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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

愛情表現

掲載日:2011/10/29

「愛してる」


 穏やかな春の午後。柔らかな日差しに包まれたカフェテラス。

 そう言った、向かい側に座るあなたの顔をじっと見詰める。

 それに気付いていないわけは無いのだけど、彼はもう一度同じ言葉を繰り返す。

「愛してるよ、嘘じゃない」

 それでもまだ、私は黙ったまま。一言だって喋らない。

 疑っている、わけじゃない。彼の言葉は素直にうれしい。だってそんなこと、一度も言われたことは無かったから。だからそれを伝えなきゃいけないのに、私も大好きだよって言いたいのに、何故だろう。

 私の唇も、舌も、喉も、全く動こうとしないのだ。まるで、凍りついてしまったかのように。

 日の光に包まれて、暖かいはずの体は内側だけが冷え切り出口を失くした愛のコトバがぐるぐるとさまよっている。

 「どうか、した?」

 不思議そうに、少しだけ心配そうに話しかけてくるあなたの顔。

 兄よりも姉よりも弟よりも妹よりも父よりも母よりも友よりも、何よりも大切な愛しいひと。

 それなのに、何故だろう。

 わたしは。

 彼のその首に手をかけて、縊り殺してしまいたい。

 彼のその胸に刃物を突き刺して、心臓を貫き抉り出してしまいたい。

 そうして仕上げに首を落として、それを抱いて眠りたい。

 誰の目にも触れぬよう、誰の手も触れぬよう、きつく、きつく。

 そんなことを、願っているのだ。

 大切なはずなのに、何故私は彼のことを傷つけたいと思うのだろう。

 自分自身のことなのに、よく分からない。

「…ううん、大丈夫。ごめんね」

「そう」

 よかった。そう言って彼は柔らかな笑みを浮かべる。

 その笑顔を見ると私もとても嬉しくなって、温かくなって、ああやっぱりこの人が好きなんだなと思った。

 紛れも無く、恋なんだ。好きだから大切で、笑っていて欲しくて、その声を聞けるだけで舞い上がる。でもそれと同じくらいの重さで、思いで、壊してしまいたいと願う。…矛盾、なのだろうか。

 だけどその感情は抑え難くて、もう少しで堰を切って溢れ出す。

 そのときあなたは何を選び、何を捨てるのだろう。

 ―――――――けれど。

「ねぇ、」

 愛しているというのなら。

 私のこの思いだって、受け止めてくれるでしょう?


 いずれ来るであろうその未来を夢想して、少女は穏やかに微笑んだ。

 ヤンデレを書こうとしたんですが…。

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