?」

「私は見つけられなかったです。」

「……落ち着け、落ち着け僕。」

 ふー、と僕は息を吐き気持ちを切り替え、無理やり笑顔を作る。

 よくわからない状況や詰んでる状況でこそ笑顔。僕の信条である。

「まずは自己紹介をしようよ。僕は有宮、桜塚高校の二年生。きみは?」

「ええ、桜塚高校なんですか!私そこの体育科落ちたんですよね。だから私立のミヤ高に通ってます、一年生です!」

 ミヤ高。スポーツに力を入れている、どの競技でもたいてい強豪だといわれる高校。正式名称は私立宮本高校であり、僕の通う桜塚高校から自転車でギリギリ行けなくはない程度の距離にある近隣の高校である。

「一般入試で入ったの?」

「いえ、バレーボールの推薦ですね。桜塚の体育科と併願して受けた結果本命撃沈ってわけです。」

 ミヤ高のバレーボール部と言えば全国でも有名なはずである。そこの推薦枠ってことはこの子相当運動能力が高いんじゃないか……?

「ミヤ高のバレー部に推薦で入れるほどの女の子がなんでうちの体育科に落ちたのかのほうが気になるけどね。」

「あー、それ は学力か面接だと思います……」

「なるほどね……あ、名前聞いてもいい?」

「古川アキです。有宮さんは名前はなんていうんですか?」

「ショウ。有宮ショウ。よろしくね。で、さっそくなんだけどここに心当たりは?」

「それが……記憶があいまいで……部活が終わったあと友達と家に帰ってる途中までの記憶はあるんですけどそこからよく覚えていないんですよ。」

「ちなみにそれは何時くらいか覚えてる?」

「部活終わりなんで、八時半とか九時ごろだとおもいます。」

 僕も自身の記憶をたどってみる。

 晩飯は食べた記憶がある。母親が仕事でおらず、兄貴はとうに家を出ているため、家には確か僕一人だった。

「僕もそのくらいの時間から記憶がない、な。ソファに寝っ転がっていたところで記憶が途切れてる。」

「じゃあほぼ同時刻にここに連れてこられたんですかね。」

 これでアキが制服な理由も納得がいった。僕もいつもの部屋着を着ている。

「さて、誰かが僕たちをここに連れてきた、と言ところまではほぼ確定でいいとして。問題はみっつ。」

「ほうほう、なんですか?」

 それにしてもこの子、すごい落ち着いているよなぁ。ここまで落ち着かれると僕を拉致した側の人間に思えて仕方がないんだけど、よく考えると実技の実力は十分でありながら学力テストで落とされるほどの頭の弱い子だった。単純に今の状況を理解していないだけか。

「一つ目、食事。二つ目、トイレ。そして三つ目に出る方法。」

 さしあたっての問題は食料だろう。トイレは究極なんとでもなるが、食事ができないことは命に関わる。

 あとは、普通に考えていつまで閉じ込められているかだよな。

 この拉致犯の目的は何なんだろうか。


 と、その時部屋に甲高いアナウンスが響いた。

『有宮ショウさん、古川アキさん、こんにちは。』

 といった風に。

「こ、こんにちはじゃねえよ!お前は誰だ!!」

『はいはい落ち着いてください。これは脱出ゲーム。この部屋から出る方法は二つだけあります。頑張って探して脱出してください。』

 は?脱出ゲーム……?

「ふざ……」

「脱出ゲームって何よ!私はやく帰りたいんですけど!」

『ルールは二つ。午前八時、正午、午後六時にこちらのほうから食事と携帯トイレを提供します。使用後は元あった位置に戻してください。ちなみに今は午前七時半なので一度チュートリアルとして午前八時提供分を出しましょう。』

 高い天井が開く。

 そこから紐に繋がった大皿が降りてきた。皿の上には声の主が言うように、袋から出された携帯トイレと菓子パン、それに縛られたビニール袋の中に入った水が乗っていた。

 ……あまりにも不衛生だし雑すぎる。

『食べ終わったり処理を終えたら二時間後に再び降ろすこの皿にのせてください。回収します。一度でも乗っていなかった場合、以降の食事提供はありませんので。』

「ルールの二つ目というのはなんだ?」


『死にたい、と思ったらいつでも言ってください。言えば楽に殺してあげます。』


 そこでアナウンスは途切れ、あとには不愉快な機械音だけが残った。


「おい!おい!!」

 その後いくら呼び掛けても返事は返ってこなかった。

「どういうことだよクソッ。」

 思わず壁を蹴り飛ばす。軽い音が部屋に響き、その間抜けな響きに僕は失笑してしまう。

 僕が荒れることで落ち着けたのかアキは菓子パンに手を伸ばしていた。

「あ、アキ。僕クロワッサンのほうがいい。」

「私もともとメロンパンの予定だったんで大丈夫ですよ。」


 二人とも触れない。ルール二つ目については。

「さて、脱出方法を探そう。」

「そう、ですね。あの人脱出ゲームとか言っていましたっけ。脱出ゲームって最近名前はよく聞くんですけど知ってます?」

「うん、知ってるよ、世間一般の脱出ゲームはね、部屋に暗号がちりばめられていて全部といたら部屋の扉が開くー、だとかそんなものかな。」

「つまり、何かを解くことができれば脱出できるってことですかね。」

「そうだね、それが一つ目の脱出方法じゃないかな。ただこの部屋は見てのとおりなにもない。だから暗号が隠されているとすれば定時に提供される物しかないわけだけれど、それも回収されるのなら暗号は隠されていない、と思うんだ。」

