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第一章 2
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桜崎舞。風見中学校二年B組、つまり隣のクラスの女子だ。俺が唯一会話するときに『さん付け』をやめられない女子生徒だ。理由については入学以来ずっと考えているのだが、なかなか結論に至らない。今のところ自分を納得させているのは、『あの女からは俺の行動を抑止するオーラが出てるんだ!そうだ、そうに決まっている!』という理論だ。それ以上は考えない事にしている。
白く細長いリボンで束ねた長い漆黒のポニーテールと平均より高めな身長が印象的な桜崎は全体的に礼儀正しく、ほのぼの系で控えめ。清純、という言葉がよく似合う。その割、二年生にして中学弓道の全国大会でベスト8に入るほどの弓術の名手だ。更に言うと、俺がトップ成績を収めている塾で二位に着くという優秀ぶりだ。まさに文武両道。正直、俺よりかなりすごい。
家柄は特筆すべき物ではないが、よく父親が好きだと熱弁している。学校にも好きな奴がいるようだが、そこまでは調べる気にならなかった。
結論を言おう。桜崎舞は大変魅力的な女だ。そして俺は、人生で唯一、この女にだけは惹かれているのだ。
独白