表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

第九次元人の「あなた」へ。 プロローグ編集版

掲載日:2026/01/19

こちらはダリア─太陽系第三惑星人戦記─の第五部 アストロブレム攻防戦ラストから第六部第九次元人の「あなた」へ。の序章を戦記コンテストの応募用に編集したものです。


前提知識と用語解説

全ての熱量移動を記録する天の川銀河の中心天体、いて座Aスター(ブラックホール)に地球人の女子高生蓮坂舞は意識を維持したままの熱量として入り、その一部、複数個の惑星の情報を命球という一つの惑星として再現、自らを女神ロータスと名乗り太陽系第三惑星人(地球人)を率いて文明を興します。

その異常性を確認しな惑星文明クルルガンナとの出会い、宥和からの破滅的な絶滅戦争に辛勝した太陽系第三惑星人は地球での換算で13年、遺伝子改造技術を発展させ、熱量を記録するブラックホールの特性を応用し13年の歳月を300年に拡張した女神はまた、他害と自害を行った人物(太陽系第三惑星人同士)の魂を本人と被害者の人数分、地球と同じだけの質量を与えて崩壊させ宇宙で最も安定した物質、鉄へと圧縮し、それを用いた二脚機動兵器ウサギ、UltraSuperGiganticとして兵器や発電機として利用していました。


ウサギを駆る兵士は騎士と呼ばれ、主人公アセデリラ・アルマコリエンデとその率いる女神直属騎士隊ダンサンカ ブーケは秋都市エルアートヌへ派遣されます。


本作は時系列を同じくして「嘆きの灰が覆い隠す湖エルヴィエルナ」にて第四部主人公のパキラ率いる女神直属騎士隊メリージェーン隊が別種の侵略体クエーサーズと決戦を行う場面から始まります。


また場面転換は   ─────で行います

主要登場人物紹介


第9クルルガンナ研究室/ノーカラーズ

幸拓 結実子:オリジナル地球人、第9クルルガンナ研究室室長。クルルガンナ解放戦で星間絶滅戦争を経験、クルルガンナ星人ほしひとの技術を研究し対惑星文明兵器ノーカラーズを製造した。

ユキヤナギ:幸拓 結実子の運命を変えた一羽のスズメ。ノーカラーズマークゼロ

挿絵(By みてみん)

アネモネ:名も無き樹皮街の片隅で生まれた孤児、アルストロメリアと出会い、後にブラックバッカラとガルデニアを保護し養育した。ノーカラーズマークワン。

挿絵(By みてみん)

ブラックバッカラ:アネモネとアルストロメリアに養育された孤児。ノーカラーズとなる。第四部にてクエーサーズに肉体を奪われた後、機能としてアネモネに摂食され絶命。意識がアネモネの内部に留まった。

挿絵(By みてみん)

エーデルワイス:元ラプリマの騎士。クエーサーズにより殺害、肉体を奪われる。機能としてクロユリに捕食され、彼女に添い続ける。

挿絵(By みてみん)

クロユリ:元ラプリマの騎士。クルルガンナ解放戦を戦い抜いた騎士であり、黒死のぜネロジオを製作した。

挿絵(By みてみん)

アルストロメリア:名も無き樹皮の街で生まれた孤児。アネモネと出会いブラックバッカラとガルデニアを養育する。クエーサーズがブラックバッカラからエーデルワイスに乗り移る時に自壊コードを打ち込まれ機能停止する。機能としてガルデニアに摂食された。

挿絵(By みてみん)

ガルデニア:アネモネとアルストロメリアに養育された孤児。姉妹の末っ子。

挿絵(By みてみん)


騎士隊メリージェーン隊

パキラ・リアルラ・ミノ:ラプリマで促成栽培(遺伝子改良)された太陽系第三惑星人式対惑星文明兵器。第四部冒頭まで未熟であったが今回の遠征を通じて命を奪い太陽系第三惑星人を守る義務と責任を自覚する。

アイクルミエェタ:ウサギ。かつてクルルガンナ解放戦にて万の対惑星文明兵器を屠った万葉万倣騎士。開戦当初の襲撃、予告抜きの大量殺戮でクルルガンナ星人ほしひとの妻と胎の子を殺害されている。

