黒洞公主
【文芸バトルイベント「かきあげ!」第一回大会・参加作品】第一回大会・テーマ:「いろ」
ボディコンシャスなマンダリンドレスが、やけに黒洞公主の良いスタイルを強調する。
ダークは、彼女の細い腰に右手を当てて、伸ばした左手の指先を彼女の右手の指先を絡める。黒洞公主は、ダークの右腕に覆い被さるように左手をダークの肩に乗せ、右腕を伸ばしているので、彼女の胸のボリュームがダークの胸に迫っていた。
「窮屈でごめんなさい」
黒洞公主はやんわりと、しかし妖艶にダークに微笑んだ。
「いえ、それほどでもありませんよ」
ダークもニヤリと笑って、黒洞公主をかわした。演奏が始まり、ラグタイムの軽快なリズムが大広間に響き渡る。
「スロー、スロー、クイック、クイック」
黒洞公主は小さな声でそう呟きながら、一生懸命にステップを踏んでいる。時々上体を反らすので、黒洞公主の大きくて柔らかな胸がダークのボディに暴力的に当たる。
「色仕掛けは好みじゃないな」
ダークが呟くと黒洞公主は笑う。
「だから言ったでしょ、窮屈でごめんなさいって」
意味深な黒洞公主にダークは思わず苦笑いをした。
ミドルイーストとチャイナの深遠な歴史を併せ持つ国の王女である『黒洞公主』は、国の歴史と同じくらいの深い「黒」を持っている。何しろ光さえも飛び出すことが出来ない『闇』を持っているのだ。
けれども、伴星がある場合や銀河の中心になる場合においてその存在を確認できるだけで、単独での発見はなかなか難しい。
そして、その中でもシュバルツシルト半径内の黒である『黒洞黒』は彼女しか持ち合わせていないのだ。
ダンスを終えた時、上体を反らした黒洞公主をダークが抱きかかえるようにして密着していた。
「楽しかったわ」
黒洞公主が意味深に微笑む。
「僕もだ」
ダークが不敵に笑う。
お互いにニヤッと笑い合ってから手を離した。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
企画サイトにはもっと素敵な作品が目白押しですので、そちらもお読みいただけたらと思います。




