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【文芸バトルイベント「かきあげ!」第一回大会・参加作品】第一回大会・テーマ:「いろ」
三人の姫との踊りに疲れたダークはテラスに出て手すりにもたれ、星一つすら無い暗闇の空に吹く心地良い風に身を任せていた。
「ふぅ」
シャンパンを煽りながら溜息をつくダーク。
「今一つだな、ピンと来るモノがない」
テラスから、男女が楽しそうに踊り続ける明るい大広間を眺めながら呟いた。ふと視線を横に走らせると、ダークの目に大広間の入り口で衛兵がなにやらスッタモンダしている様子が飛び込んできた。
「ん、何だ?」
ダークはしばらくの間、その様子が何なのかを見極めようと注視した。
遠くて話はほとんど聞こえて来ないのだが、どうやら大広間に入ろうとする一人の客を衛兵が追い返しているところだった。その客とは、よくよく目を凝らさなくても判るほどの美しい女性だった。
ダークは更に目を凝らしてその女性を見た。
その女性は、先ほどの三人のお姫様方と似たような年齢のように思われた。その女性の髪は銀色で肩までのセミロング、そして均整の取れた顔立ちに均整の取れたボディ、真っ白なビスチェタイプのプリンセスラインドレスを着ていた。
ダークは胸騒ぎを覚えた。
それが妙に気になった。
その真っ白なドレスを着た銀髪の女性が。
気が付くと、ダークは大広間の入り口へと向かっていた。
「どうしたと言うんだ?」
ダークが大広間の入り口で衛兵に尋ねた時、衛兵はその動きを停め、銀髪の女性もまたその動きを停めた。
銀髪の彼女がダークへと視線を投げ掛けてきた。
その瞬間、銀髪の彼女を見たダークもドキッとしてその場を動けなかった。既に、ダークは彼女に心を奪われ、彼女に堕ちていた。
彼女の方へと一歩踏み出して言葉を掛けるダーク。
「君の名前は? ……いや、待て。君の名前は僕の記憶の中にあるような……」
銀髪の彼女が切なそうな顔をしてダークに訴える。
「わたくしをお忘れですか?」
その言葉を受けてダークが銀髪の彼女に何か言おうとした時、後ろからダル爺の大声が聞こえた。
「殿下、ダメです! そのお方は絶対にダメです! ダーク皇太子殿下、そのお方は『フォトン』といっ……」
その時、銀髪の彼女『フォトン』は、動きを停めた衛兵をすり抜けてこちらに駆け寄った。
「ダーク様!」
透き通った声でフォトンが叫び、ダークの胸に飛び込んだ。
「フォトン!」
ハッと気が付いたダークも名前を叫び、両手でフォトンを受け入れて抱きしめていた。
その瞬間、ダークとフォトンは神々しい『光』と化して、周りの黒へ、真っ黒な闇の世界へ、その真っ白な光を洪水のごとく押し寄せてきた。全てが眩しくなって何もかもが見えなくなり、最期には感覚さえもなくなり、何も感じることが出来なくなってしまった。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
企画サイトにはもっと素敵な作品が目白押しですので、そちらもお読みいただけたらと思います。