自害を行いウサギとなった。

挿絵(By みてみん)

アスターイスヴァティージスララテア:パキラと同じくイスヴァティージスララテア家の製作した対惑星文明兵器。空間跳躍を行う遍黒のぜネロジオを組み込まれている。発生した当初から使命を受け入れている。オカイグサの玄孫娘。

オカイグサイスヴァティージスララテア:イスヴァティージスララテア家の初代当主。再教育に当たる劣等騎士だったアイクルミエェタが万葉万倣の二つ名を得る実績を積み、更に命を救われた因縁がありライバル視しており、アイクルミエェタが自害してウサギとなった事を知り自身も自害を行いウサギとなる。

挿絵(By みてみん)


「「ようこそ幸拓室長、ガルデニアくん。ここはぼくの魂の中だ。」」


「へー。あなたアイクルミエェタなのー?」


「こらガルデニア、ひとを指さしちゃだめだよ。」




天井が欠けて青空の見える室内で、はらはらと無数の紙が舞っている。


「2人ともその辺りの椅子にかけて欲しい。ここはぼくの家だった場所だ。どうか気楽にして。」


パキラがブラックバッカラだった肉塊の一部を、自身の隣の椅子に置く。 


「アネモネにほとんど食べてもらったから、今喋ってるアタシは本当に抜け殻だ。」


舌肉がふよふよと動いて言葉を紡ぐ。


「「まさかアイミの中に入れるなんて、思わなかったワネェ。」」

「ひいひいひいおじいさまは、変なことしないでよ。」


同じように腰かけた壮年の男性に、アスターが釘を刺す。


「ふ、う。」

「「落ち着いたかい?パキラ。」」

「はい、心の整理も着きました。」

「「では、君の言葉で説明して欲しい。」」


アイクルミエェタに促され、私は口を開く。


「目を覚ますカンマ数秒後には、私達は第9クルルガンナ研究室へ突入します。」

「うんうん、みんなのかたきうちして、他のみんなをまもるんだよねー。」


ガルデニアの言葉に頷いて、続ける。


「準勇者は、アイクルミエェタの記憶の中でクエーサーズを認識して、ディスティノで殺しました。」


制服のネクタイ通信機を外して、襟元のボタンを外し、胸の真ん中に空いたアザを見せる。


「アイクルミエェタの記憶の中、このディスティノで撃ち抜かれて目が覚める直前、準勇者は私にだけウインクをしたのを覚えています。つまり彼女は、私にメッセージを送ったんだと思います。」


