第3話
来週の土曜日。
やれやれ、なんてこった!
卒業してもう二週間以上経つのに、大企業から小さな会社まで、どこも俺を採用してくれないってどういうことだよ……?
もしかして、俺の大学の学位に問題でもあるのか?
それとも、あいつら俺を見下しているのか?
しかも今、海外にいる母さんから送られてくる仕送りも、もうほとんど残っていない。
「くそっ! まさか母さんにまた金を頼むわけにもいかないだろ……」
……
その夜も、結局仕事は見つからなかった。
あまりにも退屈で、ソファに座ってテレビを見ていたら、気づけばもう深夜一時近くになっていた。
ちょうど面白い場面に差しかかったとき、突然ドアベルが鳴った。
「ピンポーン!」
……ん?
こんな時間に、誰が俺の家に来るんだ?
「はーい、ちょっと待ってください! 今行きます!」
ドアを開けた瞬間、そいつは俺の腕を掴んで、強引に家の中へ引きずり込んだ。
……なんだよ、と思ったら。
デペンドラだった。
「おい、何やってんだよ?」
「シーッ! 静かにしろ! 近所の人が寝てるだろ!」
「で、わざわざ俺の家まで来て、何の用だよ?」
「極秘の話だ! とりあえずドア閉めろ!」
そうして俺たちは、リビングへ入った。
そこでようやく気づいた。
「……っていうか、お前。体中どうしたんだ? 傷だらけじゃないか」
「長い話になるんだが……聞いてくれ」
そして、デペンドラはその日の出来事をすべて話した。
……
「なるほどなるほど。つまり、ストリンガーに復讐したいってわけか?」
「ああ!」
デペンドラは、突然俺の肩を両手で掴んだ。
「頼む! 一人じゃ無理なんだ!」
ストリンガーは、傲慢で横暴なことで有名な男だ。
なにしろ、あいつの父親は教育大臣だからな。
しかもグロリアスには「エリート遺伝子選抜プログラム」という制度がある。
優秀な遺伝子を持つ人間を選び出す制度で、ストリンガーはその「エリート遺伝子」の一人だった。
「デペンドラ……それは無理だ」
「なんでだよ? まるであいつの父親が国防大臣みたいな言い方だな」
「それに、あいつは“エリート遺伝子”だぞ。
お前だって知ってるだろ、“エリート遺伝子”に手を出したらどうなるか」
プランタンでは、“エリート遺伝子”は普通の市民よりいくつかの特権を持っている。
その代わり、彼らは事実上――
**一般市民にとって“不可侵の存在”**だった。
「お前、自殺でもするつもりか? あいつを殺そうなんて。
ストリンガーには武装したボディーガードが何人もついてるんだぞ!」
「しかも俺たち二人だけで、あいつに何ができる?」
俺の話を聞いたあと、デペンドラはゆっくりと頭を下げた。
何かを考えているようだった。
……
「……よし」
しばらくして、デペンドラは顔を上げた。
「いい考えがある。
だから、半月くらい待ってくれ」
「お前、何をするつもりだ?」
「その時になれば分かる!」
……まったく。
どうせまた、ろくでもないことを思いついたんだろう。
でも、あいつの性格は俺が一番よく知っている。
一度決めたことは、絶対に途中でやめない。
「言っとくけどな、変なことするなよ?」
「分かってるって、うるさいな!」
そう言って、デペンドラはドアを開けて帰っていった。
……
「……追いかけて様子を見るべきかな?」
少し考えたが、俺は首を振った。
「……まあいいか。
本当にバカなことをしなければいいけど」
そして俺はソファに戻り、テレビの続きを見ることにした。




