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ブラックパレス・ボール

【文芸バトルイベント「かきあげ!」第一回大会・参加作品】第一回大会・テーマ:「いろ」

 黒い宮殿の大広間の上座に据え付けられた、見上げるような高座。

 そこに置かれた真っ黒な玉座に肘を突き、その腕で顎を支えている、黒衣の正装をした男子が一人。彼の名前(ファーストネーム)はダーク。その名前は「闇の王子」とも「プリンス オブ ブラック」とも呼ばれている存在であり、このブラック・フィールドの後継者、つまり皇太子である証なのだ。

 しかし、そのダークはひどく退屈そうに華やかな大広間で踊る煌びやかな男女を眺めていた。

「ダーク様、そろそろ踊りの輪の中へとお入りいただきたく……」

 ダークの横に立って小声で耳打ちするのは、彼の侍従であり御守役でもある「ダル爺」だった。

「大変に目立つ『黒のドレス』を着ていらっしゃる三人のお嬢様方が、今日の主賓でございますので、くれぐれもお間違えをなさらぬようお願い致します」

 ダル爺はさりげなく今日の目的をダークに告げた。この大広間で行われている舞踏会は暗黒王宮(ブラックパレス)の主催で、その目的は交流的にも政治的にも経済的にもいろいろとあるのだが、その中でも第一の理由は「ダーク皇太子の妃選び」なのであった。

「あぁ、分かったよ」

 ダークは気が進まないままに玉座から立ち上がった。すると、音楽がスッと鳴り止み、踊っていた男女はその場でダークの方へと向き直り、男性はひざまづき、女性は腰を落として会釈をした。

「これより、ダーク皇太子殿下がお出ましになられる!」

 ダル爺が大広間に響き通る声でそう告げると、大広間の人々は尚一層、頭を垂れた。

「みんな、そんなに気を遣わなくてもいいんだから」

 ダークは照れて後ろ頭を掻きながら、ゆっくりと大広間の方へ高座のステップを降りていった。ダークが大広間まで降りると多くの男女達は大広間の壁へと身を退き、そこに残っていたのは、黒いドレスを見事に着こなした三人の女性だった。彼女達は横一列に仲良く並んでひざまづいていた。

「お嬢様方、顔をお上げくだされませ」

 ダル爺の言葉で三人の女性はダークをゆっくりと顔を上げてから立ち上がった。

「ダーク皇太子殿下にごあいさつを」

 ダル爺が三人の女性に促すと、左端の女性が軽く会釈をした。

「漆黒姫と申します。お見知り置きを」

 黒髪のショートボブに平板な顔立ち、ロリータチックの小柄でスレンダーなボディに、微妙な光沢を帯びた黒絹のVネックタイプのAラインドレスを着ていた。

 次に真ん中の女性がニッコリと首を傾げた。

「レディ・カーボンブラックです。よろしく」

 ウェーブしたロングのブルネットで背が高くてガッシリと健康的な肉体、彫りが深い顔に陽気な笑顔が印象的、全く光沢の無いデュポンブラックでオフショルダータイプのマーメイドラインドレスを着用していた。

 最後に右端の女性が膝を曲げて腰を落とした。

黒洞公主(ヘイドンゴンツー)でございます。よしなに」

 ブラックでストレートなロングヘアで鼻筋の通った顔、ボン・キュ・ボンのセクシーボディに、ブラックシルクでボディコンシャスな、サイドに大胆なスリットが入ったマンダリンドレスを着こなしていた。

「殿下、さっそくお嬢様方のエスコートを……」

 ダル爺がニヤニヤしながらダークの背中を押す。

「分かった、分かった」

 頬を赤く染めて俯き加減な三人の女性を眺めながら、アッサリとダークが言う。

「今の自己紹介の順番で僕と踊ってくれ」

 ハッとして顔を上げ、右手を胸に当てる漆黒姫。他の二人はさっと後ろに退く。ダークはすぐに漆黒姫の手を取って、大広間の中央へ歩き出した。

お読みいただき、誠にありがとうございます。


企画サイトにはもっと素敵な作品が目白押しですので、そちらもお読みいただけたらと思います。

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