再生される、私の視界を通しての映像には、準勇者の指先から弾丸が放たれ、それは4つに分かれて私と他の、クエーサーズの胸に吸い込まれ、クエーサーズ達は砕け散る。

そして彼女は、後ろへ倒れ込む私にウインクをする。


「「アイミの記憶の中でパキラとクエーサーズを認識して、更に撃ち殺す。どう聞いてもおとぎ話の存在ネ。」」

「また失礼な事言って!ひいひいひいおじいさまだって、どんな空間にも飛べたでしょ?」


オカイグサのスネを蹴り付けるアスターを見て微笑みながら、幸拓室長は話す。


「ふふ、私の目からすれば、君達はみんなおとぎ話の存在だよ。」


それを聞いてからアイクルミエェタが口を開く。


「「ぼく自身は準勇者と直接の接触をしたことが無いから、彼女ダリア・アジョアズレスは身も知らずのヒトの記憶の中でも、自由に動ける可能性があるんだ。」」

「まサカ、そんなコトは熱量力学としてあり得ないワヨ。」


幸拓室長が手を挙げる。


「私が命球に来れた理由は、熱量の中に意識と記憶を保持出来たからだけど、彼女は他人の記憶の中でそれを行なっていると言うことかな?」

「「そういう事になるね、他人の記憶に分身を残せるんだろう。そして─。」」


準勇者の能力に付いて考察を始めたアイクルミエェタを遮り、オカイグサが声を上げる。


「「太陽系第三惑星から他の惑星文明の観測機を使って命球に来たアナタも、相当おとぎ話だワヨ、幸拓室長。」」

「また失礼な事言った!」


アスターがオカイグサのスネを再び蹴る。


「よーくーわかりませんー。夢の中で誰かとお話するかんじですかー?」

「そうね。そして夢の中でおやつをもらって目を覚ましたら、そのおやつが目の前にあるの。」

「そーれーはーいーいーねー。…んっ。」


アスターに頭を撫でられたガルデニアは、力の抜けたようにうつむいて。

顔を上げる。何だか目つきが穏やかに見える。


「うん、何となくやり方はわかった。この子の声であたしが話すのは違和感あるけど。」

「アメリアお姉ちゃんだー。」


ぱ、といつもの屈託ない笑顔のガルデニアに戻る。


「君、は。」

「他の2人も、きっと出来てるよ、先生。」


ガルデニアに、彼女の中にいるアルストロメリアへ抱き着く幸拓室長。そこへ。


「嬉し涙は早すぎるって室長。まーだアタシらにゃ、大きい仕事あんだからさ。」


ブラックバッカラの舌肉がケラケラと笑いながら、少し崩れる。


「「さて、玄孫娘のパートナーは、一体何を思い付いたのカシラ?」」


みんなが、私の顔を見る。


   ─────


すわあああ、んんんんん。

完全に励起させた黒死のぜネロジオが、エルヴィエルナの空の大気に混じり、黒へ染め上げてゆく。

水の入った容器の中へ、一滴垂らした墨汁のように。

染み込み、包み込み、何層にも折り重なるようでいて、それでいて、重ならない。


「お前は、生きているか?」


眼下に拡がった白い騎士の体細胞へ声をかける。


「私が存在することは、お前たち未開文明種の定義する、生きているという意味では無い!」


こちらの囁くような問いかけに、わずかな大気の振動を捉えて的確な返事を、同じように数百レグア四方に展開した全細胞を共振させて返事をする。

クエーサーズは、律儀過ぎる。

本来侵略または絶滅目的の侵攻ならば、言葉という道具を用いた交信手法を取る必要は無いはずだ。

ふわぁん。

白い無数の細胞群が青白く明滅する。

しゅわ、ああ。

その全てが、私の位置へ熱線を放射する。

青と紫の美しい熱線が黒死と大気の境界線に絡め取られ、減退し、色の付いた無害な光となる。


「ならば貴様たち、クエーサーズの存在する目的とは何だ。」


   ─────


「うーん、殺しても殺しても生えてくる。趣味が悪いよぉ〜。」


どぅる、ぷっ。

ばちぃん!


