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失われたもの

作者: ame

 冷たい風が木々を揺らしていた。空を見上げると、鬱蒼と茂った緑が光を遮り、大地を光から遠ざけていた。そんな広い森の中二人の人物がが草木を掻き分けなから歩いていた。

「こんな所に本当にあるの?」

 そのうちの一人の女性が、もう一人の人物に問う。もう一人は男性のようで、手に持つ幾つかの資料に目を通しながら、先を歩く少女を追っていた。

「間違いないよ。アイツが好きそうな場所だ。きっとこの森のどこかにあるよ。」



 少し前、この二人の人物はブリュームドールという町に居た。この町は人口数百の小さな町で、霧が発生しやすい町なのでブリュームドールと呼ばれている。彼らはこの町の外れ、霧が出ると恐らく迷わずにはたどり着けない所に密やかに建っている、小さな小屋のような家を訪れていた。

 家の中には二人以外の人物の姿は無く、埃の溜まった膨大な著書と、最低限生活に必要な道具以外の不必要なものはほとんど見当たらなかった。

「宝の山ね。ホントに」

 女性が本に溜まった埃を叩きながら呟いた。その本は古く黄ばんでいて、ページをめくるとところどころに開いた跡が付いているのが分かる。

「古書好きだったからなアイツ。古代語の本だけじゃなく妖精言語で書かれている本もある」

「そんなの誰が読めるんだろ?」

 二人は時折会話を挟みながら、埃の被った本を開いていく。開いては軽く目を通し、閉じ、また次の書物へ。大体一時間ぐらいたった頃男が声を上げた。

「あった。シー。多分コレだ」

 男は本の間から黄ばんでパリバリになった紙を取り出した。そして広げる。

「アオイ。どう?」

 シーと呼ばれた女性が、アオイと呼んだ男性に近づき、一緒に黄ばんだ紙を覗き込む。そこには手書きで地図が描かれている。そして傍らに走り書きのような文字も。

「ここがブリュームドールみたいだな」

 アオイが紙を指さす。紙の左下に丸が描かれていて、そこに『ブリューム』の文字があった。

「この星が“宝”?」

 今度はシーが紙の中央、ブリュームドール北東から延びる森の中に描かれた星印を指した。そこにはには大きな湖があった。町のような補足の言葉は無い。

「そうだろうな。それより端に書かれている『失われた奇跡』って何だろう?」

「さぁ。見れば分かるんじゃない? とりあえず必要なものをそろえて行ってみましょう」





 二人は宝を求めていた。大切な仲間の残した宝。その仲間は「宝を見つけた」と二人に告げて失踪した。もし、その宝を見つける事が出来れば、仲間の居場所を見つける事が出来るかも知れない。

 そう考えた二人は彼の宝を見つけることにしたのだった。

「あった湖!!」

 シーが指を指して叫んだ。同時に二人は湖に駆けていく。

 森のほぼ中央に位置する湖。周りには樹や花が茂っている。湖の向こう側は見えているが、結構な距離があった。鬱蒼とした森の中ではここが一番光が当たって明るく感じる。

「やっぱり湖の中かなぁ」

 アオイが湖を覗き込む。湖はよく澄んでいる。だが風が吹いて居るので湖面がゆれて中がよく見えない。

 やがて風が止まった。湖面を漂う波紋も止まる。

「あっ。」

「えっ。」

 二人は同時に呟いた。波紋が収まった湖の底には大きな白い塊がいくつかあった。

「あれって建物だよね?」

「多分。そう思う。でも俺たちの知っている建物とは少し違う気がする。」

 湖に沈むいくつもの白い塊には穴が開いていなかった。穴と言うのは入り口や窓のことを指していて、あの白い塊が建物だと言うのなら入る場所が無い。代わりに替わった模様がどの白い塊にも描かれている。

「あの模様。魔法陣に似ていないか?」

 アオイがシーに聞く。魔法陣と言うのは彼らの住む世界の失われた技術で、今は絶滅したと言われる妖精の秘術と言われている。

「魔法陣……?『失われた奇跡』ってもしかして妖精郷のこと? はるか昔妖精が住んでいたと言われる不思議な集落。これはそれの成れの果てって事?」

「専門家じゃないから詳しくは言えないけど、きっとそうだな。」

 二人はまじまじと、今は湖に沈む過去の遺産を見つめる。そしてどちらからともなくため息をついた。

「これはこれですごく素敵だと思うけど、ここにあの人は居ないのね。」

「そういうことだな。ここにあるのはアイツが好きなものの一つだ」

 森に吹きゆく冷たい風が、二人と過去の遺産を閉じ込めた湖の湖面をやさしくなでた。鳥たちが空を見上げて静かに合唱を始める。



初めまして。久しぶりの小説なのでおかしな点がいろいろあるかもですが、楽しんでいただけたら幸いです。

ファンタジーを題材としたため説明不足もあり、いきなり魔法陣やら妖精やら出てきて驚かしてスミマセン。もっとうまく書けるよう以後善処していきたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 確かにいきなり的な感じはありましたが、先の話が楽しみな作品だと思いました。 キャラクターの個性がもっと出ていてもいいかなと。
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