 もし毎回の提供物に暗号が隠されているのだとすれば二時間でそれを解かなければならず、一つでも解けなかったときに脱出が不可能となってしまう。となると一生ここで暮らすことになってしまい、それは拉致側としても不本意なのではないだろうか。

 別に僕たちが死んでもいい、と運営側が思っているのかもしれないという可能性を、この時僕は頭から排除していた。


「つまり一つ目の脱出方法は、暗号を探し、それを解くこと。だね」

「うーん……なんか不可能そうですね。」

「確かに二つ目を探すのが正解な気がするね。」

 しかしなにも検討がつかない。


 ちなみに僕が語る故、この作品で排泄描写はない。ご容赦願いたい。


「とりあえず、少し世間話でもしようか」

「や、脱出方法を探しましょうよ。」

 皿などはくまなく見たが何も見つからないまま回収用の大皿が降りてきた。食事提供が止まるのは死に直結するので全部乗せる。

「ショウさん。このロープに捕まったらどこに行くんでしょうね」

「……ああ!」

 彼女がそう発言したときにはすでにロープは手の届かないところまで上がっていた。

「次降りてきたら試してみよう。」

「ですね。」

 天井は高すぎてバレー部のアキでも全然届かないほどの高さだった。

 スピーカーは天井の開くところについている。部屋は兄貴が一人暮らしをしている家より少し広いくらいなので六畳から七畳くらい……

「あれ?」

「どうしました?」

 確かここで目が覚めたとき、僕は六畳ほどの部屋だと思ったはずだ。今はそれよりも少し広く感じる。

「この部屋、広くなってない……?」

「……え?そんなことは……い、いや、言われてみれば」

「測っておこう。」

 一辺がおおよそ六歩分。

「でもショウさん、部屋がだんだん狭くなっていくならまだわかるんですよ、タイムリミット的な意味で。なんで部屋が広がるんですか?」

「僕に聞かないでくれよ……主催者の意図はさすがにわからないよ……」

「ですよねー」

 そうこうしているうちに正午になったようで天井が開いた。

 菓子パンではなくビニール袋に入ったパスタが今日の昼食のようである。水の袋は朝よりも少しだけ大きかった。

「アキ、ロープに捕まれるか?」

「了解です!」

 そのままロープに飛び移る。

「痛っ!」

 そのままアキはロープを離した。手からは血が出ている。

「大丈夫か!?」

「あんまり大丈夫じゃないです……」

 どうやらロープには棘がついているらしく相当の覚悟がないと握れないようになっている。

「この調子だとあれだね。何とか登ったとしてもその先になにか仕掛けがありそうだね。」

「うう……痛いです…」

 床にぽたぽたと血が垂れている。悲惨な光景だった。


「やっぱり広がってる」

 アキの出血が止まったころ、もう一度歩いてみると八歩分、一辺が一番初めに比べておおよそ三メートル伸びていた。

「この部屋の拡大っていつまで続くんだろうな……」

 そう声を漏らすも応えられる人間はここにはいない。

 と、天井が開き空の皿が降りてきた。


 違和感。


「ショウさん、このお皿……」

「ああ。大きくなってる気がする。」

「ですよね。」

 皿が前回より大きくなっていた。そこに廃品を乗せ、登っていくのを眺める。

「そろそろ本気で脱出方法を考えないとな。」

「はい。」

 とはいうもののなにも見当がつかない。暗号も見つからなければ第二の脱出方法もわからない。

 ここまでくると本当に脱出方法があるのかすら怪しくなってきた。

 そして夕食の提供時間。


「ショウさん、さすがに馬鹿な私でも、気付いたことがあるんです。」

「……」

「これ、部屋が広がっているんじゃなくて、私たちが……ち、縮んで……」

「違う!!!」

「ひっ」

「そんなはずは、そんなはずはない!縮むなんてそんなわけないだろ!!」

 思わずアキの肩を強く掴む。

「やめ、てください……」

「あ、ご、ごめん」

 蚊の鳴くような声で懇願され僕は我に返った。

「ごめん。でも体が縮むなんてそんなのありえないだろう」

「私にとっては知らない部屋に記憶がないのにつれてこられている時点でありえないんです!!これ以上何が起きたってどっちにしろありえないんですよ!!!」

「じゃあどのタイミングで発症したっていうんだ。二人ともそういう病気だったっていうのか?」

「それはわからないですけど、この提供される食事に何か入っているとか……そうですよ!これは脱出ゲームとかじゃなくて実験なんです。体を縮ませる薬の実験台に私たちがたまたま選ばれたんですよ!だから出口も何もないのにケアだけはしっかりしている……」

 理にかなっていた。

 確かにそう考えれば納得いくことが多い。そうか、これは実験なのか。

「ははは、じゃあもう僕たちは助からないのか」

 すべてを理解した僕は笑っていた。

「そういうことですね……このまま縮んで、最後はどうなるんですか。」

「わからないけれど、すべて等しく縮んでいくならいつまでも生きられるんじゃないかな……」

「それで外に出られたとしてどうなるんですか?」

「……」

「……もう……しにたい。」

『承りました』

 彼女がそのワードを口にした瞬間、部屋中にガスが蔓延した。

「……人間として死ねるならいいかな。」

 意識が落ちる前、僕が最後に口にした言葉はそんな間抜けなものだった。

書ききっているので続きはすぐです

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