灰の下から現れる触腕へ、鎧虫化した左腕を突き刺してねじ切り、吐き捨てる。


「余裕が無くなって来たな!大人しく肉体情報を寄越せ!」

「だーれがお前らなんかに負けるかよ!」


切り裂いて、突き刺して、噛み砕く。

単調な攻撃を単調な防御で凌ぐ。

その繰り返し。

幾重に並べられる触腕も、そこから射出される無数の粒、それらの内を突き破り、毒液を撒き散らしこちらへ向かってくる巻き槍を叩き落とす。

攻撃自体は複雑なものの、その目的はただのひとつ、私の身体を貫くこと。


「普通の生き物なら、もう諦めてるのに〜!」

「あいつらはクエーサーズだからね!普通の生き物じゃ…ちょっと待って。生きて、ない?」


   ─────


「「─撃鉄を起こせ、我は。」」

「運命の主人!」


炎熱の方陣により加圧加熱圧縮かれた大気を、黒鉄の砲身に装填されたアイクルミエェタのシリンを、その脚部が叩く。

ぱん、あるいはずきゅううん、適切なルリローが展開されていたならば、そう聞こえていただろう。

しかし元の主人達が不在のそこ、第9クルルガンナ研究室は、クエーサーズにより覆われて青緑色に染まったその地上構造物は、完全に打ち砕かれ、灰と塵だけが残った。


「そーれーじゃーあ、しつちょーを守ればいーんだねー。」

「うん、私たちもここから動けないから、あなただけが頼りだよ、ガルデニア。」

ち、ち、ちゅん。


ユキヤナギが板上に変化して幸拓室長の手に収まり、表面に浮かび上がった文字列を、鍵盤楽器を演奏するように弾いてゆく。

ひとつ、ふたつ、みっつ、ディスティノの爆風で巻き上がった灰の中、浮かび上がったヒト型のシルエットは、やがて音を発し始める。


「お。ユ賀ガィ、」

「君たち、まず言葉を以て交信を試みるのならば、まずは文明度の低い相手の言語に合わせてくれたまえ。」


振り向きもせず、演奏に集中する幸拓 結実子はそう告げる。


「お前達は何だ。」


音ははっきりとした太陽系第三惑星人の公用語となる。


「答えてる時間は無いよ。」

「話が違う。」

「じゃー代わりに言うねー。」


袖を振り上げて、軽くステップを踏みながらくるりと一回転する。


「エルヴィエルナ第9クルルガンナ研究室、ノーカラーズのマークシックス、ガルデニア。」


遠く、模倣太陽から右を向いた方向が、きらきらと輝く。


「あなたたち、みーんな食べちゃうぞー!がおー!」


   ─────


同時刻、ラプリマの片隅、とあるオープンキッチン。

椅子にに腰掛けた銀髪の少女は、目の前に座る金髪の少女と、手のひらほどの大きさの少女へ口を開く。


「さて、そなたらならどう見るかの。」

「無論、今ガ攻め時ダナ。」

「末娘よリ我らガ劣るなド、たいそう見くびられたものダ。」


3人の目線の先、エルアートヌの方角では空に沿って黒い渦が広がる。


   ─────


「ツ穿、雫翡陀?」

「遅い!」


通常の励起したランサーでクエーサーズの構成体を焼き切る。

命球に侵入したクエーサーズは、あらゆる物質が命球の重力に捉えられ、熱量に変換される膠着円盤そのものを演算回路、侵入経路とした。

これはアイクルミエェタの着弾と同時にオカイグサの空間跳躍により、クエーサーズの回路系へ転移した事で判明した。


「「次、飛ばすワヨ!」」


クロユリ、アネモネそれぞれの中にいるエーデルワイスとブラックバッカラも辿り着いたように、クエーサーズは生命体ではなく、対象となる生命体、構造物、自然物またはそれぞれを構成する原子、分子に命令文、コードを書き込んで増殖を行う、太陽系第三惑星のかんたんな言葉で例えるなら、ウイルスと呼ぶべきものであった。

単なる化学式でもなく、生物でもなく、付着した生物、非生物の構造を書き換える、まだ知られざる、新たな種類のウイルス。


「ガルデニアも風邪を引いて、せきをコンコンしたことがあるだろう?」


光るユキヤナギの鍵盤を弾きながら、幸拓 結実子は歌うように問いかける。


「あーるーよー!けど今たたかつてるのー!」


舞うように袖から光の尾をたなびかせ、ガルデニアはクエーサーズの群れと拳を交える。


「そうだパキラ、ウイルスが宿主の体内で変異と増殖をする部位には傾向がある。最も繁殖し易く、効果的、合理的に次のコロニーを形成するに足る、増殖体を運べる血流量のある箇所を選ぶ傾向が。」

「わーかーりーまーせーんー!」


鍵盤を弾きながら第9クルルガンナ研究室の幸拓室長は、回路の最前線で光る槍を手に戦う少女へ、次の指示を送る。


   ─────


展開した黒死のぜネロジオが解析されているッ!

空一面に展開し、地表を覆うように白い泡を取り込み破壊していた翼が逆に絡め取られる。

白い泡は獲物をいたぶるようにクロユリの翼ごと彼女を締め付ける。


「ここ、までかッ!」


エルヴィエルナの空に拡がったクロユリの翼は、一時的にはクエーサーズエーデルワイスの体細胞に死を与えた。しかしクルルガンナ残魂兵器群、亡霊を使い無尽蔵に増殖を続ける敵個体の再生速度にこちらの殺傷速度が追いついていない。

─かつて、クルルガンナ星人ほしひとが太陽系第三惑星人に負けた理由はただひとつ。

重力崩壊を起こした太陽系第三惑星ふたつ以上の質量と熱量を持つ兵器。─

星の瞬きほどの回数復唱した、女神による騎士任命式での言葉を思い出す。


「くっ、ウサギがあれば…!」

「今更負けた言い訳か?惨めなものだな、黒死の騎士よ!」


白い泡が翼の根本まで迫る。


「我らは運命の主人!」

「ディスティノトゥアレラ!」


ぱん、あるいはずきゅううん。騎士や都市民を守る祈りの歌ルリローがあればそう聞こえたかも知れない。しかし、ここエルヴィエルナの戦いでは、クエーサーズの白い騎士はそのような防護技術は持っていなかった。

1人の少女と1人の女性の声が、轟音と衝撃波と共にクエーサーズの白い触腕と、クロユリにまとわりついた泡を霧散させる。


「この騎士にも飽いた所だ。名乗れ!」


再び増殖を始めた白い泡が吠える。


「アンタみたいなのに答える義理は無いけれど!」

「聞かれたからには名乗ろうか。」


そのウサギのシリンに立つふたつのシルエットには、クロユリはわずかながら見覚えがあった。


「エルベラノのダクトロ、不滅のぜネロジオ!ハイェルルラ・エル・ベラーナ!」

「準勇者、ダリアノワール。」


紫の熱線がそのシルエットを焼く。


「カカカカカ!何がダクトロだ!何が準勇者だ!クコココココ!カッフハッー!?」


哄笑するクエーサーズの胸部には、セイヨウキヅタの白い花が咲いた。

それは深い緑、ほぼ黒のツタを伸ばし、エーデルワイスの身体を構成する白い泡すらも覆い尽くしてゆく。

それらツタ、咲かせる無数の花は、伸びるたび咲くたびに熱線に焼かれ、そしてまた、伸びて花開く。


「何ぬぁん、ダ、これはァ!」


己の心臓から咲いた花を手で掴み引きちぎり、そのたびに花開くアイビーにもがきながら、白い騎士は叫ぶ。


「か、はっ。」


血を吐。崩れ、力の入らない私の身体が落ちる。


「うん、久しぶりだねクロユリ。」

「準、勇者…。」


ふわ、とあたたかな黒い騎士に抱き止められる。


「よくやったわクロユリ。久しぶりね。」

 

私の頬を撫でる手が、エーデルワイスの身体を指差す、


「さっきうちのかわいい後輩に聞いてたでしょ?ウサギが負けた言い訳になるのかって。」


あらゆる方向からの無数の熱線を、飛んで跳ねて、駆けて回避するウサギの上でその少女は腕組みをする。


「だーからわざわざハイェルちゃんが教えてあげてるのよ。あなたが負ける時の言い訳を。私のぜネロジオをこのオーレルフの炉心と繋いで暴走させてるの。あなたみたいな、かわいい後輩の身体を奪うような寄生体には、お似合いのほっんとーにみじめな死に様を用意してあげる!」

「劣等、未開、文明種がァァァ!」

「まーだ元気なの?じゃあここを狙いなさい?ハイェルちゃんの、おー、でー、こ。」


新たに生まれた無数の白い泡が、少女が指先でつついた額を狙い、熱線を照射する。

赤、赤紫、青紫、青。

模倣太陽の光も届かない、エルヴィエルナの灰色の空を染め上げる量の熱線。

しかし

クロユリは知っていた。

対一の撃ち合いでは、先に引き鉄を引いた方が、負けである事を。


「セカカカカカカカカカ!!!空間ごと焼き尽くせば2度と口を開けまい!その口が残っていればの話だがな!!!!クコココココカカカカカ!!!」


今度は胸の花も枯れた。勝利を確信した笑いが響き渡る。

言葉の通り、幾重にも重なるように照射された熱線は空間自体を捻じ曲げるような熱量を残し、それらは依然として少女の立つ空間を捻じ曲げていた。 

否。


「わたしはさそう、あなたのゆめを─、」


沈んだ女性の声が、笑い声を掻き消す。


「─くろいうずの、ひかりのつるぎ。」


熱線すら、この場においての光源となる模倣太陽の僅かな太陽光線すら捻じ曲げ、屈曲させて!空間を歪んだように見せかけていたのは、準勇者ダリアノワールの左腕に巻き起こった黒い渦だった。


「コカカカカ、ケ?」

「ヤリラ ルーマ!」


クエーサーズの白い騎士、取り込まれたエーデルワイスの情報は、その寄生主と共に焼失した。


  ─────


「近づこうにもアタシの触腕が邪魔!」

「もうブラックバッカラのじゃないよぉ〜。」

「うっさい!」


右手が私のほっぺをつねる。


「痛いよぉ〜。」


ブラックバッカラがアネモネの口を借りて怒ろうとした時、新たな触腕の先から2人の知識に無い型の巻き槍が射出される。


「ちぃ!どこからどこまで!びっくりパーティかよ!」


躱わしても、弾いても、その槍はアネモネの身体に喰らい付こうと、


「ぐぅあるるるっ!」


紫の髪の輝きが、その槍を光に変えた。


「な、なに?」


身構えたアネモネの身体を、薄い紫の泡が包む。


「スター、灰の中に本体がいる。」


背後からブラックバッカラと同じくらいの少女の声。


「ばう!!!」


紫の髪は少女に見え、その緑を基調とした服は、クロユリの着ている騎士制服のようなものに、ブラックバッカラの目に見えた。

その人語では無く咆哮のようなものをあげる少女は、輝く牙と両腕両脚で、クルルガンナの灰を溶かし、無数に生える触手を引き裂き、身体に絡み付き肉を穿つ槍をものともせず掘り進み、


「セラ!」


クエーサーズブラックバッカラの本体を咥え。


「食べてよし。」

「わん!」


噛み砕き、光に変えた。


   ─────


「「女神、クルルテラ全騎士隊並びにカネクトゥス、配置完了しました。」」


通信を聞き立ち上がり、両腕を広げる。


「「んむ、総員気ぃ張れや!」」


3本の光の柱が、黒い渦の中心から天に向かって放たれる。


「「彼奴ら、クルルガンナ全域を狙っておるぞ!」」


お人形で遊ぶ小さな子ども、植木に水やりをする老人、夕食の献立を考える夫婦、教鞭を取る女性、機織り機のペダルを踏む男性、彼らの頭上に、太陽が出現する。


   ─────


この太陽は、クルルガンナ地域に存在する太陽系第三惑星人めいめいの頭上に出現した。

女神が全太陽系第三惑星人の意識をカネクトゥスで繋ぎ、グランディオサ ホーラを展開する前に。

それは

エルアートヌにて、勇者トモ、準勇者ダリア・アジョアズレス、対惑星文明兵器モモ・クルルテラが「放出された熱量全てを取り込み放つ、ヤリラ ルーマ」を放った直後に。


   ─────


第五部 アストロブレム攻防戦05 ファラス シア エスペラナ

「 彼む

一 方こ

切 岸う

の の

望 十

み 三

を 次

捨 元

て 人

よ は

。 告

」 げ

  た

  。


   ─────


大型生物種コロニー鹵獲改造建築都市エルアートヌ、その都市にも、騎士アセデリラ・アルマコリエンデを遙か時の彼方に送り出し、そして3名の勇者、準勇者、対惑星文明兵器がその全力を以て未来へ放った閃光、

地球人の読者の皆様に置かれましては、夜空に瞬く星々の輝きが、遙か彼方の星の輝きが、途方もない時間をかけて地球へ届いた「過去の光」だとご存知の方もいらっしゃるでしょう。地球人はその星の輝きから太陽系、そして天の川銀河、宇宙の中での地球の位置を知る手掛かりとして来ました。

3名が未来へ放った閃光は、それより先に未来へ旅立ったアセデリラに届き、現在の、帰るべき場所を指し示す道標、星の海を眺め航海に出る旅人からすれば、北極星になるべきものでした。


「ヤリラ ルーマが…。」


モモ・クルルテラの言葉のままに、未来へ届くはずだった閃光は、屈曲し、乱反射して霧散しました。


「こんな…クルルガンナ星人ほしひとなんか目じゃない!」


狼狽える勇者トモ。


「わさびちゃん!全隊に臨戦指示!わたしのぜネロジオが励起しない!」


普段なら余裕ぶった態度を見せる準勇者ダリア・アジョアズレスが叫びます。

そして

その場にいた全員、エルアートヌ外郭で戦っていた騎士隊たち、全住民それぞれの頭上に太陽が出現しました。


「ッ!揺籠の─!」


異常性を察知したアウタナ・セリフラウが、かつてブランカ スタランダで見せた姿、フロラータへと変化してカネクトゥスのオリジナルとなったルリローの発展系を展開します。


   ─────


「あなた」の見ている文字の列には、かつて目にした、難題がきれいに解決して、登場人物たちがそれぞれの新しい道へ歩いて行く、そんなお話がありませんでした。

「あなた」の知る物語では、アセデリラ達が帰還して、彼女たちは前途多難なものの、未来へ歩いてゆくはずでした。


しかし


今、オープンテラス、テーブルのイスのひとつに腰かけて読んで、目にしていた目の前の、ラプリマのひとびと、太陽系第三惑星人たちが、めいめいの頭上に現れた太陽により、焼かれ始めていました。

いいひとも、そこまでよくはないひとも、あかちゃんも、おとしよりも、おんなのひとも、おとこのひとも。

「あなた」は、こんな展開は見たことが無いと思います。


そして


「あなた。」


「あなた」は声をかけられました。

声の方を向くと、ラプリマのロータス綜合学園オープンテラスのカフェ店員、猫の耳としっぽの生えた、女性の店員が立っていました。彼女の頭上には、太陽は出現していません。


「やっと見つけた。あなた、あの、「縦に表記された文字」が見えて、読めたわね?」


─────これからの文中には「あなた」のとることが出来る行動をAまたはBと2種類表記します。どちらの選択を選ばれてもお話に変化はありませんが、登場人物たちの反応が変化します。─────


A─「読めなかった」

「あなた」は「そんなものわからない。」と答えました。

彼女はふう、とわざとらしいため息をついて。


「今そんなおもんない冗談言うとる場合ちゃうの!目の前のひとたちだけやのうて、クルルガンナにいる太陽系第三惑星人ぜんいんが燃えとんの!あなたの頭に太陽が出てないんとおんなじで、うちにも太陽は出てへん!つまりあなたは、わたし「おおとろべふこ」がこの世界とその出来事を書き記したダリア─太陽系第三惑星人戦記─を読んでるしょーしんしょーめーの地球人!」


B─「読めた。十三次元人とは何者だ。」


「うん、これからちょっと長くなるよ。」


─質問回答と返答終わり─

彼女はまた早口で続けます。


「ええけ?まず四次元人のおおとろべふこが二次元にダリアの世界を落とし込んで、それを同じ四次元人のあなたが読んでる。」


急にめちゃくちゃなことを言い出した彼女は、燃え盛る空と地面を指差します。


「上の次元の生き物は、下の次元を認識して、介入もできる。」


この説明には語弊がありますが、いちおうは合っているはずです。彼女は話を続けます。


「本来、下層に位置するわたし達が上の次元の存在を認識することはできない。紙に書いただけのキャラクターが、わたし達を実際には認識できないように。」


これもまた真実ではあるのでしょう。


「ただ、あの十三次元人は、ひとつだけミスを犯した。どーせわたし達のことなんて、古本屋の処分コーナーに置かれてる安売り本でも図書館の本棚にも並ばない、電柱に無許可で貼られたシール、風に吹かれる新聞紙、ポストに投函される広告やコンピュータ・シミュレーションで産み出した、よくある被造物くらいにしか思っていなかったってこと。」


つまり「あなた」を含めたわたし達は、値を付ける価値すら無いと思われていた。


「あの「一切の望みを捨てよ。」って一文が書き添えられたあと、本文全体が真っ赤なインクのようなものに漬けられた。あの十三次元人からしたら、そうして本文を読めなくすることで、お話の続きなんて無い、登場するダリアにレジーナにアセデリラ、アウタナ、モモにエウトリマ、マイちゃん達にアネモネやブラックバッカラにエーデルワイスにクロユリ、アルストロメリアにガルデニア、みんなに絶望を味わえって言いたかったのね。」


崩れるラプリマの街並みは無数の太陽に焼かれ、崩れている。


「けど、この世界にこんなことをされて、筆者で登場人物にもなるくらい自己顕示欲の塊のわたし、おおとろべふこは気付いた。」


彼女は俯きながら右目だけで睨め上げるように燃え盛る空を見上げ、左手に持ったペンを中空に走らせる。


「スタニト、メイタゥナ、ローサ、ミアーネ、スペギュエラ、フィガ、ファロブランチェスドオア…。」


いつか目にしたことのある、宮門居 姫子の詠唱を、詠うように口ずさむ。


「これね、ほんとはわたしが、小さい時に夢で見た「上の次元の人」に教えてもらったの。ずっと覚えてて、ね。」


ペンで描かれた、真っ赤な果物の中、瞳を閉じたガルデニアが現れる。


「この物語ぜんぶが焼かれたけど、「あなた」とわたしはここに至るまでの過程をおぼえてる!」


彼女は眠ったままのガルデニアをあなたに預ける。


「今から「あなた」をダリア─太陽系第三惑星人戦記─の冒頭のラプリマへ送る!「あなた」はわたしと同じ四次元人だから、作中で死ぬ事は無いけど、わたしの四と読者の「あなた」の四にオマケで一を足して九!あなたは第九次元人!アセデリラやダリア達と同じようにロータス綜合学園で学んで騎士になって!実戦で経験を積んで!勇者も準勇者も星姫も女神もみんなを超えて!」


A,B─「いきなり言われても。」

選択終了


「ここまで読んでくれたんだから、できるわよ!そしてアイツ、新しい世界にもいずれ来たる「第十三次元人カヌメナーア、カヌメナーアって呼ぶわ。」をやっつけて!ガルデニアはあなたのパートナーに、つまりちゅーもいろいろ出来ちゃうわけだけど、あの子が経験出来なかった楽しいこと、いっぱい一緒にしてあげて!」


彼女は両腕を伸ばし何かを口ずさむ。風と嵐、無数の太陽がその中へ流れ込み、渦を巻く。


A,B─「君は?」

選択終了


「わたしはここで「あなた」が主人公で主役でヒーローの、色んな主役が活躍していた群像劇「ダリア」の、あなただけの新しい物語を書くよ。」


彼女の腕の中へ流れ込む熱と風は加速し、光が溢れ出す。


A,B─「さようなら。」


選択終了。


「うん、アイツをやっつけたらまた会いましょう。あ、そうそうあなたの名前ね!この世界での名前!本名はあると思うけど!」


加速した光の螺旋は、空間を歪め始める


「ナイン・エルナ!第九次元人ナインエルナ!」


青い光球が溢れ出し、扉が現れ。


「彼方の夢を、此方に繋げ!ダルハルカ!」


扉が開く。


「あなた」ナイン・エルナは足を踏み入れる。

文章だけでしか知らなかった「ラプリマ」の街へ。

お読みいただき、ありがとうございます!

今回の投稿は、チャレンジ企画「戦記」にて応募要項の「長い場合は一万五千字までを選考の対象に」とのことでしたので!

最初から戦記として投稿を続けてきた「ダリア」は冒頭一万五千だと第一部青の瞳の、の前編の半分も満たしてない!お話動いてない!…オリジナルSFファンタジーですので、世界の設定をぼかして匂わせてるくらいで、第一部を読み終わっても(大ボス撃破)まだ世界観の説明半分も終わってない!

っていうわけで、思い切って最新エピソードだけを抜粋して前書きで基本的な設定、これもまだ1/5も解説出来てないんですけど、とにかく必要最低限な知識だけ書きました!


SF戦記としての山場は他にもいっぱいあるんですけど、めちゃくちゃハードな戦闘とSFならではの読者の「あなた」をお話の中におててを掴んで引っ張り込んで!

ただの地球人の「あなた」に全てをひっくり返す最強主人公になってもらおう!

異世界転移!


っていうやりたいことぜんぶ詰め込んだよくばりセットのこの最新エピソードにしました。

ここからが「ナイン・エルナの物語」の始まりです。


こんな読者置いてけぼりの設定山盛り最終決戦から始まるSFっていったいなんなんだ!と思われたそこのナインさん!

ぜひ本編をご覧ください!

もっと置いてけぼりですよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